建設DX研究所 第14回定例部会を開催しました!
みなさん、こんにちは。
「建設DX研究所」では、毎月1度、オフラインの定例部会を実施しています。
2月22日に、第14回となる定例部会を開催しましたので、その様子をダイジェストでお届けします。
今回は、建設DX研究所のメンバーである株式会社構造計画研究所さんからのご紹介で、株式会社マリエッタの神谷代表に登壇いただき、WebCAD活用の可能性についてご紹介していただきました。
株式会社マリエッタは、今年で創業21年目。住宅関係のWebシステムの委託開発を行っていらっしゃいます。社員の方々の7割がシステム開発に携わられており、今回お話いただいた神谷代表も建設CADソフトを開発していたエンジニア出身ということで、技術面の興味深いお話を多く伺うことができました。
第14回 WebCAD活用の可能性 ~高画質クラウドレンダリング技術も交えて
WebCADとは?
「WebCAD」とは、株式会社マリエッタが提供しているCADツールで、コンピュータ上で製図を行うCADと、クラウドサーバをつなげたサービスです。ブラウザ上でCADを編集すると、それらのデータ処理はクラウドサーバで行われ、その処理結果がブラウザ上の画面に表示される仕組みとなっています(図1)。そのため、ソフトウェアやアプリのインストールは必要なく、直接ブラウザで始めることができるという特徴があります。
実際にWebCADを利用するには、株式会社マリエッタが提供するサイト「myhome-cloud β版」で会員登録をすることで個人利用に限り無料で利用できるそうです。
現在の会員数は約13.5万人(2024年4月末現在)となっており、とても多くの方が利用していることが分かります。
※法人向けにはWebCAD機能のカスタマイズ提供をされております(有料)。
WebCADのメリット
神谷さんのお話からは、CADでの処理をクラウドサーバで行うメリットについて、①様々なデバイス(PC・タブレット・スマホ)からアクセス可能なこと、②クラウドサーバの高い処理速度でサクサク活用できること、の2点であることが伺えました。
特に、①に関しては、
・ソフトウェア・アプリなどをインストールせず、ブラウザだけで始められる
・PC・スマホ・タブレットに対応していて、事務所・外出先などどこからでも同じ画面を確認できる
といった特長が伺えた他、②に関しては、
・2D図面を0.2秒で3D化できる
・パズルのように感覚的かつ簡単に操作できる
・ブラウザ上で、内観・外観、住設・家具などシミュレーションができる
といった特長も伺えました。
これらの特長は、データ処理を、PC・スマホ・タブレット本体からではなく、クラウドサーバで行っているからこそのメリットと言えそうです。
動画でお見せできないのが残念ですが、実際に登壇中にデモをしていただいた2D、3D画像の様子がこちらです(図2〜5)。
現場でのWebCADの活用
こうしたメリットから、実際の現場では各種場面でWebCADが有効に活用されているとのお話もありました。
例えば、工務店と家具屋との間では、工務店が作成した図面を使って家具屋が図面上に家具を配置したり、住宅の営業と見込み客との間では、見込み客が作成した間取りや家具配置をもとに図面をシミュレーションし、プランの提案・決定後にそのまま見積りを行う、といった活用がされています。双方が同じ図面を使うことでスムーズにシミュレーションができたり、素人でも自分の持つイメージを簡単にCADに起こすことができるというのは革新的だと感じます。
また、その処理速度の速さから、ARを併用することで現地で即座にレイアウトを再現できるような機能もあり、その場でお客さんにイメージを持ってもらうといった活用もされているそうです。
それだけではなく、WebCAD上での間取りの変更や作成、高さの変更といった操作について、建物や間取りに矛盾が生じた時は、クラウドサーバで処理をすることで調整して矛盾が生じないようにブラウザに反映させる、ということもできるとのお話は大変驚きました。例えば、部屋と部屋の間に、誤って窓を設置してしまった場合にも、自動で「窓ではなくドアを設置」という処理が行われるとのこと(図6、7)。一般の利用者が使う場合や、とりあえずイメージを作りたいといった場合にも、易しいつくりになっていると感じました。
高画質クラウドレンダリングでより高度なシミュレーションが可能に
神谷さん曰く、ここまでの機能は実はすでに20年前には可能になっていた、とのこと。次のステップとして、このクラウドサーバの処理能力を活かした「高画質クラウドレンダリング」という、より高度なシミュレーションが株式会社マリエッタのサービスの特長です。
レンダリングとは、データを演算して画像や動画を表示させる技術です。この技術を使って、WebCADでは2Dや3Dで描いた図面の情報から、モデルルームにいるような3D表示を動画で再現できます。
レンダリングを行うために使用しているUnreal Engine(アンリアルエンジン)というソフトウェアは、ゲームの仮想空間(オープンワールド)制作にも使われており、通常のPCやスマホでは動かせるものではないそうです。クラウドサーバの処理能力をフル活用しているからこそ、さらにリアリティのあるシミュレーションが可能になったと言えそうです。
実際に先ほどシミュレーションした家で高画質クラウドレンダリングを行った様子がこちらです(図8~11)。
この高画質な動画の状態から家具を配置したり、壁の色を変えたりなど、通常のCAD操作での編集が可能です。日本国内での位置や、日時の変更で日の差し込み方を確認することもできるそうです。
高画質クラウドレンダリング機能リリースにあたって直面した課題
高画質クラウドレンダリングの機能自体は3年前には出来ていたそうですが、この機能をmyhome-cloud β版にリリースするにあたって課題となったのが、十数万人もの利用会員が使用することによる外部サーバへの莫大な通信料だったとのこと。当初、高画質クラウドレンダリングを処理する際には外部のサーバを経由しており、仮に1日12時間、10人が使うとしても、通信料を約5,000万円ほど払う必要があるという想定だったそうです。
そこで神谷さんたちは、WebCADとレンダリング用サーバを直接つなぐ、PtoP(ピーツーピー)という仕組みを使って外部のサーバを介さずに高画質クラウドレンダリングを行う仕組みを整備しました。現在はmyhome-cloud β版で無料で使うことができるそうです。データ処理の関係から、時間制限や人数制限などもあるそうですが、高画質クラウドレンダリングを身近に使えるツールは非常に魅力的だと感じました。
建設DX研究所事務局より
今回はWebCADの仕組みやそのメリット、高画質クラウドレンダリングの活用など、CAD活用に関する新しい技術や活用の可能性が見えてくる勉強会でした。実際に建築関係の企業だけでなく、家の購入・リフォームを検討している人や、高画質な画像を利用したい人など、一般の人たちの間でも多く活用されているというお話も聞き、CADツールがどんどん開かれたものになっていることを感じました。また、多くの人がこういった技術を利用できるのは、そのための環境整備があってこそであるということも再認識させられました。
今後もこうした勉強会・定例部会を定期的に開催していくほか、情報発信・政策提言等の活動も実施していきます。 建設DX推進のためには、現状の建設DX研究所メンバーのみではなく、最先端の技術に精通する建設テックベンチャーをはじめ、数多くの事業者の力・横の連携が不可欠だと考えています。 建設DX研究所の活動・定例部会などにご興味をお持ちいただける方は、ぜひプレスリリースを御覧いただき、お気軽にお問合せいただけると嬉しいです。