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ようやく一日が終わった。放心状態で何もする気が起きない。ソファに寝ころんだまま、無暗にスマホをいじる。指で画面をなぞれば、次から次へと情報が現れる。情報は表面を滑り、泡のようにどこかへ消えていってしまう。頭の芯がふやけて、ぐにゃぐにゃに溶けてしまっているかのようだ。自分の中を何もかもがサッと素通りしていく。もう寝たほうがいい。スパッと切り替えて朝早く起きれば本を読んだりする時間ができるのではないか。何度もそう思うが、指は画面をなぞり続け、身体はぐったりとソファに沈んだままだ。
身体の中に残っている眠気を追い出すように、冷たい水で顔を洗う。ザァァと蛇口から出る水がいつもよりも冷たく、気持ちが良い。タオルで顔を拭き、鏡の前に立つ。喉ぼとけの周りを何度か触る。髭の剃り残しがどうにも気になって仕方がない。チクチクとする短い髭をつまむ。どうせ、すぐに生えてくるからまあいいか。まだ剃ったばかりの髭が青々としているのを見ると、げんなりしてしまう。この髭の濃さは、父親譲りである。「お父さん、この前来てくれたけど、あの髭の濃い人だろ?」と小学校の頃に通っていた床屋で
起きたいのに布団からなかなか出られない。もう少しだけ布団の中にいたい。土曜日の朝。一週間の中で一番好きな時間。何かに急かされることがなく、何でもできそうな自由な時間。意を決し、がばっと布団を剥ぎ取る。身体を包んでいた暖かい空気が霧散した。上半身をゆっくりと起こす。頭はまだぼおっとして身体の動きがぎこちない。寝る前に触っていたはずのスマホはどこだろうと枕もとを探る。枕の下に黄色いカバーが見えた。スマホを掴み、立ち上がる。 寝室のドアを開けて、リビングに足を踏み入れた。寝室よりも