【正答率64.0%】コンクリートに対する鉄筋のヤング係数比に関する問題【一級建築士試験】
【問題】
コンクリートに対する鉄筋のヤング係数比nはコンクリートの設計基準強度Fcが高くなるほど大きくなる。
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【解説】
答えは「×」。
一級建築士試験において出題されるカタカナ語が難しい理由。
それは…
脳には、自分の記憶の中にある経験や知識から情報を引きだそうとする働きがあるからなんだ。
だから、ヤング係数と聞くとどうしても、 「ヤング=若い」というイメージが先行してしまうんだけど、今日はそんなヤングなイメージをぶち壊しにいくよ!
ヤング係数Eとは?
ヤング係数比nとは?
❶ヤング係数Eとは?
まずこのヤング係数の「ヤング」は、T.youngさんという人の名前から取ったものだ。
発見や、提唱した人の名前からその単位の名称がつけられることはよくあることだ。
ニュートン(N):アイザック・ニュートン
アンペア(A):マリ・アンペール
ワット(W):ジェームズ・ワット
だから、どうしてもヤングと聞くと“若い”というイメージが先行してしまうけど、若さとは全く関係ない。
ただの人の名前だってことを覚えておこう。
さて、本題に映るけどヤング係数とは何だろう??
ヤング係数Eとは、ざっくり言うと、
を表した係数だ。
ここに別の係数を乗じてみよう。
例えば、断面二次モーメントIを乗じると、EIとなる。
これは「曲げ剛性」と言って、曲がりにくさを表したもの。
例えば、断面積Aを乗じると、EAになる。
これ元の長さLで除したEA/Lが「軸剛性」と言って、軸方向における変形のしにくさを表したものになる。
○○の変形のしにくさ を表したい場合にはこのヤング係数Eが影響してくるんだね。
❷ヤング係数比nとは?
ひとえにヤング係数と言っても、材料ごとにその値は様々だ。
コンクリートにしてみれば、設計基準強度Fcをいくつにするかでヤング係数は変わってくる。
ここでのテーマはヤング係数比というものだけど、比と言うからには何かと何かを比べているってことだよね?
ヤング係数比nというのは、コンクリートのヤング係数に対する鉄筋のヤング係数のことを言っていて、次の式で表せるんだ。
ここに、 n:ヤング係数比
Es:鉄筋のヤング係数
En:コンクリートのヤング係数
つまり、nが大きいということは、鉄筋コンクリートの柱が軸力を受けたとした場合、 鉄筋が負担する力の割合が多い ということを意味するんだ。
先ほど、コンクリートのヤング係数は設計基準強度で異なるという話しをしたはずだ。
当然ながら設計基準強度が大きくなれば、変形もしにくくなるよね?
つまり、上式の分母の値が大きくなることを示している。
分母が大きくなればヤング係数比は??大きくなる?小さくなる? せーの!
「小さくなるー!!」
以上より、
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コンクリートに対する鉄筋のヤング係数比nはコンクリートの設計基準強度Fcが高くなるほど大きくなる。
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とした設問は誤り。
【まとめ】
ヤング係数は変形のしにくさを表した係数
ヤング係数比は、コンクリートのヤング係数に対する鉄筋のヤング係数
コンクリートの設計基準強度が高くなれば、ヤング係数比nは小さくなる。