『文化財行政学』という視点から考える新木川温泉
本日2024年4月24日、アイドルマスターシャイニーカラーズがめでたく6周年を迎えた
私自身、2周年を迎える少し前にシャニマスを始めたため、出会ってもう4年になるわけだ
月日が流れるのって早い
しかし、そんな喜ぶべきAnniversaryに少し悲しいニュースが飛び込んできた
それは、作品内で描かれる寮のモデルとなった新木川温泉の解体工事が始まるというものだ
名シナリオ、「明るい部屋」を初めとして様々なシーンで描かれてきた283寮が、終わりを迎える
なぜ無くなってしまうのか。残すことはできないのかと考えてしまうのが、プロデューサー及び地縛霊として当然の感情だろう
しかしそう簡単なものでは無いのだ
まず大前提として、木造建築で銭湯施設は活用がしにくい
というのも、湿気で木材がダメージを受けているので長い目で活用しようと思えば内観、外観を残したまま使えなくなった木材を総入れ替えしなければならないからだ
無理。とは言わずしにくいと言ったのは実際に例があって、尾道市の大和湯という銭湯施設は改装されて現在は飲食店として活用されている
こちらは石材を主に使用しているという理由もあるが、尾道が金融の中心地として栄えた大正、昭和の街並みを保存しようという働きが市全体であるから活用できたのであって、新木川温泉周辺のような新しめの住宅地ではないからだ
『伝統的建造物群保存地区』という枠組みがあり、尾道は組み込まれていないものの、『歴史的風致の維持及び向上に関する枠組み』というものを定めている
要は、「古い町並みをそのままにしようね〜」ということである
しかし前述したように新木川温泉周辺は近世・近代の雰囲気を感じられるものではなく、またそういった新しい街の中にぽつんと佇む古い木造建築というのは淘汰されてしまいやすいのだ
建築年数の問題もある
確か建造から100年以上経ったものと定められている
例外として、原爆ドームは築年数100年以下だが、世界遺産に登録する前段階として国内法の『文化財保護法』によって史跡に指定しなければならなかったという背景があるために1995年に国の史跡に指定された
このような特別な例外がない限り築年数100年以下=歴史的な積み重ねがないものみなされるために、1927年創業の新木川温泉は文化財に指定はされ得ないのだ
『文化財保護法第二条一(注釈)』に規定されているような条件を満たした建造物という訳でもなく、そうでなくても先述したような街並みの観点及び築年数から文化財に指定されることはないだろう
またそうした条件を全て満たしていたとして、文化財保護法は『選択保護主義』という考えをもとに文化財を選定している。簡単に言えば「古くて大切なもの全部は面倒見きれないから特に大切なものを選ぶね」という訳だ
これは仕方のない事だ。(文化財は利益を得るための手段では無いため、この話題を引き合いに出すのは自分でも抵抗があるが)かけたコスト分のリターンを得られるほどの文化財なんてほんのひと握りで、全部保護するとなると時間も労力もお金も莫大なものになってしまう。なので切り捨てられる歴史的な建造物があっても、仕方の無いことだ
しかしそういった理論だけで納得できるほど、私は人間ができていない
心を動かされたもの、それにまつわる古くて温かみがあり、そこでの人の営みを感じられる建造物
美しいものだ
学問というものは第三者の、客観的な視点からなされるべきものだというのはこれまでの3年間で理解している。が、こと歴史学のスタートにおいては理論よりも感情が先立つものであるというのも知っている
文化財行政学という学問は、こういった感情論からスタートするものだ
「この町のこの歴史的な建造物・町並み・伝統行事を大切にしたい」そういった思いを汲み取り、保存・活用を行うものだ
長く愛された温泉を壊してしまうのは地元住民としてもはばかれるものがあったはずだ。また、我々283プロダクションプロデューサー及び283寮に住み着いた地縛霊としても、ひとつの聖地が喪われてしまうことはやはり悲しい
そういった思いから卒業論文の題材として取り上げ、文章としてこの世界に残そうと思ったのだが教授に突っぱねられてしまった
クソがよォ……
新木川温泉の取り壊しは決定されているため、私にはどうすることも出来ない
「こんな事情があるんだよ」と文章にしたところで、何かが変わる訳でもない
だからせめて、覚えていようと思う
ここには人がいて、思い出があって、そして私が愛する283プロダクションの寮があったことを
追記
やっぱ5000円欲しいわ!!!!!!
タグ追加するぜ!!!!!!
シャニマスの感想じゃねぇけど、ワンチャンあるかもだからよ!!!!!!
注釈
『文化財保護法 第二条一』
「建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(これらのものと一体をなしてその価値を形成している土地その他の物件を含む。)並びに考古資料及びその他の学術上価値の高い歴史資料(以下「有形文化財」という。)」
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