富士山からの弾丸フィンランド~ポンコツまーてぃん君~
富士登山からフィンランドの結婚式に直行した時に経験した、僕の人生で一番のサバイバルエピソードです。
【背景】
僕は高校一年生の時に一年間ニュージーランドに留学していました。その際お世話になったホストファミリーのところに同時期に留学をしていたのがドイツ人のまーてぃん君です。
※左が僕、右がまーてぃん君です。
皆さんはドイツ人と聞いてどんな人を思い浮かべますか?背が高くてユーモアセンス溢れる自信家。勤勉でプライドが高いエリートなど、きっと”かっこいい”イメージが多いのでは無いでしょうか?
まーてぃん君は全てが逆でした。いや、正確には背は低くてユーモアセンスは無いけど自信家。怠惰でプライドは高いポンコツなので全てでは無いですね・・・
まーてぃん君の代表的なエピソードをお伝えします。
ある時、まーてぃん君はホストファミリーに聞きました。
まーてぃん君
「ねぇお母さん!どうしてこの家族の車は全部日本製なの?車はドイツ製が世界一なんだぜ!」
ホストマザー
「日本製の方が燃費が良くてなかなか壊れないからよ。おまけに中古車だととても安いのよ!ねぇけん?」
※けん=僕です。
僕(けん)
「そうだね!日本とニュージーランドはドイツとニュージーランドに比べて貿易も盛んだし、購入しやすいのかもね!」
まーてぃん君
「え?何を言ってるんだ!車は絶対にドイツ製だって!日本製も悪くないけどドイツ製には敵わないよ!」
ホストマザー
「ではドイツ製の車のどこが日本製の車よりも優れているの?」
まーてぃん君
「だって日本製の車って時速180kmまでしか出せないだろ?ドイツ製なら時速300kmは出るんだぜ!」
ホストマザー
「なるほど、確かにドイツ製の車の方が速いかもしれないわね。でも実生活では時速300kmも使わないのよ。。。せいぜい時速150kmだわ。」
まーてぃん君
「それはニュージーランド人がとろいからだよ!!」
・・・といった具合です。
ちなみに当時僕は16歳、まーてぃん君は17歳です。
そんなまーてぃん君はニュージーランド留学中に知り合ったタイカというフィンランド人の女の子と母国に帰国後交際を開始します。まーてぃん君にとって人生初の彼女だったそうです。
ドイツとフィンランドの遠距離恋愛、なんかロマンチックですね~笑
後に2人は"一緒にいたいから"という理由で一緒にイギリスの大学に入学して同棲を開始しました。
タイカは英語も上手で頭が良く、とてもアクティブで実家はお金持ちでした。おまけにとても心優しく野心家で、僕も友達としてとても大好きな女の子です。
2人の交際を知った直後、僕はホストファミリーと「なぜタイカはまーてぃん君を選んだんだろうね??」という話題で盛り上がったものです・・・
※左が僕、右がタイカ。
【結婚式の連絡】
留学から帰国して6年がたった寒い2月、まーてぃん君からタイカとの結婚式の招待状が届きました。7月にフィンランドで挙げるから僕にも是非来て欲しいという内容でした。ホストファミリーもニュージーランドから地球を半周して来るそうなので、僕も迷わず「参加する!」と返事しました。
その時僕は就職先も決まっていた22歳の大学四年生、卒論の提出が終わって羽を伸ばしていた時期でした。
「詳細はまた追って連絡する!」と言われたのでしばらく放置、その間に僕はヨーロッパや南米を旅して、気付けは4月にピカピカの新卒社員として社会人デビューをしていました。
僕の新卒で入社した会社は、伝統的に新入社員が7月に富士山に登り全員でご来光を観る。というイベントがあります。響きは素敵ですが実際は登頂順位がつくデッドレースです。富士登山の直前には体育会系出身の体力に自信がある新入社員は本気で身体を作ってきます。(事前に富士山に登ってコースを確かめる同期もけっこういました。)
※今は働き方改革の一環で競争要素は無くなったそうです。
僕は運動神経にはそこそこ自信があったものの、箱根駅伝を走った奴や大学サッカー部のキャプテンの同期たちに勝てる気がしなかったので、当初はそこそこ頑張って人生初の富士登山を楽しもう!程度の気持ちでした。
しかし何の運命か僕の職場の一番最初のトレーナーが昨年の富士登山一位の人、元世代別サッカー日本代表の人だったのです。体育会系の頂点の様な彼は当然僕に対しても
「お前も一位を取れよ。」
と言ってきます。(冗談なのか本気なのかは分かりませんでした)
困ったな・・・と思いながらも富士登山本番の日が近付いてきます。
5月のある日、まーてぃん君から結婚式の詳細が送られてきました。
するとなんと、結婚式の日程は富士登山の翌日でした!
