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第20回定例部会 スタートアップ交流会を開催しました!

はじめに

みなさん、こんにちは。
「建設DX研究所」では、毎月1度、オフラインの定例部会を実施しています。
9月26日に、第20回となる定例部会を開催いたしました。今回は第20回という節目のタイミング、ということで建設DX研究所が2023年1月に任意団体として発足してから約1年半の活動のご報告と、さらなる建設DXの推進に向けた交流を目的に、「スタートアップ交流会」として開催しましたので、その様子をダイジェストでお届けします!

当日はこれまで関わりのあった建設DXに関するスタートアップの皆様をご招待し、セッションプログラムも盛り込んだ以下の以下のプログラムにて開催しました。

<当日プログラム>
1.建設DX研究所活動紹介
2.3D技術の今までとこれから~スタートアップ3社によるセッション~
3.交流会参加スタートアップによる1分企業紹介
4.懇親会

建設DX研究所活動紹介

建設DX研究所の活動紹介では、建設DX研究所 代表の岡本杏莉より活動のあゆみをご報告し、建設業界が直面する人手不足の課題について(株)アンドパッドが実施した独自アンケートもお示しながら、業界全体の課題感についての認識の共有を行いました。

(出典)「住宅業界の「2025年ショック」調査レポート」https://andpad.co.jp/news/6046/
改正建築基準法/改正建築物省エネ法の施行については(株)アンドパッドのアンケートによるとこれらのW施行により業務負担が増えると考えている割合は半数を超え、事業者も非常に懸念しているポイントの一つであることが伺えます。

こうした課題に対して行ってきた政策提言についてもその概要をご紹介しました。

第3次の政策提言概観

政策提言に関連するこれまでの活動についてはnoteで詳細にご紹介しておりますので、ぜひチェックしてみてください。

官邸フォーラムで発表
政策提言を手交いただきました
アナログ規制見直しについて(前編)
アナログ規制見直しについて(後編)

合わせて、最後に建設DX研究所メンバー6社による企業紹介も行いました!
企業紹介に合わせて、「定例部会において研究所メンバーやゲスト企業と情報交換をすることで一緒に建設業を盛り上げていると実感を持てたことが良かった」や「遠隔巡視の条件についてのロビー活動を関係省庁に対して行えたことは、1社ではできなかったこと。団体として活動した意義があった」といった建設DX研究所に所属したことで感じたポジティブな感想などもお話いただきました。

3D技術の今までとこれから~スタートアップ3社によるセッション~


次に、建設DX研究所のスタートアップ3社より3D技術活用の有識者同士のセッションを行いました。

登壇者は
・ローカスブルー株式会社 代表取締役社長 宮谷 聡 氏
・株式会社Liberaware 社長室長/DX事業部部長 林 昂平 氏
・株式会社アンドパッド ANDPAD ZERO 研究開発グループ マネージャー 菊野 格 氏
の3名です。

まずファシリテータの事務局髙橋より国土交通省が推進する建設現場の生産性向上を図る施策である「i-Construction」について整理を行い、建設業界における3D技術の重要性について確認しました。

(出典)国土交通省資料https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001738521.pdf
「i-Construction」で基本的な考えとなっているのが「測量から施行、維持管理に至る建設プロセス全体を3次元データでつなぎ、新技術、新工法、新材料の導入。利活用を加速化させる」という考え方。この基本的な考えのもと、さらにより少ない人数で生産性の高い建設現場を実現させるため、「i-Construction2.0」として建設現場のオートメーション化が進められています。

建設現場の生産性向上のためにはまず建設プロセスにおいて基盤となる3次元データの連携が必要不可欠ということがわかりました。
このような社会的背景を認識したところで、登壇された各社より自社の取組みや具体事例についてご紹介いただきました。

