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絵の具は修正が利かないものですよ

??:あの~すいません

公園で絵を描いていたある日、後ろから誰かに話しかけられた

〇〇:なんですか?

??:あの…紫色の絵の具…貸してくれませんか?

〇〇:(絵の具を切らしたパターンか)

〇〇:いいですよ、どうぞ

??:ありがとうございます!

帽子を深く被っているので顔は分からなかったが、女性だったのは確かだ

その女性はパパッと走って行ってしまった

〇〇:なんだったんだ?…あ! どこでやってるか聞くの忘れた

どこを見渡してもその女性の姿はない

〇〇:もぉ~!探すのだり~!

俺は描いている途中の絵をやめて、その女性を探すことに


〇〇:よりによってこの広い公園で探すことになるとは…


俺は今、絵画のコンクールに出すための絵を描いている。
そのコンクールの参加する人なのかはわからないが、ロケーション的にいいのか、この公園には今日も絵を描いている人がまばらにいた

〇〇:あ!いた!

紫色の絵の具を持って行った女性は意外と近くにいた

〇〇:近くで助かったわ…

女性は絵を集中して描いている

〇〇:(邪魔…するわけいかないよな…)

丁度筆をパレットに置いた時

〇〇:あの~

??:ビクッ!

〇〇:絵を描いてる途中にすいません

??:はい


その女性が振り向いた瞬間、俺に衝撃が走った

これが恋ってやつなのか?一目惚れってやつなのか?


俺はしばらく固まってしまった

??:あの…どうされました?

〇〇:あ、あああ、あの、さっき貸した絵の具、どのくらい使いますか?

??:えっと…もう少し使わせてほしいです

〇〇:わ、わかりました。

??:大学生…ですか?

〇〇:はい、大学2年生です

??:ホントですか! 私も大学2年生です!

〇〇:じゃあ…同い年?ですか?

??:留年とか浪人…してなければ

〇〇:してませんよ

??:じゃあ同い年ですね!

〇〇:(なんか、これを逃しちゃいけない気がする)

〇〇:あの…

??:はい

〇〇:もしよかったらなんですけど…友達に…なりませんか?

??:友達…

〇〇:あぁ!いいんです!急に言われても嫌ですよね、失礼しました、絵具、あげるのでどうぞ!じゃあ!

俺は恥ずかしくなってその場を立ち去ろうとした

その時…

??:いいですよ…その…友達…

〇〇:!?

??:私も…何かの縁かなって…思ってたので…

〇〇:(やったぁ!)

??:私…池田瑛紗って言います

〇〇:池田さんですね。僕は…遠藤〇〇って言います

池田:じゃあ…〇〇君って呼びますね!

〇〇:はい!


これがきっかけで毎日公園で絵を描き進める時に会うようになった

お互いの絵のことを話したり、大学のことを話したりした



初めて会った時から2週間が経ったある日…

〇〇:あれ…?

いつも池田さんが絵を描いていた場所に池田さんはいなかった

〇〇:ま、いずれはやってくるか


そんなことを思っていながらも自分の絵を描き進め

あっという間に日が経ち、絵が完成し、気付けば池田さんのことを忘れていた



あれから半年が経った


俺が参加しているコンクールの受賞作品の展示が美術館で行われる日だ

〇〇:緊張するな…

俺の描いた絵は銀賞を取ってので他の作品とは違って金賞、銀賞、銅賞は堂々と飾られているらしい


美術館に行ってみると…

〇〇:(うわっ!俺の絵だ!)

俺の絵の前に何人かがじっくり絵を見ている

〇〇:(めっちゃ恥ずかしい/////)

受賞した嬉しさと恥ずかしさが同時に込み上げてきた

〇〇:(金賞の絵を見れば落ち着くさ)

そう思って俺の絵の隣にある金賞の絵を見る

〇〇:(あっ!)

金賞の絵を見てすぐわかったことがある


〇〇:(池田さんの絵だ)

作者のところを見るとやはり、「池田瑛紗」と書かれていた

〇〇:(池田さんかぁ…半年前だけど懐かしいな…)

池田さんが描いた公園の絵を見ながら2人で話した事を思い出した

絵の下には寸評が書かれている

そこには…


「大切な人との思い出を絵に表現しました。大切な人から借りた紫色の絵の具を使った表現に注目してほしいという思いを込めて描きました」

という文章が真っ先に入って来た

〇〇:(大切な人って…)

??:君のことだよ、〇〇君

〇〇:えっ!

振り返ると池田さんがいた

〇〇:池田さん!

池田:ちょっと…話さない?


池田さんに誘われて美術館の椅子に腰掛けた


久しぶりに会ったからお互い言葉を発さない

池田:久しぶり…だね

〇〇:はい…そうですね…

池田:私の絵、どうだった?

〇〇:もう…すごいの一言です…

池田:まぁ~〇〇君が銀賞とはね~

〇〇:あの…

池田:どうしたの?

〇〇:どうして急に公園に来なくなったんですか?絵はまだ途中だったはずですけど…

池田:それは…最後の仕上げをしたかったから…

〇〇:最後の仕上げ?

池田:うん…大切な人を思い浮かべながら描きたくて…

〇〇://///

池田:2人で話したこととかを絵に込めたくて…だからあえて会わないようにしながら絵を描いてたの


〇〇:そういう理由があったんですね…

池田:私の伝えたかった事、絵から伝わった?

〇〇:何となく分かったよ、

池田:よかった/////

〇〇:俺だって絵を描いてるんだぜ?伝わるさ

池田:(ドキドキ…)

〇〇:紫色は「不安」を意味している色で、何かが伝わるか不安だって意味じゃないかな?

池田:///// 正解////

〇〇:へへっ、やったぜ。ちなみにどんな不安なんだ?



池田:…〇〇君のことが好きって事//////

〇〇:えっ!

池田:〇〇君の後ろを通った時に〇〇君の描いていた絵を見た時に思ったの。この人は絵に思いを込めて描く絶対優しい人だって

池田:だから話しかけるきっかけが欲しくて…絵の具を借りに行ったの

〇〇:でも…空を紫色にする必要があったの?

池田:賭けだよね、〇〇君に伝わるかなって思って

〇〇:そういうことだったんだね…

池田:返事は…?



〇〇:断る理由なんてないですよ!僕だって好きな気持ちを絵に込めたんですから

池田:えっ!

俺も同じことを考えて絵を描いていた。池田さんに会ったあの日から色の配色を変えたりしながら…

〇〇:もう会えないと思ったけど、もし美術館に池田さんが来てこの絵を見た時に僕のことを思い出すんじゃないかって

池田:!?

〇〇:僕も池田さんのことが好きです!付き合ってください!

池田:はい!もちろん!



この後俺たちは付き合うことになった。

それに俺たちの絵は「配色違い」という意味で話題になった

色んな所から取材が来たけど、俺たちは口をそろえてこう言った



「絵の具は修正が利かないものですよ」と…





あとがき

初めて企画作品、中編の作品を書いてみました。駄作だと思いますが最後まで読んでくださり本当にありがとうございます。

初めての中編作品ですので今後のためにぜひ感想を書いていただけると嬉しいです!➡質問箱へ!




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