もちろん僕は慌てて飛行機を予約したりしてスケジュールを確認しました。
ちょっとややこしいので下記にその時のスケジュールをまとめます。
※土曜の時刻はフィンランドの時刻です。
突っ込みどころ満載かとは思いますが一旦スルーします。ここで一番の問題はフィンランドのヘルシンキ空港に到着した3時間後に結婚式が始まってしまうことです。
まーてぃん君から貰った結婚式の招待状に挙式の詳細な場所が書いてなかったので、僕はfacebookのメッセンジャーで聞きました。
僕
「ねぇまーてぃん君!挙式ってヘルシンキのどこでやるんだい?」
まーてぃん君
「ふふふ、それは到着してからのお楽しみさ!」
僕
「そうか、、、じゃあ僕はヘルシンキ空港に到着したらどこに向かえば良いんだい?」
まーてぃん君
「けんのためにバスを予約したよ!添付のチケットを頼りに空港でバスを見つけて乗ってきてくれ!到着するバス停に俺がお前を迎えに行く。感動の再会さ!」
僕
「そうか、、、じゃあ念のためまーてぃん君の電話番号を教えてくれ!当日何かハプニングが起きたら連絡したいからさ!」
・・・
その後まーてぃん君からの連絡は一切途絶えました。
とりあえず添付されていた二枚のバスチケットだけが結婚式場にたどり着くための頼りとなりました。
【富士登山】
天気は快晴で絶好の登山日和でした。前日朝まで飲まされた同期や、なぜかスーツに革靴で来た同期もいましたがひとまず出発。無事富士山の登山口に付きました。
16時ごろに順々に登山開始!体力に自信がある同期は最初から全力ダッシュしたりしています。僕も先輩に「一位を取れ。」と言われていましたが、始まった瞬間「やっぱり真っ向勝負では勝てない・・・」と悟りました。
(だって半袖半ズボンで走って登ってる奴いるんだもん!笑)
しかしそこで僕はある天才的なことを閃いたのです!
富士登山の順位は基本的に登頂の順位を指すのですが、実は下山にも順位が付くのです。僕のトレーナーは「一位を取れ。」と言っただけで登頂順位か下山順位かは指定していませんでした。(俺天才!)
という訳では僕は下山に命を懸けました!
結局僕の登山順位は300人中25位、通常6時間のコースを3時間で登りました。そこそこは頑張ったかな?(ちなみに一位は2時間でした・・・)
その後仮眠を取って、朝には無事綺麗なご来光を観ることが出来ました。
※山頂での一枚。
しかしそんなことはどうでもいい小事です。
ご来光を観て、万歳三唱が終わって300人皆が一斉に下山を開始するや否や、僕は一目散に坂道を下って行きました。
もちろん何人か下山の高順位を狙っている同期は同じく走っていましたが、皆登りで体力を使い切っているからか脚が重そうです。
そんな中僕は半分転がりながらも一回も休まず下山!
というか本当に何回か転がり落ちながら下山!
その結果身体中あざだらけになりましたが、下り4時間半のコースを45分で下り切り、堂々と一位を獲得しました!
(二位は僕の30分後くらいに来ました)
ふもとでは僕のあまりの速さに迎えのバスはまだ来ておらず、下で待っていた当時の社長さんとしばらく団欒することが出来ました。
※左が社長さん、右が下山一位の人のみ貰える被り物を被っている僕。
一時間ほど待ったところで迎えのバスが到着、僕は一位の札を持ちながらバスに乗り、第一陣で会社に戻りました。
(下山順にバスで会社に戻る仕組みでした。。。)
トレーナー含め誰も僕には期待していなかった様で、"下山一位"はその後の社会人人生でたま~に話のネタに使えたので頑張って良かったです。
唯一残念だったのは第一陣で下山してしまったため会社には一番早く到着しちゃいました。なぜか僕の部署は業務に戻るようにと言われていたので結局僕は12時~18時ごろまで仕事をしていました。。。
流石に心身ともにボロボロだったのでミスを連発、ちょいちょい先輩に怒られました・・・辛かった・・・
【いざ結婚式へ!】
業務もさっさと終え、事前に会社に持ってきていたフィンランド用の荷物を富士登山用の荷物と取り換え、家に戻らずそのまま成田空港に向かいます。アドレナリンが出っぱなしだったためか全く眠くありません。
20時には空港に到着することが出来、22時のフライトにも無事に乗ることが出来ました。(いや~良かった良かった!)
