面白くないパワハラのこと

入社した翌日に出た会議で、パワハラ上司が取引先の男性にパワハラしているのを見て、え、怖っ、なんかおかしくない？と思ったが、せっかく入った会社がおかしな会社だと信じたくなくて、少なくとも三年は辞めたくないし、あれはたまたまだと思うことにした。

けれどもその次の週も、その次の週も誰かへのパワハラは続いていて、入社して一か月後くらいにそれまでさん付けで呼ばれていた私が急に呼び捨てで席まで来るように呼ばれた。そこで静かに、しかし全面的な不快感を見せながら耳元で太い声でキレられた。私はあまり人から怒られたことがなかったので非常に驚き、傷ついた。

呼び出された後、席に戻ると隣の席の男性に「大丈夫だった？」と聞かれて、「ああ、はい、大丈夫です」みたいに答えた気がするけど、全然大丈夫じゃなかった。心臓はバクバクしていた。なんで怒られなきゃいけないのか全然わからなかったし、あまりに理不尽だったので腹が立った。

その時くらいからその人が怒るポイントのようなものを掴んで、怒られないような立ち回りをしたり、言い訳を考えたりして過ごすようになった。あるいは誰かが怒られそうなことがあったら根回しをして、それって絶対あの人が怒るから、こういう風にしておいた方がいいですよというアドバイスもできるようになってきた。何の意味もないスキルアップである。

会社のためを考えると絶対こうしたほうがいいんだろうなと思うことがあっても、その男の会社なのだから、売り上げなんて伸びなくてよい、むしろ潰れればいいのにと思うようになり、私はお給料をもらうための最低限の仕事をこなすようになり、三か月後にはやる気もほとんど失ってしまっていた。

そのパワハラ上司のせいで、どんどん人が辞めていっては、また新しい人が入ってくるし、常に新しい仕事の話があって毎日が目まぐるしかったが、特に何の感情もなく、ただただ自分が怒られることが少なくなるといいな、と思う日々だった。