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第18回 AIドリブンなドローン開発と建設業への活用

建設DX研究所 第18回定例部会を開催しました!


みなさん、こんにちは。
「建設DX研究所」では、毎月1度、オフラインの定例部会を実施しています。
7月25日に、第18回となる定例部会を開催しましたので、その様子をダイジェストでお届けします。
今回は、建設DX研究所メンバーのローカスブルーからの紹介で、Skydio社の柿島様、中新様にご登壇いただき、AIを活用した最新のドローン事情や建設業界への活用についてお話いただきました。

第18回 AIドリブンなドローン開発と建設業への活用

Skydio社は2014年にアメリカシリコンバレーで創業されたグローバル企業。AIを搭載した自律型ドローンの製造・販売を行われており、その販売先は世界各国の企業にとどまらず、アメリカ政府への調達も行われています。今回ご登壇いただいた柿島様、中新様は、Skydio社日本支社に在籍されていらっしゃいます。

Skydio社はその魅力的なドローン製品により様々な企業や団体からの出資も受け、アメリカを代表するドローン製造メーカーとなりました。出資を行った企業の1つ、KDDIは約3桁億円の出資を2024年5月に行いました。日本国内ではKDDIスマートドローン・NTTコミュニケーションズが一次代理店となり、日本国内の顧客への販売・サポート、通信プランと組み合わせたサービスの提案などを行っています。

ドローントレンドの最先端にいるSkydio社のプロダクト

ドローンといえばイベントで小さなおもちゃのドローンが売られていたり、ラジコンのように手動で操作するドローンを想像される方が多いのではないでしょうか。現在のドローンにおけるトレンドは、AIによる自律型ドローンだそうです。

Skydio社のドローンはAIをドローンに搭載した「エッジAI」で飛行を制御することが可能とのこと。三次元情報を認識・処理して最適な飛行が可能なアルゴリズムを学習させたエッジAIによりドローン自らが障害物を回避しながら飛行を行うことができるそうです。
例えば、障害物から一定の距離を離れて飛行するよう設定した場合は、ドローン自身がその半径の球体バブルに包まれているように障害物を回避して飛行します。加えて、人などの動く対象物の動きを予測しながら追いかけることも可能で、障害物回避能力と組み合わせて実際に人と鬼ごっこをしているような飛行の様子も動画で見せていただきました。
このAIはシーズンごとにソフトウェアアップデートを継続しており、そのユーザビリティも向上を続けていると言えます。

また、ドローンには画像取得とは別に、飛行制御用のナビゲーションカメラが上下合わせて6個ついており、これらのカメラの映像から、周囲の3次元情報を分析し、非GPS環境でも自己位置を認識することができるそうです。これによりトンネルの中や山奥といったGPSが届かない範囲でも飛行が可能とのことです。さらに、夜間飛行に対応したアタッチメントも装備することができ、暗所での自律飛行も可能だそうです。

障害物回避によるクラッシュリスクの低減をはじめとしたこういった特性は、建設現場での活用においてもメリットが大きそうです。

自律飛行によるメリットを最大限発揮させるセンサーとソフトウェア

同サイズの産業機体では最高クラスのカメラにより、遠くにある計器の文字の読取りや、建造物のひび割れの検知など、撮影対象物の繊細な確認も可能とのことです。また、サーモ画像も撮影できるという話には驚きました。
また、ソフトウェアを通じて工場内の機器や建設物を対象に表面を観測することも可能とのことで、点検業務で活用されています。その際はAIがその対象物の表面をまんべんなく撮影するための飛行ルートを導き出し、そのルートに沿って写真を撮影できるそうです。物体の表面積というのは、その物が大きくなればなるほど広くなっていくため、ドローンが「まんべんなく」、「自動で」撮影してきてくれるのは点検者にとってはとても手間の省けることなのではないでしょうか。

遠隔からの点検を可能にする「ドック」の展開

今回のお話の中で、ドローンと並び特徴的だと感じたデバイスが「Skydio Dock(以下「ドック」)」でした。
「ドック」とは、簡単に表現するとドローンのお家、待機場所です。お掃除ロボットの充電スポットを想像していただけると分かりやすいと思います。形は四角い筒状をしており、野外でも雨風をしのぐことができるとともに、ドローンの充電基地、離陸・着陸場所として機能しているそうです。例えば、この「ドック」を建設現場に設置しておけば、ドローンを現場に使用の都度持っていく人員が必要なくなるため、遠隔での点検業務を容易に行えるようになるとのことです。この利点を活用した遠隔での点検業務の需要は、建設業、特に人がその場に行くのが難しいダムや発電所のような現場において多いとのことで、今後のさらなる広がりが期待できそうです。

日本での販売には法制度との調整も必要


こういったSkydio社のドローンの機能性の高さから、すでに日本の建設現場や製造会社でも多くの活用実績があるそうです。一方で、本社のあるアメリカと日本の間で、国内の法制度への対応・調整が必要な場面も少なくないそうです。また、しっかりとしたルールも未だ固まっていない部分もあるそうで、その範囲については、アメリカやヨーロッパなどでの定められている航空法に基づく基準などを根拠として調整をすすめられることもあるとのことでした。
最近では物流問題を背景として、こういったドローンの飛行に関する規制緩和も徐々に進められているとのことでしたので、今後、規制の合理化も進むものと思われます。

おわりに

今回はSkydio社の最先端ドローンについて、その機能や建設現場での需要との関係についても伺いました。いかがでしたでしょうか。
すでにドローンは手動のみで操作する時代が終わりを迎えつつあることに驚いてしまいました。数年前までは業務でドローンを飛ばすこと自体が真新しかったことを考えると、産業技術の進歩は早く、それだけ積極的に開発が進められているということが分かりました。
KDDIからの大規模出資を契機に日本での普及も進んでいくと思われますが、産業用ドローンであるが故に導入コスト面でのハードルも考えられます。Skydio社では、製品の費用対効果を分かりやすく説明すべく、建設会社の顧客に対して、デモ実演やヒアリングなどを直接行っているそうで、買取よりもレンタルでの契約を好む傾向が伺えるとのことでした。その背景には、建設業界特有の「工期が限られるため、使用しない時期はドローンを保有する必要がない」、「野外環境での使用のため、本体や部品の交換など柔軟に対応してもらいたい」といった事情があると考えられます。
アメリカで製造したドローンを日本で販売させるにあたっての調整については、建設DX研究所で行っている規制緩和に関する政策提言活動とも通じる面があると感じました。こういった省力化に貢献するような機器の導入についての政策提言活動についても引き続き積極的に行っていきたいと思います。

建設DX研究所では、今後もこうした勉強会・定例部会を定期的に開催していくほか、情報発信・政策提言等の活動も実施していきます。 建設DX推進のためには、現状の建設DX研究所メンバーのみではなく、最先端の技術に精通する建設テックベンチャーをはじめ、数多くの事業者の力・横の連携が不可欠だと考えています。 建設DX研究所の活動・定例部会などにご興味をお持ちいただける方は、ぜひプレスリリースを御覧いただき、お気軽にお問合せいただけると嬉しいです。