30年間以上負けがないすごいファンドがあるとか絶対に嘘だろうと思った話

様々な企業の生い立ちについてやたらとクオリティーの高いリサーチ力とまとめ力と軽快な語り口で面白い人気番組のAcquired。日本のコテンラジオが歴史についてだとしたら、これは企業版って感じですね。しかし1話1話のボリュームが凄くて、未だに消費しきれてないエピソードが多すぎです。

https://www.acquired.fm/episodes/renaissance-technologies

で、Renaissance Technologiesのはなんとなくたまたま聴いてみたやつなんですが、こんなこと可能なんだ??と結構衝撃を受けました。証券とかファンドの世界にいる人なら知っているんでしょうが、私とかはそういう世界に疎く「ルネッサンス?半導体?」とか思ってました。

・通称RenTechは未だに秘密のベールに包まれているいわゆるクオンツ系の「投資会社」(ヘッジファンド)で現在20兆円くらいの資産を運用。

・フラグシップのMedallion Fundは過去34年間で平均年間リターンが手数料前のグロスが68%で過去に一度もお金を失ったことがない(!!!!)

・これは 1998年に10万円投資して、ずっとファンドに入れ続けられたと仮定すると複利で現在4.6兆円になっているレベルのすごいリターン

・Medallion Fundは外部の投資家は初期の人以外は入れていなく、内部だけで回せている

・ドットコムバブル破綻やリーマンショックの時も驚愕のリターンを出し続けた

・創業者とコアチームは1960年代から冷戦時の暗号解読などを行なっていた数学の天才たち。

・創業者のJim Simonsはかなりのレベルの数学の天才だったのにMITではもっと上がいると知り、自分の強みは他の事象とアカデミックな最先端を結びつけられる「センスの良さ」だと気が付く。(ある意味Amazonのジェフベゾスに通ずるところもある)。そしてかなりのリア充でもあった彼は他の天才を集められる人望があった。

・Medallionは「投資」とは言えないレベルで会社のファンダメンタルズをガン無視。基本は「株価がどう動くか」を無数の要素の関係性の膨大なデータから予測。その会社が何やっているとか関係ない。

・ある事象の結果の確率を予測する隠れマルコフモデルをいち早く応用していたり、ノイズからシグナルを見出す音声認識の研究をしていた人材を引き入れ、「どういう理屈か人間にはよく分からないけど、事象の関連性の確率を予想し続けるモデル」を磨き続ける。他のクオンツ系のところと比べても別格。ノイズに見える現象から意味や関係性を見つけるというのはもともとの暗号解読もそういう分野。

・これはある意味現代のAIブームや大言語モデルの先駆けになることをやっており、実際に今の社長のPeter Brownはカーネギーメロン大学時代にAIやディープラーニングの父であるヒントン教授の弟子だったことがある。

・コンピューター性能が非力の時代から実は今のモダンなAIの先駆けで、今ももしかして自社内に世界最高峰のAIモデルを持っている可能性さえもあるRenTechだが、基本秘密主義で論文も出さないので、それの真偽は誰も確認できないそうだ。

・入社すると生涯に渡るNDAを結ばされる。そしてニューヨーク州の田舎にあるRenTechはウォール・ストリートからも隔離され、最高峰の頭脳を持った仲間と協力し合う初期のグーグルにも似ているカルチャーと、一生食べるのに困らないレベルの報酬をもらえるオンリーワンの会社からそもそも去るインセンティブはほぼゼロらしく、秘密のベールに包まれたままの理由の一つ。

・従業員数も300-400人レベルのみで、他の同業他社と比べても一桁少ない。

・いわゆるフラッシュ・トレーディングのような高速取引をしているわけではないが、数分から1日の単位で細かくトレードをしている(そしてそれを秘匿するテクニックもすごいらしい)。人間には理解不能な関係性をモデルが見出してくれて、富を産み出し続ける。

・短期で見ればゼロサムゲームで勝ち続けるマシンだとも言えて、富を奪っている相手というのは感情で動く非合理な動きをする投資家など。

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