国が指定する研究大学は出来レース

俗に「旧帝国大学」という大学群があります。なぜ俗に、というかというと、確かに帝国大学だったものは存在しますが、「旧帝国大学」という名称や「大学群」というものは受験業界のワードだからです。
国が定めているわけではないです。

国が定めているとすれば、「指定国立大学」という10大学についてになります。いわゆる旧7帝大から北大を除いたものと、一橋、東工大、医科歯科、筑波大の10大学です。

今、国がさらに、「国際卓越研究大学」というものと「地域中核・特色ある研究大学」というものを定めようとしています。
いわゆる「研究大学」を国が定めようとしています。前者に当たる国際卓越研究大学については、1回目の募集が終わり、東北大のみが指定されました。現在、2回目の公募が始まっています。

後者に当たる地域中核・特色ある研究大学について、先日募集予定だった25件(大学)を指定し、2回目の募集で予定件数を満たしました。これにて、国際卓越研究大学という大学群と両輪をなす地域中核・特色ある研究大学については、埋まった形です。

この2回目(令和6年度)の採択の結果で、驚いたことがあります。
1回目の国際卓越研究大学に応募していた東京理科大が、今回2回目の地域中核・特色ある研究大学に応募しました。
おそらく確実に研究大学群に入ろうとした作戦だったと思うのですが、この東京理科大学は、地域中核・特色ある研究大学でも、落選しました。

では、どんな大学が指定されたか。
1回目の採択大学は、
北大、千葉大、東京農工大、東京芸大、慶應、金沢大、信州大、大阪公立大、神戸大、岡山大、広島大、沖縄科学技術大学院大学(OIST)です。
2回目の採択大学は、
弘前大、山形大、新潟大、長岡技術科学大学、山梨大、奈良先端科学技術大学院大学、徳島大、九州工業大、長崎大、熊本大、横浜市立大、藤田医科大学、立命館です。
これで以上です。

一般的には、理科大が落選したことが1番大きな驚きでしょうが、より驚いたのは、順天堂が落選したことです。
順天堂の研究力は、世界大学ランキングでの指標から考えれば、慶應(私立2位)、東京医科大学(私立3位)、早稲田(私立4位)よりも上の、私立1位です。
さらに、この地域中核・特色ある研究大学において選出される大学の採択は、出来レース(悪い意味で考えていません。あとで説明します)だと感じるからです。

この地域中核・特色ある研究大学は、まず1回目の採択よりも前に、令和5年の2月に「地域中核・特色ある研究大学の連携による産学官連携・共同研究の施設整備事業」という名前の似た事業が採択されました。これは施設に対して国がお金を出すというもので、これに採択された大学は、簡単に言えば、ハードを手に入れるわけです。研究するための箱ですね。つまりソフト面は支援されません。
採択大学は、
弘前大、山形大、千葉大、東京農工大、東京芸大、新潟大、長岡技術科学大、金沢大、山梨大、信州大、浜松医大、豊橋科学技術大、滋賀大、神戸大、島根大、岡山大、広島大、愛媛大、九州工業大、長崎大、熊本大、総合研究大学院大学、横浜市立大、大阪公立大、自治医大、慶應、順天堂、藤田医科大学、立命館、沖縄科学技術大学院大学です。

施設の事業でも、研究大学そのものの指定でも、いずれも選ばれた大学が、太字になっています。ほぼ、かぶっており、最初からこの地域中核・特色ある研究大学に応募していなかった東京理科大が選ばれないのは、理解できる範疇です。

そういう意味で、出来レースだと思います。つまり、施設の事業で採択されることが、この地域中核・特色ある研究大学という大学群に選ばれることの、ざっくりほぼ必要条件だったとは言えるでしょう。

施設と研究そのものへの支援、その両輪をなす必要があるので、疑問視していません。しかし、世界大学ランキングを重視しがちな国の政策面を考えれば、順天堂は入りそうだと思っていたのですが、今回外れました。
これが驚きだったと言えます。

結果的に見れば、日本全国、各都市に満遍なくこの研究大学群を配置したい国の意図も読み取れます。

国際卓越研究大学も、やはり、地理的な面で、全国満遍なく配置していくでしょう。


いいなと思ったら応援しよう!