①株式会社アンドパッド(登壇者:菊野 格)
アンドパッド社では建設プロジェクト管理ツールANDPADを提供されています。今回のテーマ3Dデータ技術に関連するサービスとして、iPhoneやiPadに搭載されているLiDARセンサーを活用することで周辺状況を瞬時に3D化できる「ANDPAD 3Dスキャン」、スキャンしたデータをウェブ上でどこからでも社内外の関係者が確認できる「ANDPAD BIM」をご紹介いただきました。この機能は施工管理アプリANDPADと連携し、BIMデータと施工管理情報・施工履歴情報とを組み合わせることで、施工管理での3Dデータ活用やその後の維持管理への活用を進める狙いがあるとのこと。また、若手からベテランまで現場の職人が使いこなせるようになるための橋渡しの役割も果たせるように開発したとのことでした。
活用事例としては、都市ガス領域でのANDPAD 3Dスキャン活用の取組みについてご紹介いただきました。この取組みは名古屋周辺領域のガスインフラを管理する東邦ガスネットワーク社とアンドパッド社との共同の取組みで、3年前から行っているものだそう。

東邦ガスネットワーク社の課題としては、維持管理の際にガス管状態の管理が紙や野帳ベースであったり、その紙や野帳を運用するにも清書作業といったアナログな作業が一部残っており、現場の負荷になっていました。そこで、ANDPAD 3Dスキャンを活用することでウォーキングやメジャーで計測していたものを3Dスキャンでの計測に置き換えて正しい施工位置情報を3Dデータとして管理することで改善させたそうです。また、地中にあるガス管を3Dスキャンで撮影したものをANDPAD環境のクラウド内で共有できるすることで協力会社との情報共有が容易になったとのこと。さらに、3Dスキャンした3Dデータ上で直接確認したい深さや延長などの寸法を測定することによりを現場に行っていない人でも施工位置が現場で見たかのように視覚的に確認できるメリットもあるとのことでした。

東邦ガスネットワーク社では以前からGISMAPで平面情報としてガス管の位置を管理していましたが、3Dスキャンデータと併用して維持管理時も併用することで、ロケーターや現調に行くことなく適切な位置が確認できるようになります。全面活用開始後は毎月約3,000〜4,000程度の3Dデータが作成されています。大規模案件での3Dスキャン活用はよく耳にしますが、小規模案件も含めてすべての現場で3Dスキャンを活用するのは、世界的にもこのような例はないのではないかとのことでした。

②株式会社Liberaware(林 昂平)
Liberaware社では、狭小空間に特化した小型ドローン及び、撮影した画像を3Dデータ化し、それを分析するソフトウェアの開発・提供をされています。道路や鉄道といったインフラ領域の狭小空間を点検することでリスクの可視化を実現されているとともに、それを会社のビジョンとしても掲げられています。

活用事例としてはまず、天井裏や築年数の古い建物など、そもそも図面が無かったり図面が正しくない場所について3Dデータを起こすことを挙げていただきました。図面がない場合その空間の把握自体が難しく、予期せぬ管理工事が発生してします課題があるとのこと。まずは点群データで起こすのが主とのことでしたが、最近では管理者のニーズに応じて3D図面やBIM図面として起こすこともあるとのことです。もう一つの活用事例として、公共インフラや工場施設等の点検を挙げられていました。規模の大きなインフラや建物は、進入が難しい箇所が数多くあり、従来は足場の設置が必要であったり、人が危険を伴って進入する必要があったりと、経時面と安全面の観点で点検の効率化を実現しているとのことです。

また、事業化の上で困難な点についても共有いただきました。ドローン領域はレッドオーシャンであり、すでに台頭している低価格で提供されている海外製ドローンと戦うのは難しいとのこと。そこで狭小空間かつ、人が入るには危険が伴う困難な現場を対象領域として選択されたとのこと。市場は大きいものの、そこに参入するためにはまず市場のメインプレイヤーである企業との協業体制の構築が大切だそう。実際に鉄道会社やプラントメンテナンスの会社と協業することで直接現場の課題間を発見し、その解決策を提案できるようになったのが参入にあったって重要なポイントであったとのこと。良い技術があっても突然サービスを利用してもらうには障壁があり、こうした取組みを間に挟むことで信頼してもらえるとのことでした。

