BPAについて -食品添加物についてのお勉強①
代替医療系の記事の中で、
よく出てくるワードの1つはBPA(bisphenol A)です。
が一番まとまっていると思います。
簡単にいうと50mg/kg/dayで生殖機能への影響なしとしていたのに、0.002mg/kg/dayでも影響があるという実験結果が出てきて、色々問題になった。そのため追試をしたところ、大丈夫だった、ということのようです。
動物でめっちゃ効いた抗癌剤が人で効かないなんてよくある話ですが、逆に動物実験で大丈夫なことが人で大丈夫なわけではないので、とりあえずpubmedでbisphenol Aと入力したところ53件ヒットして、いくつか見てみました。
疫学研究等では尿中のBPAの多寡に基づいて行っていることが多いみたいですね。めぼしいものだと、
・乳癌との関連なし(Int J Environ Res Public Health. 2021 Mar 1;18(5):2375.)
・心血管疾患との関連あり(Sci Total Environ. 2021 Apr 1;763:142941. Environ Health. 2015 May 31;14:46)
・糖尿病の発症率増加(BMC Endocr Disord. 2018 Nov 6;18(1):81)
・PCOSがある患者で尿中BPA高値(J Clin Endocrinol Metab. 2011 Mar;96(3):E480-4.)
・妊娠早期の暴露でADHD増加の可能性(Environ Int. 2018 May;114:343-356.)
・男児の生殖機能の影響(Reprod Toxicol. 2021 Apr;101:124-136.)があるという報告も、影響なしという報告もある(Biochem Pharmacol. 2022 Mar;197:114896)
発癌性に関する報告はほとんどなかったです。心血管リスク、生殖機能等への影響を報告するものはありますが、これだけだとBPAを多く摂取しないといけないような環境、BPAがある缶詰等が使われている食品それ自体が悪いのか、BPAそれ自体が悪いのかは分かりません。心血管リスクを評価するのであれば基礎疾患、血圧、塩分摂取量(これも代替医療の界隈では色々言われていますが・・・)などもしっかり評価すべきです。
で、それくらいは当然やられていて、心血管リスクを評価した上の2021年の論文で、年齢、性別、人種、BMI、喫煙、糖尿病、高血圧、脂質異常症の有無でpropensity scoreをマッチさせたリスク評価を行っており、尿中BPAのレベルと心血管リスクの相関は(これらの違いに関わらず)統計学的に有意でした。
propensity scoreはもっともに見えますが、降圧薬や発癌といったものならこういうのでもいいと思いますが、BPAという食生活に密接に結びついたものを、こういった要素だけで評価していいかは私には分かりません。少なくとも経済的な状況はこの解析の中に入れるべきだと思います。
私としてはこれらの論文をふまえても、BPAが明確に悪さをしているという確証はないと考えます。私個人としてもこれからもトマト缶などは普通に料理に使っていこうと思っています。