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大陸国家から海洋国家へ【経営・人事】

今日は、人事というテーマの大きな転換について。

今年、内閣府の価値共創TF委員としてオープンイノベーションに関し議論し、また多くの大企業のマネジメント層との議論を通じ感じたのは、これからの多くの企業にとってのメインの経営課題は、

◇個人の「内発的動機」をいかに発現させられるか

◇そうした個人が「活躍するための場の設計」をいかにするか

この2点に集約されるということでした。企業の本質的意義が、オペレーションから、イノベーション・価値創造に移行するなら、人事部の役割はこれまで以上に大きくなり人事部の出来が経営を左右することになるでしょう。ちなみに、僕は人事部専業の経験ないので、よろしければ、意見聞かせてください!

企業の役割の変遷

まず最初に、近代における組織の役割について考えてみたい。組織に求められた役割は、創業者や発明家が生み出し、価値が確定した世界において、いかに、「数・量」を増やすかということが主眼が置かれてきました。それは基盤となる「意味・価値」を生むここととは全く異なることを理解する必要があります。価値の固まった「大陸国家型マネジメント」から、価値が流動化している「海洋国家型マネジメント」へ移行しなければならないとは、そうした意味です。

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まず、資本主義という上位概念があり資本効率が求められます。そこから、大量生産、マス・コミュニケーション、大量消費こそが「資本」効率が良いとなりこれが普及しました。大量な資源を取り扱うならば、最適調達、最適生産、最適販売が重要となる。当然ですが、この「最適化問題」とは、最適な唯一解があるということです。そして、多くの企業人の仕事は、この最適化問題にいかに近づけるかということになり、それに全力を注いできました。しかし、最適化問題への最適解を求め自動化処理するというのは、概念レベルではすでに80年代には完成しています。つまり、私たちの多くは、80年代には完成した概念を応用する技術がまだ追いついていない分野の最適化問題を処理していたのです。実際、自分の仕事を少し俯瞰してみた場合に、この最適化問題ではないと言える人は少ないはずです。

ポストマテリアリズム社会

私たちは、他の先進国同様、ポストマテリアリズムの時代に既にいます。ポストマテリアリズムとは、簡単に言うと、モノの限界効用が極めて小さくなった世界です。KONMARIさんの、お片づけが、米国で人気となるように、モノを入手するより、捨てる技術が響く時代。
そうした世の流れに敏感な若者や、思考能力の高い者が、すでに価値の定まり、社会的な限界効用が小さくなった製品・サービスの、生産、流通・販売を最適化するための、全体のメカニズムの部品として働くことに満足感を感じないのは当然です。有名で、大きく、信用ある企業で、多くの20代社員がすぐに辞めていくことが分からないという、管理職の世代は、問題の本質は、小手先の職場環境(フリーランチやシェアオフィス)ではなく、この根源的な自尊心を満たすことのできない仕事の仕組みそのものに根ざしていることに気づかなければならないでしょう。

そうした状況を打破するため、多くの企業でイノベーションの必要性が叫ばれ(それはデジタルトランスフォーメーションとは異なります。デジタルトランスフォーメーションの基本は、すでに価値が定まった世界における効率化の話である。)何もかも、混ぜこぜで、オープンイノベーションブームと言われる状況が生まれています。

しかし、「意味・価値」を生むマネジメントは、「数・量」を生むマネジメントとは全く異なるものです。そもそも、新しい意味や価値が、概念レベルでどのように立ち上がってくるのかということ(インスピレーション、天啓などと言われる分野)は、理解され尽くされておらず(異質なものを掛け合わせるというのは、表層的な手法に過ぎない)今後も、一層の研究が必要な分野です(意識と物質が同じ根源から来ているという論調が増えており、この先に答えがあると思われます。)これは、つまり、マネジメントでは無く、環境設計、土壌設計の話であり、機械論的世界観からは新しいものが生まれることはなく、生物環境的、全生命的アプローチが必要です。そのような場では、個を開示できる心理的安全性が担保されていることが必須となるでしょうし、それは、評価などとは真逆の場所です。
今後、長期的に見るなら、意味や価値が定まった領域での競争は、AIやロボットの普及により、最適解に近づくに近づくほど資本投下の大きな熾烈な戦いになっていき、より市場は独占的になるとともに、限界利益は小さくなっていき、結果として公共領域に近いものとなっていくでしょう。

大陸国家マネジメントと海洋国家マネジメント

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そこで、人事の話に戻ります。これまで、企業においては、すでに価値(作るもの、得るもの)が定まった中で、量を増やすことを目指していました。確固たる地面の上に、兵力を展開すればよかったからです。必要なスペックはわかるし、必要な量もわかる。それらをどのように配置するのかということを時間軸を組み合わせ、最適解に近づけることが人事の仕事でした。その過程において、人材育成も入ってきましょう。

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一方、これから社会全体は一層流動化し、多様な価値観の下、流動化した個人が増えてきます。企業は、新しい価値や意味をどう作るかを、彼らと協力しながらデザインせねばなりません。その際、そうした個人が寄り付かない組織は、競争力を維持することは難しいでしょう。停泊しやすいように港を整備するということが必要となります。これまでの資源配分は、大陸内部のオペレーションの整備と、外部からの力を活用するための備えに対し99:1の配分だったとしたら、将来的には50:50となるようにシフトしていかねばならないでしょう。差別化の観点から全てのリソースをそちらに振り向ける企業も出てくるでしょう。一般的な企業においては、既存事業の投下資本が100だったところを、90で同じ生産高とすることで生産性をあげ、10の資本を新しいとこに向ける、当面、90:10くらいから始めるべきかもしれません。

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さて、問はシンプルです。あなたの会社の経営・人事部は、大航海時代の海洋国家に向けた準備ができていますか?それとも、大陸国家として内側に籠った時、十分な市場という後背地に抱えていますか?

WaLaの哲学 屬 健太郎

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はたらく意味のアカデミア「WaLaの哲学」

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