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【一級建築士】構造力学講座第1回「ねぇねぇ、支点って何だかわかる?(1)」

こんにちは!けんけん(@kenken_blog)です。


一級建築士の構造力学の問題って、トラスやら不静定梁やら、受験生を悩ませる問題がたくさん出題されます。


毎度、目新しい問題が出る度に、頭を悩ませている方も多いかと思いますが、第1回目となる構造力学講座は、構造力学の問題では必ずお目にかかる「支点」について解説しようと思います。


え、noteの力学講座で解説するのが支点?そこww?


という反応も出てきそうですが、部下に指導してい思うことは、この支点の概念をよく理解していないという人が実に多いんですよね。


だから思うんです。


そりゃ、力学で点数取れないわ


これからこの講座を続けるにあたり、どうしてもこの支点の概念を理解していなければ説明しにくくなってしまう部分も出てくるため、第1回目はあえて「支点とは?」に焦点を当てた解説をしたいと思います。


◆支点って何?


文系大学卒業の僕にとって、建築系大学では当然のごとく学んでいると思っていたので、たくさんの人にこのように聞いて回りました。


ねぇねぇ支点って何?この三角形のやつは建物のどこについているの??


どうですか?ピュアでしょ笑?


しかし、この問いに対して満足する回答は得られませんでした。


そして、明確な回答を得られることもなく20年近くが過ぎたわけですが、僕の経験上、この「支点」というものを一言で表すのならば、(諸説あると思いますが)


構造物に力が加わった際の、構造物の挙動を表現するもの(挙動を制御するもの)


と言ってよいのかなと思います。


構造計算上、これら構造物の挙動を再現するために支点を設けているため、(当たり前ですが)建物に△はどこにもなかったのです笑


例えば誰もが一度は目にしたことのある、以下の単純梁の問題。




A点とB点には、それぞれピン支点とローラー支点が取り付いていますよね?


このピン支点とかローラー支点とかが何者かって、マジメに考えている人って少ないと思うんですよね。


今回の講義では、このへんを深堀りしていきたいと思います。


ちなみに、この支点を取っ払うとどうなるでしょうか?



この梁部材はほんの少しの力を加えただけで、永久に荷重の作用方向(下方向)に向かって移動し続けてしまいます。


そう、これら支点の存在意義は、Pが加わった際に、この梁が下方向に移動しないよう、その挙動を制御しているんですよね。


そして、もう一つのポイントは、支点がないとこの梁部材には反力は生じず、反力を起因とした応力は作用していないということです。


これは非常に大切な概念なのでよく覚えておいてください。


基本的な3つの支点とその特徴を示します。



  • 【ピン支点】鉛直方向(Vertical)及び水平方向(Horizen)の移動を拘束する。

  • 【ローラー支点】鉛直方向のみ移動を拘束する。

  • 【固定支点】鉛直方向及び水平方向の移動、並びに回転を拘束する。


細かいことを言うと、「ばね支点」というものもあるのですが、一級建築士の試験では出題されないため、ここでは解説を割愛します。


◆身近なものを支点に置き換えてみよう!


例えば、今あなたが座っているその4本脚の椅子。




この椅子を、下図のようにモデル化してみましょう。




椅子の足元を計算モデルに置き換えた場合(=モデル化)、この支点がなければ、椅子に座った瞬間、椅子は床を突き抜け、地面を突き抜けてブラジルまで行ってしまいます。


実際は、椅子に座っても床が突き抜けないのは、椅子の1本の脚にかかる力と同じだけの力を床が押し返しているから。


もっと言えば、この床を支えている、梁、柱、基礎が接地している地面もまた同じ力で押し返しているからなんですよね。


それだけの力に耐えうるからこそ、このモデルには鉛直方向移動を拘束する支点が設けられる(支点を設けられる資格がある)のです。


え、ちょっと待って。
水平方向への移動が拘束されていないこのモデルだと、水平方向に力を加えたら、その椅子は水平方向に移動してしまうってこと??


その通り!!


この境界条件(ローラー支点)だと、椅子を横から軽い力で押しただけで、この椅子は水平方向に移動し続け、地球をぐるぐると何週も回転し続けてしまいます。


このような構造物を「不安定構造物」と言います。



実際に椅子を押しても地球をぐるぐると回転しないのは、


  1. 脚と床の間にある摩擦力が水平移動を抑制している

  2. 空気抵抗等により、椅子の水平移動の力が弱まる

  3. その力が永続的に作用していない


といった理由からです。


そのため、地球をぐるぐる回転しないように、そして力を加えた時にそれが最も椅子らしい挙動を示すために、この椅子をどのような境界条件(ピン?ローラー?)でモデル化すれば良いのか構造設計者は悩みながら決定しているのです。


もし、ピン支点で足元をモデル化(この椅子の足元を宇宙一強力な接着剤で固める)すれば、水平方向の移動は拘束されるため、お相撲さんが押そうが、ダンプが衝突しようが、この椅子の足元は絶対に水平移動しないのです。




こんな椅子、世界中どこ探したってなかなか無いですよね??


常識の範囲で、椅子をモデル化しようとした場合、ピン支点や固定支点だけを用いてモデル化(再現)するには若干無理があるように思えます。


冒頭に「支点は、ある力に対して構造物の挙動を表現するもの」と定義づけましたが、実は椅子をモデル化するってすごい難しいことなんです。


まず、椅子は力が作用した場合、どのような挙動をするのか考えてみましょう。


  • 下向きの力に対して:座っても床を突き抜けずに、その状態を維持する。

  • 上向きの力に対して:子供の力では椅子を持ち上げることはできないけど、大人の力なら椅子を持ち上げることができる。

  • 横向きの力:一定以上の力が作用すると、摩擦力を受けつつ移動する。


構造設計者は、実際の挙動をイメージしてその境界条件を決定していくのですが、これが構造設計の難しい部分でもあり、面白い部分でもあるんですね。


何かに力を加えた際に、実際どのように構造物が変形(移動)するのか?を再現するために境界条件が与えられているということを十分に理解しておいてください。


◆まとめ


第1回目の講座では、構造力学で必ず出てくる「支点」とは何か?について解説しました。



  • 支点は、構造物の挙動を再現するもの

  • 支点がなければ、応力は発生しない



この支点の概念は、今後の講座で必要不可欠となる知識です。


構造力学の問題につまづいたら、一度このnoteに立ち返るようにしましょう!


次回講義は、この支点についてもう少し学んでいきたいと思います。


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