さらに、狭小空間のみならず、課題解決策を進めるにあたり、建物全体の3次元化も必要ということがわかり、広い空間の3次元化が得意なMapⅣ社との協業にもつながったとのことです。

③ローカスブルー株式会社(宮谷 聡)
ローカスブルー社ではアップロードされた取得済み点群データの点群処理・分析を行うソフトウェアを提供されています。

まず早速、開発で直面した困難を乗り越えたご経験からお話いただきました。ソフトウェア展開後、顧客の方から、競合と機能の突合確認をされる機会が多く、非常に苦労されたとのこと。機能を多様にすることが善だと思い込んでいたところ、それは必ずしも正しくないということを学んだといいます。そこで、顧客への徹底したヒアリングを行い、1つのソフトウェアですべてのニーズを網羅しようとせず、「アップロードされた点群データを自動で素早くフィルタリングして綺麗にする」という事業展開方法に転換されたそうです。ニッチな市場に特化し、「誰とも戦わない」という戦略をとったことが非常に重要だったとのこと。

顧客へのヒアリングにて、ソフトウェアをやりたいことによって使い分けているということが明確になったことも、市場領域を絞る決断をすることにつながったそうです。ニッチすぎて市場が小さいのではないか?という考えもよく言われるようですが、どこかの領域で1番にならないと、そこからの展開は難しいと考えているとのことでした。

ディスカッションパートでは、3Dデータ化では避けられない精度の話題にもなりました。3者の意見で共通していたのは、精度だけを求めることよりも、現状のアナログで作業からどれくらい効率的になっているのか、どれくらい精度があがっているのかを認識し、その上で顧客が何を目的として3Dデータをとっているのかということを一緒に明確化していくことだということでした。目的を明確にすることで過度な制度のデータは必要なくなり、また、撮影の頻度や撮影箇所の工夫をすることで対応できることも多いとのこと。

アナログから3次元化データを扱いだすようになると、一般的にどうしても最良の精度を求めがちですが、施工目的、管理目的、提示目的にあわせたデータ取得も重要だということが分かりました。

また、3社ともスタートアップということで事業化についての理想と課題についてもお話いただきました。3次元化の技術で施工管理や維持管理に利益やメリットがでることは分かりつつも、事業として現場に普及させることが重要で難しい点だというお話をされていました。アンドパッド社ではガス管理会社との共同事業を行うこと、Liberawre社では対象領域を管理する重要企業とつながりを形成すること、ローカスブルー社では顧客への徹底ヒアリングで確実に顧客にヒットするサービスを展開したことがその課題を打破する一手となっていったのではないかと思います。

セッションの様子

おわりに

いかがでしょうか。今回は建設DX研究所として初めてのセッションプログラムを交えたイベント開催でした。セッションプログラムでは3社とも共通の課題感がありつつもそれぞれの領域の特徴をしっかりと押さえて事業を展開されていることは非常に興味深かったです。ニッチな領域をドメインとすることは事業戦略として語られることは多いですが、実際に市場に普及させるまでの道のりは平たんなものではなのだということを学ばせていただきました。また、建設DXにかかわるスタートアップが集まり建設DXの課題について再認識するとともに建設DX研究所の活動にも興味をもっていただけたら幸いです。
懇親会では、セッションプログラム時に時間の都合上難しかったお話についても議論が行われている様子が印象的でした。

建設DX研究所では、今後もこうした勉強会・定例部会を定期的に開催していくほか、情報発信・政策提言等の活動も実施していきます。 建設DX推進のためには、現状の建設DX研究所メンバーのみではなく、最先端の技術に精通する建設テックベンチャーをはじめ、数多くの事業者の力・横の連携が不可欠だと考えています。 建設DX研究所の活動・定例部会などにご興味をお持ちいただける方は、ぜひプレスリリースを御覧いただき、お気軽にお問合せいただけると嬉しいです。