「パンガシウス」という謎の魚の正体
この数年スーパーで見かける謎の白身魚が話題になっているのをご存じでしょうか?「パンガシウス」や「バサ」という名前で売られているこの白身魚の正体、実は食用ナマズなのです。
いろんなアレンジのレシピもネットには上がっており、なかなか美味しいと評判です。
以前から食用ナマズはお弁当の白身魚のフライやフィッシュバーガーなどの形で、日本人の私たちがそれとは知らず口にしている食材でしたが、新たなイメージの食材としてぐっと一般家庭に広がりを見せています。
その先駆けとなったのは、流通大手企業の戦略です。
持続可能なプライベートブランドの販売に取り組んでいるイオングループは、2012年にベトナムから食用ナマズ「パンガシウス」の試験的輸入を始め、2014年からは本格的に輸入を開始し、ASC認証付きで大規模な販売を始めました(ASC認証とは責任ある養殖により成育された水産物を示す認証)。
2012年当時670トンほどだった日本の年間輸入量はそれ以降増え続け、2018年には7,200トン近くが輸入されるまでになったのです。
食用ナマズの可能性
日本の輸入ナマズの9割以上はベトナムからの輸入で、そのほとんどはパンガシウス科のナマズの冷凍フィレです。
ベトナムでは1990年代から「パンガシウス」養殖が拡大し、今ではエビに次ぐ第2位の水産輸出品へと成長しました。
出荷先は米国、欧州、東南アジアなど世界中へ広がり、近年は特に中国をはじめとするアジア向けが増加しています。
世界的需要が高まるにつれ、タイやインドネシア、インド、バングラデシュなどでも養殖が大規模化してきており、今後ベトナムに匹敵する規模に成長していくかもしれません。
SDGsがナマズ養殖を後押し
イオングループがASC認証を取得したように、SDGsの流れも「パンガシウス」の養殖産業が拡大する後押しとなっています。
「パンガシウス」は1匹で800万個ほど産卵し、成育期間3ヶ月程度で約8%(約64万匹)もの水揚げが可能です。
また味も淡泊な白身魚なので、枯渇が危ぶまれるウナギや、スケトウダラなどの代替品となる可能性を十分秘めています。
世界で魚の需要が大きくなり水産資源が枯渇する懸念が強まる中、今後貴重な食資源を未来に残す可能性の一つとして「パンガシウス」は注目の食材なのです。