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当事者から見たヒカルVALU事件の真相

こんにちは。

先日、 著名YouTuberのヒカルが「心配すんな。全部上手くいく。」という本を出版しました。

私はこの本を読んでAmazonレビューを書いたのですが、知人数人に「あのレビューが面白かったので、noteとかにも載せたほうがいい」と言われたので、そうすることにします。

以下、私が書いたAmazonレビューからの転載です(元のAmazonレビューはこちら


ときどき著者の動画を見ていることもあって購入。
いわゆる自己啓発書に相当する本だが、内容は結構良いと思う。
特にインフルエンサー事業や動画ビジネスに関心がある人は読むべき。トップYouTuberである著者の考え方は参考になる点が多いはず。
論旨も明快で文章も読みやすい。本書で著者が述べている通り、著者が文章をよく書く人間であることがわかる。

なお、私が最も印象に残り感慨深かったのは、VALU事件のところである。

私は著者がYouTube活動を始めた初期から、著者のチャンネルをよく見ていた。
著者の企画は斬新で面白く、トークも軽妙洒脱で小気味よい。
仕事で疲れた時など、著者の動画はいい気分転換になった。

そんなわけで、5年前に著者がVALUを出した時も即購入した。
もちろん応援の気持ちはあったがそれだけではなく、「著者のような有名YouTuberのVALUには買いが集まり値上がりするはずだ」という投資家としての読みもあった。
案の定、著者のVALUは高騰した。連日ストップ高連荘が続いた。
私は「著者はもっとVALU価格を吊り上げるつもりだろう。このまま何もしなくても著者は大儲けできるし、仮に売るとしても少しずつ段階的に捌いてくるはずだ」と考えていた。

ところが著者はある日突然、手持ちVALUの一気売りをかましてきた。
株式投資で例えるなら、著者がやったのは「株式市場が開いている場中に、何の前触れもなく、筆頭株主がいきなり全持株をマーケットで一気売りする」という行為である。
当然値段は暴落するし、まともに売り捌くこともできない。
仮に売りたいなら分割して少しづつ売れば良いだけの話。手持ちVALUを一気売りするインセンティブは存在しない。合理的に考えたら絶対にやらない。

そのような背景もあり、最初の一報を聞いた時は全く事態を理解できず、「えっ・・・?」というのが正直な反応だった。

ちなみに私はその時点で、個人や機関の時期を合わせて、株式投資の世界に10年近くいた。
株の世界で著者のような行動をする大株主はいない。やっても自分が損するだけだからである。
その意味でも著者の行動は私にとって青天の霹靂であり、全く経済的合理性に基づかない、非合理的で意味不明なものに思えた。

しばらく経ち少し落ち着くと、「彼の行動は、人を欺いて財物を交付させている点で、刑法246条の詐欺罪に該当するのでは?」という気がした。
私はヒカルチャンネルをよく見ていたファンであり、著者に対して悪意は全くなかったが、それとこれとは話は別である。
すぐに弁護士に連絡しつつ、当時代官山にあったVALU本社に出向いた。アポなしだったが責任者が出てきたので事情を説明した。「いつか起きるだろうと思っていました。今対応中です。随時連絡を取り合いましょう」と言われたのを覚えている。
その後たしか「ヒカルVALU被害者の会」みたいな名前のTwitterアカウントを作り、自分が今やってることや事情や背景を説明したり、著者のTwitterに何度か「これどういうことなんですか?」みたいなリプをつけたりした。フォロワーが異常な速度で伸びたのを記憶している。

著者の行動を問題視する人は、私の他にもいた。
そのような流れの中で、著者は大炎上した。
中学生の時にネットを触り始めてから20年以上経つが、後にも先にも未だあれほどの大炎上を見たことはない。
文字通りの大爆発。歴史に残る炎上だったと思う。

ちなみに事態が起きて2日後に、著者はかなり高い価格で、大量のVALUの買い注文を出した。
高い価格で大量に買うということは、マーケットを通した財物の返還を意味する。要は、自腹を切って返金に応じたということだ。
その時点で著者からの謝罪の言葉はなかったが、私はこれを、著者なりに謝罪の意思を表しているのだろうと認識した。

この著者の行動は被害者の数を減らすことに繋がったと思う。
VALU事件で経済的に損した人は、著者が買い注文を出すまでの2日間に損切りさせられた人だけである。
この2日間VALUマーケットを私はよく見ていたが、ストップ安で約定はほぼなかったのを記憶している。
最終的にほとんどのVALUは、皆が買った値段よりもかなり高い価格で、著者が高値で買うことになった。経済的な被害者はほとんどいなかったはずだ。

私は著者がこの行動をとった時点で著者のことを許したし、Twitterの更新も停止した。
また、「詐欺の意図はなかった。単に軽い気持ちで、面白そうだからやった」という著者の言葉も本音なのだろうなと感じた。

結果論で言うと、著者は行動としては、社会に対して誠実に向き合ったと思う。
著者は本書でも述べている通り、全般的な炎上対応には失敗したが、2日目のこの行動(買い戻し)だけは唯一良い判断だった。
この行動が、著者に対する社会からの信頼をぎりぎりつなぎ止めたと思う。

そんなわけで、直接の被害者は事件が起きた2日後には実は金銭的にはほとんど救済されていたのだが、著者は本書でも書いている通り、炎上対応に失敗した。
「謝ったら負け」的な気持ちがあったのだろう。謝罪会見もミスり、その後も炎上が長く続いた。
結局、著者は活動休止に追い込まれた。著者はその後長い苦闘の末に復活することができたものの、著者と一緒にこのVALU事件を起こした禁断ボーイズというグループ(私はこのグループもよく見ていた。このグループも、リーダーのいっくんやメサイアをはじめ才能豊かなメンバーが多く、とても面白かった)はこの一件で勢いを失い、YouTuberとしては致命傷になった。

本書を読むと、著者は本件に関して、各方面に迷惑をかけたことを反省し謝罪しつつ、自分が人間的に成長する良い機会だったと振り返っている。
著者の動画は今も面白く、私も気晴らしに時々見ている。
ネットを通して当事者になった私だが、本件が著者の人生の糧になり、今の著者の動画に良い方向に反映されているのであれば、私の行動も少しは意味があったのかもなと思った。


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