林業をやりたい!
やりたいことを伝えてみると上手くいかなかった経験はないだろうか?上手く伝えることができないだけならまだましで、恥ずかしかったり、やりたいことを誤魔化してしまうこともあるのではないだろうか。口に出してみると、自分自身がやりたいことを理解してなかったことに気づく場合もある。
やりたいことは、言葉にして伝える必要はあるのだろうか?無理に口に出さずとも、心の中に秘めて有言実行するだけでも多分良いのだろう。だけど、言葉にすることで、やりたいと考えていたことが、想像以上に広がっていく可能性もある。
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僕の場合、何年も前からカナダへ林業を勉強しに行こうと決めていたわけではなかった。林業に興味を持ったことから、全ては始まった。東京でサラリーマンとしての生き方をこれ以上続けたくはない。そう考えていた。でも、代わりになる働き方や生き方を見つけるのは難しかったから、週末や休暇で農業林業のワークショップに参加して、東京から地方に移住して生活している人たちを訪問して数日間滞在させてもらったりもしてみた。その中で、自伐型林業(少人数でチェーンソーや小型機械で山を管理して長期的なスパンで行う林業)にすごく興味を惹かれた。地方に移住して、林業を仕事にしたいという思いが強くなり、頭の中で新生活が勝手に盛り上がっていた。
いざ奥さんに地方に移住して林業をしたいと思いを打ち明ける時、なぜ林業をやりたいのかを伝えるのが難しい。
「なんで突然林業やりたくなったの?」
今まで奥さんに林業の「り」の字も喋ったこともなく、東京から出ようと相談したこともない。やりたいことを伝えたその後のリアクションが怖かったから、言葉にせず胸の中にため込んでいた。正直な思いを伝える。この年になってと、自分の中で気恥ずかしさが顔を出す。
「東京から出たい」
「今からみたいなサラリーマン生活ではなくて、心底満足できる仕事がやりたい」
「林業って面白そうなんだ」
出てくる言葉は、チープだ。
「それで、なんで今までの仕事や生活を全部捨てて林業を選ぶのか理解できない」
言葉は上滑るばかり。
「林業は、農業と比べると天候にも強いし…」
「自伐型林業というのは、従来の大型機械を使う林業に比べて…云々」
これが林業をやりたい理由だっけ?伝えれば伝えるほど、なぜ林業をやりたいのかが分からなくなっていく。地方で稼げそうだから?そうだろうか。自然や森に惹かれるから?そうかもしれない。いや、どうだろう。ずばんと明確な理由が、わからない。奥さんにも、自分にすら伝わらない。すると、
「熱意みたいなものがあるのはわかるし、林業はこれから来そうな気がする。よい選択かも」
意外な答えだ。自分ですら、こんがらがっているのに。それでも、思いが少しでも伝わったのが嬉しい。地方で新しい生活が始まるのか。その瞬間、
「地方には、行かない」
奥さんが言い放つ。
◆さらなる難問?
「今の仕事にやりがいがあるから、地方に引っ越す気はない」
揺るがない。彼女は、とても堅い意志を持っている。
それでも、話しを続けるといろんな思いが溢れてくる。
「東京でのライフスタイルってどうなのかな」
「将来、子どもが生まれた時に良い環境なのかな」
話は続く。
「だったら、海外で一から新しく生活をつくってみる?」
「林業もそこでやればいい」
「仕事もなくなるけど、それでも頑張れるよ」
最初は、地方で林業をやりたい話だった。今は、海外で林業やってみるかに変わってた。話は広がる。
「林業やるならしっかり勉強して、仕事に役立つ資格を取ったほうがよいね」
「まずは林業学校で勉強したほうがよいかも」「移民をたくさん受け入れている国民がいいね」
具体的なアイデアがどんどん出てきて、話にキリがない。移民が多くて、森に囲まれたカナダの雰囲気を体感しなければとバンクーバーとAlbertaに行く計画。林業学校を探すもかなり大変だったこと、エトセトラエトセトラ。そんでもって、カナダで林業学校に通うことに。
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「やりたいことを伝える必要はあるのか?」
今は、この問いにYESと答える。言葉にするのは、とても難しい。素直に口に出すのは、恥ずかしい。家族と一緒に暮らしている状況では、躊躇もするだろう。家族の人生を左右するのだから、簡単ではない。それでも、自分がやりたいと思った道を一緒に歩いていきたい。言葉にしてみてほしい。そうしたら、想像以上に面白い展開が待っているかもしれない。
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