見出し画像

大幅な活性化が見込まれる!?投資が脳に与える影響とは?

お金の学校「グローバル・ファイナンシャル・スクール」校長・市川雄一郎氏が、お金についてやさしくアドバイスする本連載、 前回は長寿を阻む最大の敵「ストレス」とお金についてのお話でした。
▶お金がないストレスを解消するには⁉プロが教えるとっておきの方法

今回は、投資と脳の関係についてお話ししていただきます。

投資により磨かれたプロの「脳力」がスゴい!

年齢を重ねるごとに物忘れが激しくなったり、簡単なクイズを解くのに時間がかかってしまう、などと感じている方はいませんか?

売り文句ではありませんが、実を言うと投資活動は、人間の脳に大きな影響を与えると言われています。なぜなら、投資における意思決定プロセスやリスク管理は、脳のさまざまな領域を活性化させ、精神的な成長や健康にも寄与すると言われているからです。

投資活動は、脳の意思決定に関わる部分、特に前頭前野を活発に働かせると言われています。前頭前野は、複雑な判断や計画、感情の制御を司る重要な領域であり、例えば銘柄選びの際など、選択肢が多岐にわたり、リスクとリターンを天秤にかける必要がある場合などに活発化されるのでは?と考えます。それを繰り返すことによって脳が活性化し、意思決定能力の向上につながるのです。
 
さらに投資は、当然感情のコントロールも要します。市場の急激な変動や予想外の損失に直面すると「今は手を出すべきではないのか?」「今こそ買い足す時期なのか?」「なぜマイナスになってしまったのか?」など、感情に左右された際、脳はストレスホルモンであるコルチゾールを分泌します。
 
そうなることによって、短期的に注意力を高めますが、長期的には前頭前野の働きを抑制し、衝動的な行動を引き起こす可能性があるのです。つまり、冷静さを保つことが難しくなるということ。そのため、投資家は常に冷静さを保ち、感情に流されずに行動するスキルが求められるのです。頭ではわかっていても、行動に移すのはなかなか難しいもの。投資を成功させるには、気持ちと理性を上手にコントロールする技術が必要だということです。
 
ではプロの投資家はどうなのでしょう?もちろん、その点を克服できている方が多いと私は思います。自身の感情を観察しつつ、ルールに基づいた取引を徹底することで、感情に左右されるリスクを最小限に抑えることができているからこそ、大きな成功体験を得ていると考えられるでしょう。

さらに、ちょっと難しい話になりますが、プロの投資家は「情動知能(EQ)」をしっかりと鍛えることができている方が多いと言えます。EQとは、感情の認識とコントロールを含む能力であり、投資活動を通じて鍛えられることで、他の領域でも効果を発揮します。

つまり、うまい話に簡単に乗らないということです。瞬時に熟考・識別ができ、結果として最適な判断ができる。それは、イコール「投資脳」が育っていると言えますね。

当然ながら学習と認知能力の向上も必須!

言わずもがなですが、投資は学びの連続です。市場の動向を理解し、経済指標や企業の財務状況を分析することで、脳の認知能力が向上します。特に、情報の取捨選択や複雑なデータの整理、パターン認識といったスキルは、脳の海馬や前頭前野を刺激し、長期的な記憶力や注意力を高める効果があります。
 
さらに、投資活動は新しい知識を吸収する「動機づけ」にもつながります。例えば経済についてや、国際情勢、業界のトレンドなど、幅広い分野の知識を習得する必要があり、これが脳の柔軟性を保つカギとなるのです。特に中高年層においては、こうした学習が認知症予防にも寄与すると言われているので、年齢に関係なく是非投資を始めてみることをおすすめします。
 
学習と実践を重ねた先にあるのは、言わずもがな「成功」です。しかし、必ずしも良い結果が出るとは言えませんよね。つまり失敗することもあるわけで、そうなると脳はどんな働きをするのかというと、何と失敗経験から学ぶプロセスも脳にポジティブな影響を与えると言われているのです。失敗はネガティブな感情を伴うものの、これを分析し次に生かすことは、脳の可塑性(ニューロプラスティシティ)を高める重要な要素とされています。
 
ニューロプラスティシティとは、脳が経験に応じて変化する能力のことであり、学習や適応力を支える基盤です。つまり、失敗した経験を重ねていくと、そのぶん適応能力もアップするということなので、失敗はポジティブな要素と言えます。とはいえ、投資における失敗とは、つまり資産を減らす結果になるので、できれば失敗は避けたいところですが…。
 
一方で、過度なストレスを伴う場合は逆効果となる懸念も。長期的なストレスは脳の健康に悪影響を及ぼし、記憶力や意思決定能力を低下させる可能性があるため、適切なリスク管理と休息が不可欠となります。わかりやすく言うと、投資に失敗したショックから投資判断が鈍り、所謂「不調期」に突入してしまう恐れがあるということです。何をやっても上手くいかない時があるように、投資活動においてもまた然りです。
 
しかしそれを回避するためには、目標を明確にし、余裕資金で投資を行うこと。それらによって精神的な安定を保つことができれば、脳の健康にもさほど悪影響を及ぼすことはない…かもしれません。
 
最後になりますが、投資は単に資産を増やす行為ではなく、脳を活性化させ、感情のコントロールや認知能力の向上に寄与する行動でもあるということがおわかりいただけたと思います。つまり、意思決定能力や情動知能を鍛えながら、学習を通じて脳の健康を保つことも可能であるということです。財務的なリターンを求めながら、脳の成長や活性化も期待しつつ、日々投資活動を行っていくなんて、新しい楽しみ方になるかもしれませんね。
 
最後までお読みいただきありがとうございました。次回もぜひお楽しみに。
 
 市川雄一郎

グローバル・ファイナンシャル・スクール校長兼講師。1級FP技能士、世界24カ国のFP国際資格CFP®認定者。大学の客員教員としても教鞭を執り、また東京証券取引所から日本のお金の専門家「東証+YOU応援団」として、
全国の資産運用に関する講演活動に尽力。金融機関職員やそのお客様向けセミナーの講師も務める。物腰やわらかで明快な講義は絶品で、多数のファンがいる。著書に『投資で利益を出している人たちが大事にしている 45の教え』(日本経済新聞出版)など。監修本も複数出版しており、メディア出演も多数。
●GFS監修~投資の達人講座 https://toushi-up.com/cfm/kin_ad04.html
●イチカワ校長とウサコ先生の世界一わかりやすい投資額  https://www.youtube.com/@ichikawakoucho_toushigaku

いいなと思ったら応援しよう!