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卒業研究「エビ中とは?」①






1996年12月16日。



この世に生を受けた女児は当然出席番号も持たなければ、紫を纏ってもいなかった。




それから約13年後


目的をレッスンとしたグループが誕生した。

集められたのは5人の少女。






この世にはありとあらゆる生命が生まれては消えていく。個体だけでなく集団もまたそうだ。


時代の流れとともに淘汰され朽ちていくものもあれば、形を変えて生き続けるものもある。


しかし後者には『テセウスの船』に例えられるように、部品が全て変わっても果たしてそれをそれと呼べるのかという問題が出てくる。




2009年の真夏に集められた5人の少女は5年もすればたった1人になった。
















リーダーのいないこのグループで、グループ創生期からの唯一のメンバーは


「そんなの進んで答えにすりゃいいじゃん!」


と出会いと別れを繰り返しながらも答えのない何かに自信だけを持って突き進んでいる。


















ココユノノカエマユナ










2021年に桜木心菜、小久保柚乃、風見和香が加入した私立恵比寿中学。


この新メンバーの加入は元を辿れば2018年の廣田あいかの転校から始まった。

「エビ中の入口」と言われキャラの立ったこの元メンバーのグループ卒業はいわばグループのターニングポイントだった。人気・知名度ともに高い廣田がグループを抜けるということは少なからずパワーダウンが見込まれ、場合によってはグループとしての方針転換を迫られる事態だった。

チーフマネージャーの藤井ユーイチはこの時点で新メンバー加入を検討していた。

言ってしまえば廣田の抜けた穴を新メンバーで補うつもりだった。ただこれは今に始まったことではなくこの繰り返しこそがエビ中を形づくってきた歴史でもある。


結局当時は強く反対した柏木ひなたの意向もあり、新メンバー加入は見送られエビ中は“6人”で活動を続けることとなった。

これは廣田あいかの卒業公演翌日の『ebichu pride』のパフォーマンスが凄まじかったことから藤井が新メンバーオーディション開催のサプライズ発表を急遽見送ったことから繋がった6人のエビ中の物語の始まりでもあった。


そして3年の月日が流れた2021年、今度は柏木も納得するかたちで新メンバーオーディションが開催され桜木、小久保、風見の3人が加入したのである。


エビ中としての新メンバーは小林歌穂、中山莉子の「かほりこ」加入以来7年ぶり。

既存メンバーとのキャリアや年齢差がクローズアップされる中、「ココユノノカ」の3人は私立恵比寿中学のメンバーとなった。







出席番号13番桜木心菜。

2014年のかほりこ以来の新メンバーであり、元DAN⇄JYOのメンバー。

ジャズダンスをバックボーンとする卓越したダンススキルを誇る「ヘソ出しマーメイド」。

これまでのエビ中にはいないキャラクターで低学年メンバーだけでなくグループ全体をも引っ張る存在。メンバーカラーは赤。





出席番号14番小久保柚乃。

愛知県出身の元N-Twinkle TRIBEメンバー。

特技の竹馬と長距離走はいまや得意どころか苦手ですらあり、つまり嘘。

メンバーカラーはライトグリーン。

マイペースな不思議キャラであり、ダンスや歌が得意なわけではない。が、なぜか人を惹きつける存在で真山りかをして「ほっとけない」「育てたい」と言わしめた逸材。





出席番号15番風見和香。

特技のバースデーカード作りに表れるように丁寧に突き詰めるタイプで、新体操経験者でもある。

真面目を具現化したような努力家だが、たまに突拍子もないことをするエビ中らしさも持ち合わせている。メンバーカラーは本人をそのまま表したような白。

“ココユノノカ”だけでなくエビ中全体でも最年少の部類だが、持ち前の正確さはグループの拠り所となっている。








これまでのエビ中に全くいないタイプで「マインドヤンキー」を謳う桜木にマイペースで不思議キャラの小久保が良くも悪くも風穴を空け、最年少だが超のつく真面目な風見が学級委員長のように年上2人を正す。そんな不思議ながらパワーバランスのとれた3人は、エビ中というグループの歯車を今までとも違う形で回し始めた。


無論キャリアやスキルの差は場面場面で出てくるし、何よりエビ中としての心構えは最初からは中々難しい。それは周りの大人だけでなく先輩メンバーからも指摘されたことだろう。実際に先輩メンバーが「私達のエビ中を壊さないで」と泣きながら訴えたこともあるという。


新しいものが入ればそこには何かしらの化学反応のようなものは起こる。新人への洗礼みたいなものが世の中に存在するのはある意味で必然なのかもしれない。


その集団がその集団であるというアイデンティティのようなものが長く続くものにはある。

フランス人は海外からの来訪者が英語で話しかけても反応しないかもしくはフランス語で返す。母国語やフランス人であるということに誇りを持っているからだ。


私立恵比寿中学という10年以上に渡り続くグループにもそういった誇りやアイデンティティ、さらにはグループとしての特徴がある。

特に歌唱とダンスといったパフォーマンスはそのひとつであり、先輩メンバーのスキルに追いつくのはひと苦労どころではないしただスキルがあればいいわけではなく、そういったスキルが問われる場面でこそメンタルの奥底が問われるものだ。

日々のひとつひとつの積み重ね、それをどう形づくっていくか。


難しい課題が出されてもこの3人はめげなかった。










そして3人の加入から1年後、再び新メンバーオーディションは行われた。

こちらの引き金となったのは無論、柏木ひなたの卒業である。


2022年3月、柏木は8ヶ月後の12月での卒業を発表。「エビ中の歌姫」卒業により即戦力を補強しようといったところだろう。


新メンバー加入はいつの時代も賛否両論がある。これはエビ中に限らず新しいものを受け入れるというのは簡単なことではないからだ。


選ばれたのは桜井えま、仲村悠菜の2人だった。







出席番号16番桜井えま。

2021年の私立恵比寿中学新メンバーオーディションを受けるも落選。再び挑んだ翌年のオーディションに合格し晴れてメンバーとなった即戦力ルーキー。

小学6年生からレッスンを繰り返してきた歌唱力に定評があり、卒業した柏木ひなたの歌唱パートを多く受け継ぐメンバー。

メンバーカラーはハニーオレンジ。




出席番号17番仲村悠菜。

メンバーカラーはミルクティー。

福岡県出身で同じスターダストプロモーションのばってん少女隊とも縁がある。

おとなしそうな雰囲気のとおり人見知りしがちな性格だがふざける時はスイッチが壊れるタイプで、ある意味エビ中らしいメンバー。





実際に「エマユナ」と呼ばれるこの2人は高いパフォーマンス力を持つ即戦力だったわけだが、前年の「ココユノノカ」加入による耐性もあってか比較的早く受け入れられたような印象だった。


柏木卒業翌日にこの2人のパフォーマンスが披露され、エビ中は10人グループとなった。


エマユナ加入でお姉さんメンバー5人と低学年メンバー5人となり、ある意味でバランスが整ったのかもしれない。

低学年メンバーは2023年に武者修行と題したフリーライブで全国を回った。


低学年メンバーに対しお姉さんメンバーやスタッフからの課題として出されたのは『紅の詩』。卒業した歌姫柏木ひなたのフィーチャー曲であるこの難題は期待の裏返しでもあったのだろう。



見事この武者修行を成功させた5人。



日々アップデートを繰り返す低学年メンバーのパワーはエビ中を加速させ、目標とするさいたまスーパーアリーナへの追い風となるのではないだろうか。




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