トランプ詐欺にあった話@カンボジア
大学4年生の夏、卒論に向けた研究のために1人でカンボジアに行った時の話です。真面目に研究をしていた傍らトランプ詐欺にあいました。
トランプ詐欺とはポーカーやブラックジャックといったトランプを使ったゲームを通してお金をだまし取る詐欺です。読み進めて頂ければなんとなく分かるかと!まぁ
【詐欺師との出会い】
ある日の昼、1人でカンボジア首都プノンペンの中心街ホテル近くの公園を散歩していたところ、40代くらいのおばさんに声をかけられました。
※写真はイメージ
聞くところによるとマレーシア人でカンボジアに来て仕事をしているとか。僕も暇だったのでしばらく話し込んでいました。
マレーシア人のおばさん
「あなた、どこから来たの?」
僕
「日本さ!大学の研究のために来たんだよ!」
おばさん
「あらあなた大学生なの?実は私の娘が日本の早稲田大学の国際教養学部に留学しているのよ~」
僕
「え!?僕も早稲田ですよ!すごい偶然ですね!」
おばさん
「あら本当に?あなた優秀なのね~」
といきなり物凄い共通点を発見!早稲田って偉大だな・・・と思いながら話が盛り上がります。さすがにこれは僕もかなりテンションがあがりました。
おばさん
「でも私の娘はまだ日本語が完璧じゃなくて日本でなかなか友達が出来ないみたいなのよ・・・良かったらあなた友達になってくれる?」
僕
「ええ・・・まぁいいですけど。」
おばさん
「ちなみにこれが私の娘よ!」
と言いながら僕に娘の写真を見せてきました。
見ると・・・普通に美人です。笑 僕の好みの堀が深いのに透明感がある感じ、純粋に会ってみたくなっちゃいました。笑
僕
「え、めっちゃ可愛いっすね!絶対に日本でもモテてますよ!」
おばさん
「ありがとう。でも今帰国しててうちにいるんだけど、まだちょっと落ち込んでいるのよ。良かったら今からうちに来て励ましてくれない?」
僕
「ええ勿論!」
おばさん
「じゃああそこにいる男性の原付バイクで行きましょ! さぁ!」
そう言っておばさんが指差した先には凄くイケていないおじさんが原付に乗りながらこっちを見ていました。
今考えると完璧に怪しいのですが、僕の中では
怪しい <<< 可愛い子に会いたい!
という式が成り立っていたので迷わず原付に跨りました。
おじさんの後ろに僕が跨ったのですが、おばさんは僕の後ろに跨ってきます。初めての経験だったのでびっくりしましたが、カンボジア含め途上国ではけっこう見る光景だったので一旦そのまま出発。
※写真はイメージ
前方におじさんの皮脂の臭い、後ろに40代女性の肉厚を感じながら街をどんどん離れていきます。
【家に連れ込まれて】
30分ほど運転するとカンボジアのスラム街に着きました。ボロボロのアパートが立ち並び、道には浮浪者がたむろしているような場所です。
今思い出すととても恐ろしい状況だったと思うのですが、あの時は”今から美女に会える!”という期待で頭がいっぱいで、そんな恐怖は全くありませんでした。
案内されたアパートの階段を登り、リビングの様な部屋に通されました。そこには50代くらいのおじさんがいて、僕の前に座りながら話しかけてきました。公園で僕に声をかけて来たおばさんは僕の横に座りました。
家政婦さんらしき人がお昼ご飯を作ってくれたのでそれを食べながら談笑をします。
おじさん
「君はどんな研究をしているんだ?」
僕
「カンボジアの建築の研究です!」
おじさん
「そうなのか!じゃあこうやって実際に家に入る機会はありがたいんじゃないか?」
僕
「はい!とても貴重な経験です。家の中の写真を撮っても良いですか?」
おじさん
「いや写真はやめてくれ。」
僕
「はぁ・・・なぜでしょう?」
おじさん
「宗教上の理由だ。」
といった具合でところどころに違和感を感じながらも、ここは異国ですので従いました。しかしなぜか横に座ったおばさんは終始顔を強張らせています。そしていつまでたっても美人の娘さんは出てきません。
僕
「おじさんは何の仕事をしているんですか?」
おじさん
「僕か、僕はポーカーのディーラーをやっている。」
何かかっこいいな・・・と思いました。
僕も詳しくは無いですがポーカーのルールくらいは知っていました。トランプが5枚配られて、カードの組み合わせで強さが決まり勝負をして買った方がお金を貰える掛けゲームです。ロイヤルストレートフラッシュとかが有名ですね!