飛行機では流石に僕も爆睡してしまい、トランジット(乗り換え)もあったのですが全く記憶が無く、気付いたらフィンランドのヘルシンキに到着していました。
しかし、安心も束の間、ここからが本当のサバイバル開始でした・・・
まず飛行機が遅延してしまい、12時着の予定が12時半着になってしまいました。
まーてぃん君から受け取っていたチケットには12:50発のバスと書いてあったので不安に駆られながらも税関などを一番最初に潜り抜け、インフォメーションセンターにバスのチケットを見せながら場所を聞き、どうにかバスに間に合いました。(ふ~走った走った~)
無事バスに乗った後、再びバスのチケットをチェックします。ちなみにチケットはフィンランド語で書いてあり基本的に何も読めません。数字と雰囲気で読み取ると、12:50に○○バス停発~13:30△△バス停着と書いてあります。到着先のバス停名は読めなかったのでとりあえず13:30ごろに到着したバス停で降りてみました。
13:30にそれっぽいバス停に到着。
まーてぃん君は事前に
まーてぃん君「けんのためにバスを予約したよ!添付のチケットを頼りに空港でバスを見つけて乗ってきてくれ!到着するバス停に俺がお前を迎えに行く。感動の再会さ!」
と言っていたのでここで感動の再開か!
・・・と思ったらやっぱりまーてぃん君はいません。結局その後30分ほど待っても来ませんでした。
さて、時刻は14時です。結婚式は15時に開始してしまいます。
「どうしよ・・・あと一時間で結婚式始まっちゃう・・・」
そう思いました。
僕は「とりあえず今の状況をまーてぃん君に説明して誰かに迎えに来てもらうしか無い・・・」と考えました。
しかし僕はスマホは持っていたものの、ネット環境も電話出来る環境も無く、現金は2万円程度しかありません・・・困った・・・
【イケヤ・ファミリーメンバー】
途方に暮れながら周りを見渡すと、近くに日本でもお馴染みの家具店"イケヤ"がありました。
そして僕はイケヤを見てある天才的なことを思いつきました。
「イケヤに行けばWi-Fi環境があるのでは?」
もう迷っている時間は無いのでとりあえずイケヤに潜入しました。そして店内で自分のスマホのネット環境を確認したところWi-Fiがありました!
「よっしゃ~~~~!!!!」
と思いながらネットの接続を試みます。
店舗に紐づくWi-Fiだったので生年月日やら名前やらを登録します。
店員さんに聞きながらフィンランド語を英語に訳してもらいなんとか全項目を記入。
登録完了を押したら"イケヤ・ファミリーメンバー"になるのと引き換えにWi-Fiが使えるところまで来ました。
「ポチッ」
登録完了ボタンを押しました。
すると下記メッセージが表示されました。
「登録いただいたメールアドレスにURLリンクを送りました。そのリンクをクリックしたら、あなたは正式にイケヤ・ファミリーメンバーになれます。」
(もちろん本当はフィンランド語です)
つまり、今から僕は自分のメールボックスを開きリンクをクリックしなければなりませんでした。
・・・当然ネット環境がまだ無いのでメールボックスなんて開ける訳がありません。
僕のイケヤチャレンジは終わりました。イケヤファミリーメンバーにはなれなかった・・・
【ヘイ!タクシー!】
またもや途方に暮れながら、ふと、まーてぃん君が僕に二枚のバスチケットを送ってきたことを思い出しました。
何気なくその二枚を確認したところ、僕はとんでもない勘違いをしていることに気付きました!
僕は当初、てっきり"行き"のチケットと"帰り"のチケットの合計二枚を送ってくれたのかと思っていました。
しかしよく見ると先ほど確認したチケットの到着先のバス停の名前(今いる場所)と二枚目の出発のバス停の名前の文字がフィンランド語で同じでした!
