マイクログリアによる神経活動のフィードバック抑制
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タイトル
『Negative feedback control of neuronal activity by microglia』
マイクログリアによる神経活動のフィードバック抑制
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2777-8
【感想】
マイクログリアは脳(中枢神経系)の死細胞などのゴミを貪食するお掃除屋さんとして知られ、また近年ではシナプス貪食やシナプス新生との報告もあり。神経ネットワークと密に関わっていることが報告されている。
私の認識だが、これまでシナプス間の神経伝達についてはアストロサイト(グリア細胞の一種)の研究が先行しており、神経伝達物質を受容し(mGluR, GAT-3など)フィードバック機構を持つと考えていた。
本報告で、マイクログリアの存在が神経活動に対して抑制的に作用することが示された。神経とマイクログリアでそれぞれ重要な遺伝子を見つけ、てんかん発作(神経過活動)悪化を指標に神経活動調節におけるマイクログリアの重要性を示している。ただ、マイクログリアとシナプスの間で直接的にこれらの因子がやり取りしているかどうかはまだまだ議論の余地がある。シナプスはアストロサイトによって包み込むような構造も知られており、アストロサイトとマイクログリアの関係性についても今後詳細な検討がなされることを楽しみにしたい。また、CD73-アデノシンの経路はマイクログリアでの発現レベルやAMPの分解機能面での弱さの疑問が残るが、こうした神経ーグリア相互作用を考える上では重要な知見である。
【結果】
Figure1
CaMKII-tTa; tetO-CHRM3 mice(神経でhM3Dqを発現)
Cx3cr1CreErt2/+(Litt); Eef1a1LSL.eGFPL10a/+ mice(マイクログリアでRiboGFPが発現⇒GFPでTRAPできる)
CNO投与後(神経活性化)にマイクログリアの遺伝子変化を解析
色々遺伝子変わっている。
マイクログリアをCSF1R inhibitorで除去すると、神経興奮させた際にてんかん発作が発症する。i.p.投与でカイニン酸、ピクロトキシン、D1アゴニスト(i.p.はどうなの?)
Figure2
CSF1Rのリガンドソースはどこからか?
リガンドはCSF1とIL-34が知られている。
Single-cellや免染などにより、CSF1はWhite matter(オリゴデンドロサイト)、IL-34はGrey matter(ニューロン)ということが分かった。
Nestin-creで神経からIL-34をcKOするとGrey matterのマイクログリア数が減少し、D1 agonist誘発のてんかん発作が悪化。
Nestin-creでオリゴデンドロサイトからCSF1をcKOすると(※論文中Figure2eの記載が間違っている、文中にはCSF1fl/flと記載されている)White matterのマイクログリア数が減少するが、D1 agonist誘発のてんかん発作には影響しない。
D1神経、D2神経(Drd1aCre/+, Drd2Cre/+)でIL-34をcKOすると線条体でのみマイクログリアのみ減少し、D1 agonist誘発のてんかん発作が悪化。カイニン酸誘発のてんかん発作には影響しない。
⇒D1(D2)神経は(ドパミン受容体1(2))で線条体に存在することが知られている。CortexやCerebellum(小脳)でも発現は知られている?
Figure3
GCaMP6sを線条体神経にAAVを使ってトランスジーンした後、in vivoカルシウムイメージング
マイクログリア除去群ではカルシウム流入が同期するようになり、D1アゴニストによる神経活動の頻度が増大した(神経過活動)。
またCx3cr1eGFP/+ miceでマイクログリアの突起の動きを観察すると、神経を活動させた際に(hM3Dq)マイクログリアの動きが全体としては遅くなったが、神経終末への突起伸長が増大した。
⇒神経活動依存的に機能的な変化と突起の動きが誘導された?
これらの動きの変化はP2Y12Rのinhibitorにより抑制されたので、P2Y12Rシグナルを介していることが示唆された。
Figure4
マイクログリアが神経過活動を抑制するメカニズムとして、マイクログリアがATPを分解してアデノシンに変換することで神経A1Rを介したフィードバック抑制機構を想定した。
マイクログリアのプライマリー培養系に、ATPを添加すると一部はAMPに、また一部はアデノシンへと変換された(アデノシンは最初に添加したATPの100分の1量だが)。
マイクログリア除去後に、マイクロダイアリシスでアデノシンを計測すると、全くアデノシンが検出されなかった。
マイクログリアのCD39(AMPへの変換酵素)やP2Y12RをcKOした場合、D1 agonist誘発のてんかん発作が悪化
神経のIL-34やA1RをcKOした場合、D1 agonist誘発のてんかん発作が悪化
⇒しかしながら、神経活動の変化については観察していないため、これらのてんかん発作の悪化が神経活動に直接的に結びついているかはまだ結論はでないと考えられる
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