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「いどばたカフェ」インタビュー企画!陸上競技を通じて、人と繋がる。居場所を創る。「チャレンジドRUNいわくに」

 岩国市で、陸上競技を通じ、身体障がい者の仲間づくりや生きがいづくり、社会進出の機会づくりを目的に活動されている「チャレンジドRUNランいわくに」の代表・市岡智浩さん、古川正人さんにお話を伺いました。
 白杖のスプリンターこと市岡さんと伴走者の古川さんは、「2022ジャパンパラ陸上競技大会」視覚障がい100mの部にて見事銀メダルを獲得。わずか30cmのガイドロープ(テザー)でつながれたお二人が、ぴったり息を合わせ、全速力で100mを走り抜く姿は圧巻です。
 パラ陸上競技への思いや今後の活動の展望など、幅広く声を聞かせてくださいました。

いつも練習で使われている陸上競技場にて

– 普段の活動や、団体を立ち上げた経緯について教えてください。

市岡さん)「チャレンジド」とは「神様から挑戦すべき課題や才能を与えられた人たち」という意味で、「障がい者」を表す新しい言葉です。私と同じように障がいを持ってる人で、人と関わりたい・体を動かしたいという人と一緒に活動したいと思い、この団体を立ち上げました。普段は、私と古川さんで短距離走の練習をしているほか、陸上の試合に出たり、パラスポーツのイベントに参加したり、他のメンバーと一緒に伴走の体験会を実施したりしています。団体メンバーは5人。これからどんどん仲間を増やしていきたいと思っています。
 目が見えなくなってくると行動範囲がだんだん狭くなり、自分で好きなときに好きな場所へ移動することが難しくなります。私は中学の時に陸上競技に取り組んでいたこともあり、走ることはもともと好きでしたが、3年ほど前、ふと「競技としてもう一度走りたい」と思い立ちました。競技場を思い切り走って「自由に」なりたかったんです。

代表の市岡智浩さん

– 古川さんはどのような経緯で伴走者になったのですか?

古川さん)陸上を始めたのは高校の時です。社会人になってからも1人で練習していましたが、昔のように走れるわけではないし、頑張る意味を見出せずにいました。ちょうど陸上を辞めようと思っていた時に、知人から「伴走者にならないか」と声をかけられました。伴走の経験はまったくありませんでしたが、このタイミングだったからこそ、やってみようと思えたのだと思います。これまで「1人の速さ」を求めてきたのですが、今は「2人での速さ」にこだわって走っています。自分自身の走り方のクセをゼロにしてから、感覚で市岡さんと走り方を合わせるんです。伴走をはじめてしばらくは普段と逆の足からスタートすることに体の違和感があったので、隣に市岡さんがいると想定しながら個人練習をして感覚を掴んでいきました。

市岡さん)「伴走者」って特殊な立場なんですよね。一緒に試合に出てメダルをもらうけれど、選手ではない。それに、私にとって古川さんは伴走者でもあり、介助者でもあるんですよ。「2022ジャパンパラ陸上競技大会」のために京都まで行った際も、私はずっと古川さんの肩をもって、新幹線、電車、ホテル、競技場を歩きました。もちろん移動の介助だけでなく競技にも出たので、大変だっただろうなと思います。

伴走者の古川正人さん

– 活動している中での、印象に残っているエピソードを教えてください。
市岡さん)「2022ジャパンパラ陸上競技大会」は初めての全国規模の大会でとても刺激になりました。雰囲気や音で明らかにいつもと違う熱気が伝わってきましたし、たくさんの方に応援していただきました。本番も本当に楽しくて、これまで以上の力が出ましたね。

古川さん)普段健常者と同じ場所で走るときに「この人はなぜ2人分の準備をしているんだろう?」という視線や、「どうして並走して声をかけているんだろう?」という視線を感じることがあります。大会では、私が市岡さんの分のスタートブロックをセットするときの「間」の雰囲気で、観客の皆さんがパラスポーツを理解して観てくれているのだと感じました。障がいに関するさまざまなことに理解がある環境で走れたことも、今回の結果に影響したのだと思います。

市岡さん)私は東京パラリンピックを見て「人間の底力」や「挑戦」を感じ、とても感動しました。今は自分もパラ競技をするようになり、困難は工夫や発想次第で乗り越えられるのだということも実感しました。走りたい思いを諦めず「どうしたら走れるだろう」と考え続けて、勇気を出して人に尋ねたからこそ、競技場で古川さんと走ることができています。先日はイベントで他のパラ競技団体の方と初めて知り合うことができました。これから一緒に山口県のパラスポーツを盛り上げていきたいと思っています。

スタートの準備をするお二人。古川さんは市岡さんの分も手足の位置を調整します。

– 今後の活動の展望を教えてください!

市岡さん)細く長く活動を続けていきながら、会として少しずつ大きくなればいいなと思っています。そのために、まずは仲間が欲しいですね。それから、イベントや体験会も続けていきたいです。「誰かと一緒なら安心して走れる」という体験で人と人との繋がりを感じてもらえるのではないかと思います。

古川さん)市岡さんがどのような感覚で練習しているのかもっと理解して、目が見えることを『普通』としない練習を意識していきたいです。また、これまでの陸上の経験から、より速く走るための練習方法や大きな大会での走り方を伝えていくことで、より私らしさを発揮していきたいと思っています。伴走者になりたいと思う人は結構いるのではと思っていますし、ちょっと走ってみたい人も、競技として極めたい人も活動できるような懐の深い団体になればと思っています。

市岡さん)この活動を通してコミュニティができたら、みんなで生活の悩みや気持ちを話せる場を創りたいとも思っています。今きっとどこかにいる私と同じような境遇にある人に、私たちの団体を見つけてもらえたら嬉しいです。

息ぴったりの走りは、迫力満点でした!

■編集者コメント
市岡さんの「走りたい」という熱い思いから視覚障がいやパラスポーツの啓発へと輪が広がっているというストーリーを伺って、小さな活動が大きな社会の「普通」や「常識」について考えるきっかけとなることに気付かされました。伴走者は競技以外の場面でも走者に寄り添う大切な存在なのだと知り、地域づくりや教育など、さまざまなテーマでの「伴走」や「支援」にも通ずるお話だと感じました。お話を聞かせていただきありがとうございました!

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