【#040】健幸のための茶道
私のクリニックには様々な患者さんが来ます。
何を求めて来るのでしょうか。
もちろん、病気を治したいという気持ちが一番だと思います。
でも毎日、患者さんと話していると、どうやらそれだけではないようです。
患者さんに、
「先生と話していると元気になれます。」
「ここにいると笑えるから。」
「先生の顔を見に来ました。」
などとよく言われます。
私も患者さんに
「あまり医療の話をしていませんでしたね。余計な話ばかりですいません。」
と話しますが、患者さんからは
「そこが他のクリニックとは違うんです。だから来てしまいます。」
と答えてくれます。
ある知人から
「横倉先生はどうやって人の病気を治すのですか。どうやって人に親身に なれるのですか」
と聞かれたことがありました。
私は
「人を治そうと思うのは当たり前、それは無意識にしていて当然です。ただ弱っている患者さんには言葉ばかりでなく、抱きしめたくなるような思いが湧いてきます。それが私の言葉に表れるのかもしれません。」
ある患者さんが来ました。
両腕はリストカットの傷で埋め尽くされていました。
私の外来に来るまでに10軒以上の精神科を受診していました。そしてある精神科の医師から病名を20以上書かれて私に見せました。
私はざっと目を通しただけで返しました。
そして何をしたか。
患者さんの両腕をさすることだけしかできませんでした。
そのあと患者さんその顔が変化したのです。
その患者さんは後になって、
「ほかの精神科にはもう行きません。」
と語ってくれました。