続編 警察小説のはなし
前に警察小説が好きと書きました。 そしてミステリーが好きとも。 考えてみたらミステリーは警察小説の要素として不可分のようで、探偵小説とほぼ同義でもあります。そんな警官を主人公にした小説をもう少し深掘りしてみます。
スコットランドヤードのジュリー警視(最初警部だったが出世した)シリーズを書いたマーサ・グライムズは米国人でありながら英国のイン(宿泊できる酒場)を舞台にした英国情緒たっぷりのミステリーを何作も世に出して、一冊読めば今すぐ英国酒場に駆けつけてビアジョッキを傾けたくなります。ちなみにミステリーのタイトルには全て酒場の名前が付けられています。もう読みたくなってきたでしょう?文春文庫からあらかたの作品が出版されています。あらかた、というのは、ある時点で翻訳本が出なくなっていて新刊は原書でしか読めなくなっているからで、どういう事情があるのかはよくわかりませんが残念なことです。探偵小説の古典的フォーマット(勿論シャーロック・ホームズとワトソン)に倣って、リチャード・ジュリー警視には親友で且つジュリー崇拝者の貴族(自分から返上したので元貴族)メルローズ・プラントがいて2人の活躍で事件を解決していきます。 名探偵とその相棒という今に続く探偵小説の様式が確立されたのはサー・アーサー•コナン・ドイルの功績といえますが、さすが女王陛下から「サー」の称号を与えられた人物だなと今更ながら感心してしまいます。
さてここで、以前にも書いた主任警部モースの登場です。BBCのドラマシリーズとして大変な人気を博したのですが、演じた役者さんも大人気となりました。ただの独身中年オヤジなんですが、優秀な成績でありながら訳あってオックスフォードを中退、オペラとワーグナーをこよなく愛し、クロスワードパズルとスコッチにのめり込み、頭の良い女性によく惚れるがなかなか思いは届かない。彼にもルイスという部下/相棒がいて探偵(警察)小説の伝統様式を受け継いでいます。イギリス人らしくビールとビターが好きだけど、常に持ち合わせがないと言ってはルイスに奢らせます。しかし何せコリン・デクスターの原作が13作しかないので、1シーズンしか持たない。続くシリーズは現代の作者が頭を絞って脚本を創作し続けた訳ですが、それも全33話で終了。モースの死で幕を閉じました。 現実の世界でモースを演じたジョン・ソウも惜しまれながら早逝し、その喪失感を埋めるように部下であったルイスが警部に昇進し、今度はケンブリッジ大の神学部出身の部下ハサウエイと共に活躍するスピンオフドラマ「オックスフォードファイル ルイス警部」が放映されてたちまち人気となりました。そのシリーズも終わりを告げ、またも視聴者がロスを感じる頃、満を持して新シリーズ「刑事モース」が開始されました。若き日のモースを描いたこのドラマシリーズは、主演にショーン・エバンスを迎えて現代の英国社会の抱える様々な問題を鋭く描き、若い世代にも随分と人気になったようです。このシリーズも23年に放映されたシリーズ9をもって終了となりました。ドラマの原題は「Endevor」、今までモース本人が決して人に明かすことのなかった(嫌いだった)彼のファーストネームになっていてこれも一種の謎解きになってるのですね。役者さんたちの話すイギリス英語の響きがミステリーには良く似合っていると思います。
どうですか、なんだかイギリスに旅してみたくなってきませんか。今までヨーロッパも含めあちこちの国に行きましたが、残念ながらイギリスには行ったことがなくて、死ぬまでに一度は行ってみたいと思っています。 また続きを書いていきますのでどうぞよろしく。
皆さんごきげんよう。