そうです。
まーてぃん君はトランジットを一回する前提での行きのチケットのみを送ってくれていたのです!
流石の僕も焦りましたが時間がありません・・・弾丸旅行だったのでネット環境も電話もありません。お金も2万円くらいしか持って来ていませんでした。
ですがとりあえず向かうべき場所は分かりました。そう、二枚目のチケットの到着先のバス停に向かえば良いのです!
「ヘイ!タクシー!」
とりあえずタクシーを停めます。
※写真は日本でヒッチハイクをした時の写真です。あくまでイメージ。笑
タクシーのドライバーは60歳前後のおじいさん、英語は全くしゃべれなかったのでジェスチャーとチケットで、行先と急いでいる旨を伝えました。
するとおじいさんは何やら怪訝そうな目で僕を見つめながらフィンランド語で何かを伝えようとしています。
なかなか意思疎通が出来ない僕を見て、おじいさんがカーナビに目的地を入力し始めました。そして行先の登録が終わった画面の走行距離の部分を指さしました。
そこには"100km"と表示されていました・・・
つまりおじいさんはボロボロの姿の僕を見て「タクシーで100km行くのは相当お金がかかるが大丈夫か?」と伝えようとしてくれていたのでした!
(ちなみに日本でタクシーで100km走ると約3万5000円かかるそうです)
僕の所持金は2万円ですし、このタクシーで使い切る訳にはいきません。何より飛行機代の25万円を自腹切っているのでこれ以上の出費は普通に嫌です。
僕は金は無いが何とかしてくれ!と英語で必死に訴えかけました。するとドライバーのおじいさんは困ったのか携帯電話で誰かに電話をかけ、その電話を僕に渡してきました。
全く意味が分からなかったのですが、電話に出てみると受話器の向こう側でおばあさんがこんなことを言っていました。
「始めました。○○タクシー会社ヘルプセンターです。何かお困りでしょうか?」(英語)
そうです、おじいさんは気を利かしてくれて英語の話せるタクシー会社の人と繋いでくれたのです!
僕は富士山からフィンランドの結婚式に直行している経緯を全て伝え、現金は2万円しか無いが何としてでも30分後に始まる結婚式に出席したい旨を物凄い熱量で伝えました!
するとおばあさんは
「あらまぁ、それは一大事ね!分かったは、運賃は一万円で大丈夫です。ドライバーには私から伝えます。無事に結婚式に間に合うと良いわね!」
と神のような提案をしてくれました!
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
僕は死ぬほどお礼をしてドライバーに携帯電話を返却、ドライバーも事情を呑み込んだのか電話を切ると
「シートベルトをつけろ、飛ばすぞ!」
的なことをフィンランド語で多分言いながら、満面の笑みでタクシーを発車してくれました!
この時僕は本当にフィンランドが好きになりました・・・ルールが第一の日本じゃあり得ない出来事だと思います。
さて、テンションが上がったおじいさんドライバーはタクシーを時速160kmで飛ばします。交通量は少ないものの、途中何回か平気で信号無視をしていたのはけっこう恐怖でした・・・
僕はもう現地で着替える時間も無いと思い、タクシーの後部座席で持ってきたスーツと革靴に着替えました。
暴走タクシーの中ですっぽんぽんになってスーツに着替えるアジア人、きっと傍から見たらB級アメリカンコメディーのワンシーンに見えたでしょう・・・
【ありがとうfacebook】
さて、15:00ちょうどに目的のバス停に到着しました。結婚式が始まった時間だったので、もちろんまーてぃん君は待っていませんでした。
ちなみにまーてぃん君は結婚式が始まる15分前の14:45に僕をこのバス停でピックアップする予定だったようです。
主役である新郎が挙式の15分前にバス停まで参列者を迎えに行こうとしていたのです。
流石まーてぃん君・・・
(後々聞いたところ本当に迎えに来てくれていたようです)
死ぬほどお世話になったタクシーとはここでお別れ。しかしバス停の近くで結婚式を挙げている気配も無いのでまたまた途方に暮れてしまいました。
とその時、近くにショッピングセンターが目に留まりました。
「ショッピングセンターだったらWi-Fiがあるだろ!そしてまーてぃん君に連絡が出来る!」
そう思いショッピングセンターに入りました・・・がイケヤの時と同じ理由で接続不可。またまたまたまた途方に暮れてしまいました。
仕方ないのでショッピングセンター内を徘徊していると、若い女の子が店番をしながら暇そうに携帯電話をいじっているのを見つけました。
(ちなみに2015年当時、フィンランドでスマホはほとんど見ませんでした)
その暇そうな女の子を観た瞬間、僕はまたも天才的なことを思い付きました!
