「ヨソ者」地域おこし協力隊の小さく始める実践体験
新しく地域づくりの場に飛び込んだ新米の地域おこし協力隊、あるいは地域で何か始めたいけど既存の団体ではしがらみや合意形成に奮闘するばかりでなかなか動け出せない人。そんな方たちに向けて、地域おこし協力隊の私がとりあえず「小さく始めた」実体験と参考になった考え方を紹介します。
私自身は、正直言ってこんな風に「やりました!」と言えるような熟練者ではなく、超未熟者で恥ずかしいくらいなのです。でも、だからこそ小さなことからなら初心者でもまず始められることと、とにかく始めてみると動き出すことをお伝えしたいと思います。
ヨソ者がいきなりみんなを動かすのはムリ
地域おこし、と聞くと地域で一丸となって課題に取り組み成功を勝ち取る、というイメージですが、実際はそんなことは滅多にありません。何十年に渡り同じ体制を維持してきた地域やその団体において、よそから来た人間の思いついた提案が通ることはまず無いのです。地域おこし協力隊なら活動任期は三年間であり、新しい活動をするための合意形成をしようとしたらおそらく何も始まりません。
私自身、地域おこし協力隊として着任した当初は周りの関連団体の方と話しながら、こんな事業はどうか、こんなものを試作してみた、とやってみましたがあまり相手にはされませんでした。今思うとパッと出のヨソ者の提案が通らないなんて当たり前だと分かるのですが。
まずは一人で小さく始める
地域おこし協力隊に着任して早々に読んだのがこちらの本です。仕事を始めてから上記のような経験をして、ここに書かれている鉄則①の大切さを改めて感じました。
鉄則① 小さく始めよ
最初は数人で構わないのです。むしろ、まちの変化を起こすのに大それたことを考えるのは逆効果だったりします。地域活性化で成果をあげるのは、一致団結した大集団ではなく、孤独と向き合って覚悟を決めた少人数のグループです。たとえ一軒の店からでも、その地域に変化を起こすことはできます。(p. 90)
そしてこの鉄則①にしたがい、早速私はひとりで始めてみることにしました。
始めたのは今借りている借家がもつ休耕地を使った農閑期におけるハーブ栽培と、その農地での農作業体験です。これでしたらどうせ管理しなければならない農地の管理を兼ねて、誰の承認も得ることなく思いついたその時から始められます。
借家の農機具は好きに使わせていただけることになったいるので、草ぼうぼうの畑を猛烈な勢いで草刈りし、さらに慣れないトラクターを操縦して畑を耕しました。燃料代やマルチシートなどは購入しましたが、道具代はわずかなものでした。こうして私は最小限の投資かつ最低限の人数で小さく始めました。
地域おこし関連の事業を始める際に何かとワークショップでのアイデア出しや会議による合意形成が行われているようですが、これではなかなか前に進めません。
結局、始めないことには何が正しいかは分からないし、始めることで次の課題がたくさん見えてきます。本当の失敗というものがあるとすれば、何も始めずに終わってしまうことだと思います。
地域のためではなく自分のため
小さく始める時に意識したことは「自分やって、自分で稼ぐを目的にすること」です。まだ稼げている訳ではないので、こんなこというのもどうかとは思うのですが、自分で稼ぐために自分で始めれば全てが自分の意志で行われるので、全て自己責任で行えます。また、行政予算では縛りが厳しい計画を適宜修正することや撤退することも自分次第です。
地域のことに取り組むと、どうしても「人のためにいいことをやっている」と思いがちだ。「人のため」と思うからこそ、他人から評価されて当然と考えたり、他人に過剰に期待したり、これくらいは許してもらえるだろうと傲慢になったり、自分ではなく他人のお金を使うことが正当化されると思い込んだりする。お金の管理は「人のために人のお金を使うとき」に最も杜撰になる。しかし、実際には、それが無償奉仕であろうと、ビジネスであろうと、あくまで自分の意思によるものなのだ。そう思えば、自分のお金を投じるのも当たり前になり、たいして評価されずとも頭にこない。そいういうものである。(参照:地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門)
小さく始めると見えてくる
「地域のためでなく自分のため」と書いたことと矛盾しそうですが、とりあえず始めることで、「あいつは本当にやるやつだ」と周囲から思われるようになります。さらに、一部の人たちは「面白そうだからちょっと手伝うよ」と言ってくれたりもします。僕もせっせと畑を耕していたら地元の人が一緒に作業してくれて色々とアドバイスをしてもらえました。
昨年11月に都市部の方向けにハーブの定植体験をした時は、事前に軽く声をかけていただけにも関わらず集落から大勢の助っ人にきていただけました。予想以上に多くの方に協力していただけて大変嬉しかったです。とにかく始めてみてよかった!と実感した瞬間でした。きてくださった方、また応援してくれたみなさんには感謝しかありません。
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今回は「小さく始める」の実体験を記事にしてみました。自分でも自覚していますが、多くの方からみたらこのくらいのことは「大したことない」かもしれません。それでもまずスタートを切れたことは大きな一歩だと思っています。この経験が何かの役に立てばと思います。自身も引き続き次のステップに移るべく行動を起こしていきます。
いただいたサポートは農地開拓や古民家活用の等の活動と、インプットのための書籍に使わせていただき、お役に立てる記事執筆の糧とします。どうぞよろしくお願いいたします。