白髪は抜くと増えるってホント?|365調査隊が徹底検証!“健康常識”のウソ・ホント【第3回】
見た目の印象や雰囲気を変える白髪。外見的な美しさや若々しさを維持するため、白髪を抜いていたら逆に増えている気がする……。白髪にまつわるウソ・ホントについて、調査隊が真相に迫ります。
増えはじめたから抜いているが正解!
「あれ、また白い毛が増えたかも」——そう一人ごちながら、気になる1本をぷちっと抜く。若かりし頃、寄る年波にそんなささやかな抵抗を試みた人は多いでしょう。
でも、そこで気になるのが、「白髪は抜いたら増える」といううわさ。もしこれが事実なら、抜くのはかえって逆効果だった可能性も……? 表参道総合医療クリニックの田中聡先生に真相をお聞きしました。
「そもそも髪の色というのは、頭皮のメラニン細胞で作られるメラニン色素によって決まります。メラニン細胞が老化などなんらかの原因でメラニン色素を作れなくなることで、髪の毛は白くなるんです。そうしたメカニズムを踏まえれば、白髪を1本抜いたところで、ほかの毛根に影響が及ぶことはまずありえないでしょう」
田中先生によれば、髪を抜く行為によって毛根にある毛乳頭(毛細血管から栄養を受け取る部位)が傷つくことも考えられないといいます。つまり、「白髪は抜いたら増える」という説は、完全なる都市伝説のようです。
「ただし、白髪を抜いた後、引き続き同じ毛穴から白髪が2、3本生えてくることはありますから、それによって〝抜いたら増えた〟との誤解が生まれたのかもしれませんね」
白髪が増えていく要因として考えられるのは、加齢はもちろん、ストレスや栄養不足などです。一定の年齢になれば徐々に白髪が増えていくのは必然で、そもそも「抜いたから増えた」のではなく、「増えはじめたから抜いている」というのが正解といえそうです。そのため、私たちにできることは、日頃から髪の毛をいたわった生活を心がけることに尽きるでしょう。
「毛周期にしても、栄養や睡眠の状態、喫煙、飲酒、ストレスなどの要因によって乱れがちです。食事を含めた生活習慣を改善することが、なによりの髪の毛のケアになるんです」
なお近年、人の老化を制御する「サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)」に注目が集まっています。NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)という成分がサーチュイン遺伝子を活性化する作用を持つとされ、美容や身体機能の面でアンチエイジング効果が期待されています。
「実際にNMNの摂取によって、白髪が減ったという報告もありますから、気になる方は試してみてはいかがでしょうか。NMNはブロッコリーや枝豆などの食材に含まれていますが、ごく少量なので、サプリメントを活用するのが効率的です」
つまり、いちばんの白髪対策は「抜く」ではなく、日々の予防的ケアといえそうです。
著者プロフィール
365調査隊とは
ちまたにあふれる健康常識の真偽を検証するために編集部員とプロアスリートで健康マニアのライター・友清哲氏が「365調査隊」を結成! 各分野の専門家を取材して健康常識の真実に迫ります!
友清 哲(ともきよ さとし)
1974年生まれ。神奈川県横浜市出身。フリーライター&編集者。ルポルタージュを中心に著述を展開。著書に『横濱麦酒物語』(有隣堂)、『日本クラフトビール紀行』『物語で知る日本酒と酒蔵』(ともにイースト新書Q)、『一度は行きたい「戦争遺跡」』(PHP文庫)、『怪しい噂 体験ルポ』『R25 カラダの都市伝説』(ともに宝島SUGOI文庫)、『作家になる技術』(扶桑社文庫)、『片道で沖縄まで』(インフォバーン)ほか。