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uranus_xii_jp
ショートショート【13】群青成長期
青の国では、生まれた子どもたちの髪はみな群青色をしている。しかし、成長とともにその色は変化する。勇敢な者の髪は朱に、知恵を極めた者の髪は漆黒に染まり、その色の濃さが「大人」としての証だった。
しかし、少女ソラの髪はいつまで経っても群青のままだった。成人とされる十五歳を迎えても、彼女の髪色は変わらない。周囲の大人たちは囁いた。「彼女はまだ成長していないのではないか」と。朱にも黒にも染まらぬ髪を、人々は軽蔑の目で見た。
そんなある日、ソラの前に一人の老人が現れた。彼の髪はまるで雲のように真っ白だった。
「お前の心は広い。だからこそ、どんな色にも染まらないのだ」と、老人は静かに語った。
その言葉に勇気をもらい、ソラは旅に出る。強さを求め、知識を求め、人々と心を通わせる日々。誰かを救い、誰かに学び、誰かを愛した。そのたびに彼女の髪の群青は深みを増していった。
やがてソラは気づく。
自分の髪の群青の深さはどこまでも広がり、どこまでも澄んでいるということを。何色にでもなり得る群青は、どんな色よりも美しく、すべてを包み込む強さを持っているということを。