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羊たちの叛逆 第4章 米国の事情

ニュースピックスが記事にしてくれました!

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2020年、米国ではトランプとバイデンが大統領選において、文字通り国を二分する選挙戦を行った。選挙は、バイデンとカマラ・ハリスのタッグの民主党が勝利をした。バイデン政権は、それなりの政策を行ったのだが、一旦割れてしまった米国を統合するだけの力強いメッセージはなかなか出せずにいた。

副大統領としてバイデンを支える役割のカマラ・ハリスであったが、この政権としてのさまざまな限界も見え始めていた。そんな中でも中国は経済・軍事両面で拡大をし、資金と技術を多くの途上国に供与し続ける。それらは、中国の影響力を強めるためのものだと分かっていながらも、独裁政権など、政治的基盤の弱い途上国の政府は、喜んで受け取った。

世界は、米ソ対立の時代から、米中対立の時代、しかも、中国の方に勢いがあるという事態になっていた。自由民主主義を標榜する先進国間は、国内において貧富の差で分裂し、国際間においても自国ファーストと相互不審により、分裂し、そうした事態に効果的な手を打てないでいた。カマラは、この状況を打開するのは自分の責任だと感じていた。財界の有力者で、ダボス会議の創設者でもあるシュワブ証券のチャールズ・ゴードンに相談をした。

カマラ「私たちの国は、民主党、共和党との対立軸で政治を語り、相互に政権が移るたびに、バランスを取りながら弁証法的に発展してきました。相互に牽制機能があることで、前回の相手政権の逆効果を良い意味で超えていくという方法がこれまでは機能してきました。少し視野を広げるなら帝国主義の後の冷戦時代も同じ構造だったと言えるかもしれないわね。」

カマラ「しかし、今、トランプ前政権の行った逆効果を元に戻したところで螺旋的発展は期待できません。前の4年間、私たちの目線で無駄だったと考えることがなくなるだけでね。これは、明らかな停滞よ。一方で、トランプ支持者たちが、万が一にも次の選挙で勝ったなら、また、私たちの政策を元に戻すでしょう。メキシコとの国境に壁を作るわ。きっと。つまり、米国政治はすでに、ダッチロール状態なの。もはや今までの延長で政治を考えるわけにはいかない。」

米国副大統領からの電話だ。言葉は流れるようだが話す中身は重い。米国政治の根幹である二大政党制の否定だ。チャールズは黙って聞いた。

カマラ「もはや、米国は、民主党、共和党という戦いをしている場合ではないわ。停滞を打ち破るには、私たちが、よってたつPrincipleから見直さなければならない。これは第二の建国よ。」

沈黙があった。

カマラも、自分が思ったよりも大きな声でこの主張をしたことに少し驚いた。これが、自分の望みだ、と改めて気づいた。

チャールズは、静かに答えた。
「副大統領、率直なご意見、ありがとうございます。副大統領であるあなたの誠実な問題意識は、日頃私が考えていたこととも響き合います。また、財界の中でも同じような問題意識を持つ者が実はかなりおります。次のダボス会議のテーマも、そうしたことを議論するための場でした。」

チャールズ「事務局の内部でも、ポスト資本主義を唱える学者のいくつかのアイデアを追認することだけで、より大きな方向性を打ち出せずに終わるのではないかという危惧がありました。もう一歩踏み込む必要があると我々も考えておりました。副大統領の問題意識は、まさにそこに切り込む話です。そして、財界人も政治家も、理論だけではなく実践を旨とせねばなりません」

カマラ「チャールズありがとう。そうね。ちょっと、この問題を深く話し会いたいわ。このテーマで議論できそうな、財界トップを集めてもらえるかしら。メディアは抜きよ。政府の側でも、共和党も含め、実は問題意識を持つ者も多いの。非公式な会議を近日持ちましょう」

チャールズ「わかりました。財界10名、政界10名くらいでしょうか。」
カマラ「そうね。それで行きましょう」

こうして、2021年夏、米国の政財界のトップが秘密裏に集まったラウンドテーブル、通称 the 3rd Directionが開催された。



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