僕
「ヘイ君!君の携帯電話を貸してくれないかな?実は・・・という理由で今困ってるのさ。そこで君の携帯電話から僕のfacebookアカウントにログインをして、メッセンジャーを使ってまーてぃん君に連絡を取りたいのさ!」
暇そうな女の子
「それは大変ね~もちろん良いわよ!入力を英語に変えるから少し待っててね。」
僕は天使に出会いました。神の次は天使!
ちなみにその子は15歳の女子高生、夏休みの間だけ親のお店を手伝っていて店番で退屈していたそうです。
フィンランド含め北欧の人は英語が上手なので会話にも全く困りません。
結局、その女の子の携帯電話を使ってまーてぃん君にメッセンジャーで連絡をすることが出来ました!万歳!
しかし10分経ってもまーてぃん君から返事は来ません。結婚式の最中だから当たり前かもしれませんが僕は困りました・・・
とりあえずタイカにもメッセンジャーでメッセージを送ってみました。
すると10秒も経たない内に返信が来ました!
タイカ
「けん!心配したのよ!今どこにいるの?」
僕(けん)
「遅刻しちゃってごめんよ~。今バス停の近くにあるショッピングモールにいるんだ。」
タイカ
「ショッピングモールね、分かったわ。今から私の友達をそこに向かわせるから一歩も動かないでね!」
流石タイカ、きっと本当に優秀なのでしょう。僕は迎えが来るまでとりあえずその15歳の女の子と適当におしゃべり、ついでにfacebookを交換したりしていました。(JKの連絡先ゲットだぜ!笑)
10分後
「け~ん!どこにいるの~?」
僕はショッピングモールの二階にいたのですが、吹き抜けになっている一階から女性の叫び声が聞こえます。(英語でした)
下を見ると真っ赤なドレスの女性と、真っ青なドレスの女性が吹き抜けのど真ん中で大声で叫んでいます。
僕
「ハ~イ!けんは僕だよ!お迎えに来てくれたの?」
赤い女性、青い女性
「けん!あなたがけんね!そこを一歩も動かないでね!」
そう言って階段をヒールで駆け上がってきてくれました。
赤い女性、青い女性
「けん、始めまして!私たちはタイカの大学の友人の○○と△△よ!あなたの自己紹介は走りながら聞くわ!」
そういって僕の手を掴んで車まで走っていきます。(凄くたくましい2人でした!)
車の中で簡単に自己紹介と何故僕は今こうなったのかを知ると二人の女性は大爆笑していました。笑
青い女性の運転する車は近くの山に向かって行き、山道を凄い速さで走ります。ド派手なドレスの女性二人が前に座っているドライブは不思議な気持ちでした・・・
走ること10分、ついにそれっぽいところに到着しました。時刻は15:30で結婚式開始から結局30分経ってしまいました・・・
車から降りて走りました。そこには小さなお城(古城)があります。どうやら二人は森の中の古城で挙式を挙げているようです。なんてユーロピアンでロマンチックなんでしょう!
