nothing much to lose

大学時代の友人と久しぶりに会い映画を観た。
回転寿司で感想を交わす。「にしても、昔みたいに食べられなくなったよな」「わかる。10皿いかずに『もういいや』ってなる」そう答えた私の眼前には最終的に12皿が積み上げられた。

横浜でもう一人の友人と合流するまで1時間強あった。どうしよっか。とりあえず、海、見に行くか。

日はまだ高く、風もそれ程なく、「冬の海も悪くないね」人がまばらな海をほとんど会話もせずにただ見ていた。十代のセンチメントとは明らかに異質な、大切な燃料が漏れ出ているのを成す術なく見ているような感覚。

「☆5つだ」2軒目の安居酒屋でくだをまく。「やっぱどこに行くかじゃなくて、誰と行くかだよな」「じゃあ次安安行こうぜ」「ゴムみたいな肉」「ゆらゆら帝国かよ」暴投続きのキャッチボールのような会話。みな閉塞と諦念に日常を絡み取られながら三十代半ばとなっていた。「知り合って15年てさ、下手した疎遠な親族より長い付き合いだよな」ふと会話が止まった。「でもさ、友情、友情があれば何とかなるでしょ」誰ともなしに歯が浮くようなセリフを言う。その言葉を、自己暗示のようにアルコールと一緒に飲み込む。

「次のライブの予定、決まったら教えてよ」別れの挨拶をしてそれぞれの家路に向かう。これが最後じゃないよな。電車が動き出し、遠ざかる彼の姿を目で追う。

整体で強い電流と共に流れるジャズアレンジのジブリメドレー。「これ、ちゃんと治さないと、癖になりますよ」「あ、が、あっはいぃ」身体は確実に老いている。ソフィスティケートされたもののけ姫のメロディーと一緒に、大切な燃料が漏れ出ている気がした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?