僕
「かっこいいですね!どこでやっているんですか?」
おじさん
「船上さ!月に一回船上でパーティーを開いてそこでディーラーをやるのさ!」
僕
「へぇ~凄い! 僕のおじいちゃんは昔海上保安官だったんですよ! 船の男ってかっこいいですよね!」
おじさん
「そうかそうか!笑 ありがとう。」
話も盛り上がってきて僕がおじさんの仕事に興味を示したタイミングです。詐欺師からすると絶好の切り出しタイミングだったのでしょう。
おじさん
「でも実は最近悔しい思いをしたんだ。先月のパーティーで僕はあるアメリカ人とチート(ずる)をしたんだ。僕がディーラーでアメリカ人がプレイヤー、その中で僕がアメリカ人をチートで勝たせるから儲けを折半するという約束をして俺はそのアメリカ人を勝たせたんだ。そしたらそのアメリカ人は設けを全部持って行ってしまったんだ!あれは本当に悔しかった!」
僕
「なんと・・・それは悔しいですね・・・」
おじさん
「そうだ!俺はそのアメリカ人に復讐をしたいんだ、君協力してくれないか?」
話を持ち掛けてきました。笑 ちなみにこの時点では僕はまだ怪しいとは気付いていませんでした。
協力の意味が分からずきょとんとしていると奥の部屋に連れて行かれました。
通された部屋は、窓は一つも無く電球が一個天井からつるされているだけ、紫の壁紙に紅色の絨毯、真ん中にはポーカー用の緑色の卓があるという怪しい以外の何物でも無いような部屋でした。
流石に恐怖を感じましたが時すでに遅しです。
緑の卓の前に座って、練習としてディーラーがおじさん、プレイヤーが僕とおばさんでポーカーが始まっちゃいました。
すると何度やっても僕が勝つのです! しかも毎回凄く強い組み合わせで。さすがこの道30年のおじさん、チートのやりかたを熟知しているみたいです。
おじさん
「ほらな?俺はお前を絶対に勝たせることが出来る。これならアメリカ人を勝負しても絶対に大丈夫だろ!」
僕
「たしかに・・・」
流石の僕もこの状況の全てに怪しさを感じ始めています。だって美女に会いに来たのにポーカーをやっているんですもの・・・
おじさん
「じゃあ今からアメリカ人を呼ぶぞ、いいな?」
なんとかこの状況を打破しなければと様々な言い訳をしましたがなかなか理解を得ません。
しかしついにおじさんを言い負かすことが出来ました!その会話が下記です。
おじさん
「なぜやらないんだ?君には何もマイナスは無いんだぞ?」
僕
「いや・・・実は僕は大学のルールでギャンブルをやると大学を退学になってしまうんだ!」
おじさん
「・・・なんだと?早稲田大学を退学になってしまうのか??それは勿体ないな・・・分かったポーカーはやめよう。」
僕
「???」
という流れで見事におじさんを言い負かしました!すごいな早稲田大学、なんでカンボジアでこんなにネームバリューがあるんだ・・・?
とりあえず早稲田大学のお陰で危機を乗り越えました。笑 怪しい部屋も出され、最初に食事をしていた席に戻されます。
しかしおじさんは諦めません。折角のカモですからね。
おじさんは戦法を変えてきました。
おじさん
「君はこの国の貧困をどう思う?」
僕
「そうですね・・・まだまだやらなければならないことが沢山あると思います。」
おじさん
「そうだろう。では君はこの国に募金をしたくは無いか?」
そう言って封筒を差し出してきました。
おじさん
「いくらでも良いんだ、君の気持ちをここに入れて欲しい。もし募金をしてくれたら君の名前が明日の新聞の一面に載るんだ!こんなに名誉なことは無いだろう?」
僕はだんだんイライラしてきました。
そもそも美女に会いに来たのに、ポーカーでお金を騙し取られようとした上にあからさまな嘘までつかれて最悪の気分です。募金したことが新聞の一面のニュースになる訳ないでしょ・・・
ダンッ!
僕は机を叩きました。
僕
「僕はこの国の貧困はお金では解決できないと思います。
真の意味でこの国が貧困を抜け出したいのならば、自らの教育によって自国の若者の才能を伸ばし、早く国際社会で勝負できる人材を育成すべきです!
でなければ長期的な問題解決にはならないと思います!」
後にも先にもこの時が人生で一番すらすらと英語が口から出てきました。きっと語学って気持ちなんですね~
これにはおじさんも驚き、すぐに封筒を回収して謝ってきました。
僕
「それでは失礼します。」
そう言いながら僕は部屋を出て階段を降りていきました。長い戦いもこれにて終了です。
「・・・きまった。」
正直そう思いながら階段を降りました。
そして気付いたんです。
「・・・どうやって中心街に戻れば良いんだ?」
そうです、ここまで三人乗りの原付で連れて来られたので帰り方が分かりません。勢いよく飛び出してきましたが仕方ありません。さっきの部屋に戻っておばさんに中心街に送ってもらえるように交渉をしました。笑
僕の先ほどの正論が響いたのか、快く送ってくれました。帰りの原付の上で「ガソリン代をくれないか?」とたかってきた点以外は。
【おわりに】
結局公園でおばさんと出会ってから3時間ほどで元の場所に戻ってくることが出来ました。思い返すと危険だったな~と思うのですが、途上国のリアルを見れたのは良かったです。
あとあと地球の歩き方を見ると、僕が受けた詐欺は「トランプ詐欺」という名前でちゃんと注意喚起されていました。さすが地球の歩き方・・・
皆さんも知らない人には付いて行かない様にしましょうね!
サポートありがとうございます! もっと面白い記事を書いていきたいと思っているので、ぜひコメントで率直な意見を頂けると嬉しいです!