僕は二人に再会する前から興奮してきました。
「ギギギ~~~」
お城の門を両手で開けます。
その先には人だかりが見えました。人数はざっと40人程度でしょうか、決して大規模ではありませんが、赤ちゃんから老人までドレスコーデした白人が古城の橋の上に勢ぞろいだったので、そこには不思議な空気が漂っていました。
僕が門を開けたその時、その40人は奥の一点を静かに見つめていました。
その視線の先にはドイツで会って以来3年ぶりのまーてぃん君と、ニュージーランドで別れて以来6年ぶりのタイカが、牧師の前で誓いのキスをしていました。
【古城での結婚式】
実はこの結婚式が、日本を含めて僕が人生で初めて参列する結婚式でした。
この結婚式が海外のスタンダードなのかは分かりませんが、日本ほどかっちりしたやり取りやご馳走も無く、裸踊りや新郎のバカ飲みもありませんでした。
ですが挙式→二次会の様な流れはありました。
まず挙式では誓いのキスや記念撮影、ケーキ入刀や食事会をします。ですが全体的に日本のそれよりもだいぶカジュアルでした。
※左からタイカ、僕、まーてぃん君
古城だからか分からないですが、式は基本全部屋外でした。食事もテラスの様な場所でフィンランドの伝統料理を食べました。
僕は白人のペースに合わせて楽しくお酒を飲んでいたのですが、元々お酒に弱い、かつ富士登山からここまでの道のりで満身創痍だったので一瞬でベロベロになっちゃいました。笑
この結婚式の特徴で言うと、式の参列者はざっくり新郎側のドイツ人と新婦側のフィンランド人、あと新郎新婦の大学時代の友人のイギリス人がいました。
つまりスピーチやら何やら全て別の語学に二回訳されるのです。笑
ですのでスピーチは普通の三倍も時間がかかっていました。笑
あと個人的にはハートマークが手書きされた白い布を、ハートマークに沿って挟みで新郎新婦が切り抜き、その空いた穴を二人で通る遊び?が面白かったです。
【お城作ったわ!笑】
個人的にこの結婚式で最も驚いた出来事を紹介します。
挙式が終わった後、離れ小屋に皆が移動しました。付いていくと行くと何やらこの古城の歴史を説明する動画が流れ始めました。
「誰がそんなのに興味があるんだ??」
と思いながら一応見ていると、新婦タイカのお父さんが前に出て熱弁し始めました。そしてこの内容こそが僕がこの結婚式で最も驚いたことでした。
要約するとタイカのお父さんは下記のように言っていました。
「24年前、私はタイカという最愛の娘を授かりました。天から授かりし愛娘を始めてみた時、私は『いつかこの子が結婚式を挙げる場所を、私の手で作りたい!』と思ったのです。
その後、私は使われていない広大で見晴らしの良い土地を見つけました。そう、今皆さんにお集まり頂いているこの場所です!
私はこの土地を買い取り、私の手でお城を作ることにしました。約20年間、私は頻繁にこの場所に通い、誰の手も借りずこつこつと城を作ることに没頭しました。
すると今から半年前、タイカに『まーてぃん君と半年後に結婚式を挙げる!』と報告されました。もちろん嬉しかったのですが、想定よりも早かったのでお城の完成が間に合いそうもありませんでした!
そこで私はすぐに会社を辞めてお城作りに専念しました。
そこから半年間、私は毎日この場所に通い急ピッチでお城作りを進めました!
そしてつい先日、無事にお城が完成し、今日私は最愛の娘が自分で作ったお城で結婚式を挙げている姿を見ることが出来たのです!
私は今日ほど嬉しかった日はありません!」
※中央右が熱弁しているタイカのお父さん。
要は彼は自分の娘の結婚式場の古城を自分の手で作ったのです。笑 しかも誰の手も借りずに一人で・・・感動的ですが、正直スケールがデカすぎて訳が分かりませんでした。
砂場で砂場のお城を作るんじゃあるまいし・・・笑
その後テラスでDJを招いたダンスパーティーが始まりました。
僕はダンスなんてやってこと無かったので困りました。
しかし白人の女性は優しい・・・明らかに困っている僕を見て「一緒に踊らない?私がダンスを教えてあげるわ!」と手を差し伸べてくれました!
(本当に"Shall we dance ?" と言われました。笑)
僕も詳しくないのですが、社交ダンス?とかタンゴ的なダンスだったのですが全く踊れません。
基本的に男性がリードするものらしいのですが、結局その白人の女性たちにリードしてもらっちゃいました。笑
何よりダンス中はHカップくらいありそうな胸が当たり前の様に密着してくるので、健全な23歳の男子としてはダンスどころでは無かったです・・・笑
さてダンスも終わり、そろそろ日が暮れ・・・ないんです。笑
7月フィンランドはほとんど白夜だったので、23時ごろまで普通に外は明るいんです。
富士登山でボロボロになった身体に時差ボケと白夜のトリプルパンチ、おまけにお酒でベロベロな僕は今にも倒れそうでした・・・
ようやく23:30ごろに日も暮れてきて、飲み会のノリでお開きになりました。僕は事前にまーてぃん君に「泊まるところは俺が用意するから心配するな!」と言われていたので、とりあえずまーてぃん君や皆について行きました。
するとタイカのお兄さんに「けん!お前はこっちだ!」と呼ばれたのでお兄さんの車に乗車。乗った瞬間爆睡し、起きたら巨大な山小屋に到着していました。
結論、僕は今晩その山小屋に他の若者たちと一緒に泊まることになっていたそうです。
ちなみにこの山小屋はタイカのお父さんが使われなくなった小学校を土地ごと買い取り、中をリフォームしてベッドを詰め込んで人が泊れる施設に改造したとか。こういうのが好きなお父さんなんですね、いちいち度が過ぎてるけど。笑
山小屋では三次会が始まります。日本みたいにカクテルを飲む人はおらず、ビールかワインかウォッカしかありません。
タイカとまーてぃん君も加わり、いわゆる宅飲みが開始。僕も一応付き合いましたがそろそろ死にそうでした・・・
※三次会の様子、中央右がタイカ。
明け方3時、既に外は明るかったのですが皆が順々に適当なベッドに入って寝始めたので僕も適当なベッドにダイブ!
