【正答率69.7%】鋼材ブレースの有効細長比に関する問題【一級建築士試験】
【問題】
有効細長比λが小さい筋交かい(λ=20程度)は、有効細長比λが中程度の筋交い(λ=80程度)に比べて変形性能は低い。
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【解説】
答えは「×」。
細長比の読み方は「さいちょうひ」と言う人もいれば、「ほそながひ」と言う人もいるけど、読みやすい方で言っていいよ。
細長比問題は試験元の大好きな分野だ! ここでしっかりマスターしておこうね!
有効細長比ってなあに?
有効細長比と靭性の関係性
❶有効細長比ってなあに?
まずは、細長比について解説する。
細長比λ(ラムダ)の大小は、その材料の「細長さ」を表す値なんだ。 細長比λを求める式って覚えているかな?
λ=lk/i
ここに、
lk:座屈長さ
i:断面二次半径
という式で表せたよね?
ここで、この式をよーく観察してみると、断面二次半径iという得体の知れない情報があるけど、これはともかく、座屈長さlkが長くなるとλも大きくなるという方程式になっていることがわかるよね。
つまり、細長比λが大きくなればなるほど「細長い」部材ということがわかる。
何でもそうだけど細長いものって、なんだか弱々しいよね? 構造物だって同じ。
実務レベルで言えば、この細長比が大きくならないよう、補剛材を入れるなどの工夫しているんだよ。
ちなみに「有効」細長比は、部材のX軸周りとY軸周りのうち、厳しい(λが大きい)方の値を指しているんだ。
❷有効細長比と靭性の関係性
この問題は「λが小さい~」から始まるけど、λが小さいってことは、ずんぐりむっくりな形をしているってことだね。
同じくこの問題の最後は「~変形性能は低い」となっている。 まず問題の答えを導く前に考えてみてほしい。
“ひょろひょろ”の筋かいと、“がっちり”した筋かい どっちが靭性能に優れていると思う?
強さで言ったら圧倒的にλが小さい(ずんぐりむっくり)部材の方が強そうだけど、靭性だとどうだろう? 靭性だってλが小さい方が有利なんだ。
なぜか?
細長い筋かいと、ずんぐりむっくりな筋かいを、「よーい、ドン!」で引っ張っていったら、どっちが先にプチって切れちゃうかな? もちろん細長い部材だよね?
今度は、逆に圧縮力をかけてみた場合、細長い筋かいと、ずんぐりむっくりな筋かいのうち、どちらが先に座屈してしまうかな? やっぱりこれも細長い部材だよね?
筋交いは座屈すると、座屈変形しながらそのエネルギーを吸収するんだけど、λの小さい筋交いはエネルギーの吸収能力に優れているんだ。
いずれにせよλが小さい(ずんぐりむっくり)ほどそのエネルギー吸収能力が高いってわけ。
従って、
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有効細長比λが小さい筋交かい(λ=20程度)は、有効細長比λが中程度の筋交い(λ=80程度)に比べて変形性能は低い。
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とした設問は誤り。
【まとめ】
細長比が大きい⇒細長い部材
細長比が小さい⇒ずんぐりむっくりな部材
有効」細長比は、XY方向それぞれの細長比のうち大きい方(不利な方)
細長比が小さいほど、靭性に富んでいる