秒で寝ました・・・・
僕の人生で一番ハードだった一日が終わりました。
最後に結局のところのスケジュールを残しておきます。
【川辺のサウナ】
まーてぃん君
「ヘイけん!起きろ!いつまで寝てるんだ!」
朝9時ごろでしょうか、まーてぃん君が僕の身体を叩いてきました。
あと20時間くらい寝たかったですが、折角フィンランドまで来たので、疲労困憊でしたが頑張って起きました。
元々結婚式の翌日はまーてぃん君が僕にフィンランドを案内してくれるという話だったので今日のプランを訪ねると「全て俺に任せろ!」と言っているので全部を委ねました。
軽い朝食を終えるとまーてぃん君は「今からとっておきの場所に行くから準備しろ!」と言ってきたのでとりあえず外出の準備をしました。
家・・・?の前にはタイカのお兄さんが車で待っていてくれました。どうやら僕とまーてぃん君をどこかへ送ってくれるそうです。
何も聞かされないまま30分ほどドライブ、すると川沿いに着きました。
まーてぃん君
「けん!目的地に着いたぞ!」
僕(けん)
「・・・ここはどこだ?」
まーてぃん君
「ふふふ、けん!フィンランドはサウナが有名って知っているか?」
僕
「ああ、聞いたことはあるな!」
まーてぃん君
「ここがそのサウナさ!フィンランドのサウナは川沿いにあって、川で遊んで身体が冷えたらサウナで温まる。これを繰り返すのさ!さあ行こう!」
僕は感動しました!まさかまーてぃん君がここまで考えてくれているとは・・・
早速車を降りてサウナに向かいます。水着なんて持ってなかったので下着で入ることにしました。
サウナの受付に着いた時、まーてぃん君は「あ、財布忘れた!けん、お金貸してくれない?」と言ってきました。
やっぱりまーてぃん君はまーてぃん君です・・・
25万円自腹切ってここまで来た僕がさらに出費する羽目に・・・笑
まぁまーてぃん君は相変わらずでしたが、サウナは楽しかったです。
人が全然いなかったので川でもサウナでも堂々とはしゃぎました!
サウナを出るとまーてぃん君はサウナの目の前のカフェに行こうと提案してきます。聞くところによるとそのカフェはタイカが昔バイトをしていたカフェだそうです。
僕
「まーてぃん君・・・お前こんなにプランを立てられるようになったのか!」
留学期間中、さんざんまーてぃん君のポンコツっぷりに振り回されたのを思い出して思わず感動してしまいました。
まーてぃん君
「でも俺財布無いからランチ代は頼むな!」
僕
「・・・OK」
カフェでは山盛りポテトの上にハンバーガーが乗っているジャンクフードを食べました。
味はなんとも言えない感じでしたが昔タイカがバイトをしていたという事実に少しほっこりしました。
まーてぃん君
「けん!大変だ!」
僕
「・・・どうした?」
まーてぃん君
「携帯電話をタイカの家に忘れてきちゃった!」
僕
「そうか、それのどこが大変なんだい?」
まーてぃん君
「大変さ!だってタイカのお兄さんに電話をして迎えに来てもらう手筈だったんだ。これじゃあ迎えが来ないよ!」
僕
「・・・ってか君は手ぶらでここに来たのか?」
まーてぃん君のポンコツっぷりは大人になっても治ってませんでした。
結局カフェの店員さんが携帯電話を貸してくれて無事タイカのお兄さんに電話が出来、昨夜泊った元小学校の宿に戻ることが出来ました。
ちなみに僕がショッピングセンターからまーてぃん君にfacebookメッセンジャーで連絡しても返事が無かったのは、携帯電話の電源が切れていたからだそうです。携帯電話の意味・・・笑
【マッシュルーム狩り】
時刻は昼の13時を過ぎたころです。今日は19時にこの場所を出てヘルシンキ中心部に向かい、タイカのもう一人のお兄さんの家に泊めてもらうことになっています。
まーてぃん君
「さぁけん!午後は何しようか?」
まーてぃん君の用意してくれたプランは既に終わっていたようです。
何をしようと言われても異国の森の中です。そんなことこっちが聞きたいくらいです。
するとタイミング良くニュージーランド時代のホストマザーとホストファザーが僕を訪ねて来てくれました!
もちろん結婚式場で再会は果たしていましたが、その際はゆっくりと話をする時間も無かったので、しばらくまーてぃん君を交えて四人で団らんをしていました。
遅れてタイカも登場、改めて結婚を祝福しました。渡すのを忘れていた引き出物をこのタイミングで渡すとヨーロッパには無い文化だった様で驚かれました。(湯呑をあげました。笑)
タイカ
「そうだ!今から皆で森を散策しない?フィンランドの森は綺麗よ!」
タイカの提案で皆で森を散策することになりました。"ノルウェーの森"は聞いたことがあったので期待できそうです!
にしてもこういう時にポンッと提案が出来るタイカ、やはり優秀です・・・
森は確かに広大で緑豊かで綺麗でした。なんとなく日本の緑よりも青々しかったです。
ホストマザーとホストファザーも年齢は65歳あたりですが、まだまだ元気で結局18時くらいまで散策を楽しみました。
その間タイカの提案で森にあるマッシュルームを採ることに。
思った以上にマッシュルームがあったので結局下の写真にある量採れちゃいました。笑
皆は夜にマッシュルームご飯を楽しむそうですが僕はここでお別れ。
今からヘルシンキ中心部にバスで戻ってタイカのもう一人のお兄さんの家に泊まらせてもらい、翌日市内観光をして夕方帰国というプランです。
3年ぶりのポンコツまーてぃん君と6年ぶりのタイカとホストマザーとホストファザーに別れを告げて僕はフィンランドの森を後にしました。
【その後】
タイカのもう一人のお兄さんは聡明で優しく、市内をとても効率的に案内してくれました。家も綺麗で広く、ディナーも美味しいところに連れて行ってくれてご馳走してくれました。
※ヘルシンキの観光名所(名前は忘れた)
日本からテレビやネットごしに見た外国人なんて、正直国籍と人種くらいの違いしか分からないと思います。しかし実際に触れ合うと性格も価値観も十人十色で本当に面白いです。
ヘルシンキ市内の観光では、間違えて国内線の空港に行ってしまうなど、あるあるハプニングを経験しながらも何とか帰りの便に乗ることが出来ました。
結局日本には予定通り火曜日の22時に成田空港に到着。翌日は朝6時に会社に行って急ピッチで仕事をこなしました。
しかし当時はブラック企業全盛期、復帰初日からいきなり終電まで仕事をさせられ本当に辛かったです・・・
まーてぃん君とタイカは一緒にイギリスの大学を卒業して、卒業したタイミングで結婚式を挙げました。その時の理由は大学を卒業して就職したら忙しくなって式を挙げられないだろうからというものでした。
しかしタイカは大学を卒業出来たのですが、まーてぃん君は単位を落として結局大学を卒業が出来なかったそうです。
当然タイカは就職出来るのですが、まーてぃん君は内定取り消し状態になったそうです・・・笑
するとタイカは内定を蹴って、まーてぃん君と二人で別の大学にもう一回一緒に入学することにしたそうです。そこでまた二人で大学一年生からやり直しているそうです(意味不明)。
2019年の今、そろそろ二人が今度こそ揃って大学を卒業する頃です。まーてぃん君は以前、「僕は将来、貿易関係の仕事に就きたい!」と言っていました。果たして夢は叶ったのでしょうか?
久しぶりにfacebookメッセンジャーで連絡してみようかな?僕のたった一人のお兄ちゃんだしね。
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