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「冷静と情熱のあいだ」ならぬ「外発と内発の間」

 前回書いた「中動態のモチベーション」の中で、外発的動機付けからモチベーションが始まることがあってもいいのではないかということや、外発的動機付けから内発的動機が生まれてくることもあると書きました。外発的動機付けと内発的動機の間はグラデーションなんだろうと思っています。
 そのあと、noteでも記事を探していたら、2022年3月に書かれたこちらの記事を見つけました。

この投稿の中で、外発的動機付けと内発的動機はどちらか一方ということではなくてグラデーションであるということが語られています。そして、篠田さんは下記のように仰っています。
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実際に仕事をする場面を思い描くと、「内発的動機がなければダメだ!」というのは現実的ではないと、個人的には思います。外発的動機を持ちながら、より自分自身の内側から生まれている動機との重なりをどう作るかが、ビジネスの世界で課されている問いだと思います。
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 私自身、これまでのキャリアを振り返ると、「内発的動機」で動いてきたことは少なくて、篠田さんの指摘に「そうそう!」と共感しています。そして、篠田さんは次のように続けられています。
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周囲のサポートで高まる「内発的動機」

外発的動機付けが自分ごとになれば、内発的動機に近づいていく。実はこれも、研究によって分かっています。基本的な3つの心理欲求が満たされると、外発的動機から内発的動機へ変わっていくようになるそうです。

①コンペテンス(有能さ)への欲求
「できるようになりたい」と願い、環境とうまく関わりながら学んでいこうとする欲求です。

②関係性への欲求
「仲良くしたい」と願い、他者やコミュニティと積極的に関わろうとする欲求です。

③自律性への欲求
「やってみたい」と願い、自ら行為を起こそうとする欲求です。
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 重要なのは③の自律性への欲求で、ここでは周囲のサポートが有効だと述べられています。この周囲のサポートの肝は「聴く」という行為。聴いてもらえることで自律性が高まっていくという点は、なるほどと思います。

 さて、もう一つ共有したい考えがあります。先週、「人と組織をつなぐ感謝のマネジメント」というセミナーに出席してきました。このセミナーでご講演されたのは東京女子大学の正木郁太郎准教授です。正木先生の研究についてはこちらのウェブサイトをご覧いただきたいと思いますが、篠田さんがご指摘している外発的動機付けを内発的動機に近づけていく3つの要素のうちの ① コンペテンス(有能さ)への欲求と ② 関係性への欲求を高めるのが「感謝」という行為になるのかなと思いました。
 正木先生によると、「感謝」という行為の効果は
・感謝される人
・感謝する人
だけでなく、その人たちが所属する
・集団(組織)全体
にも波及効果をもたらすそうです。
 感謝を受けると、自分が誰かの役に立っている、貢献できているという自己効力感を得ることができそうですし、感謝する/される当事者間の関係の近さも増すように思います。
 そう考えると、「感謝」を示す文化が定着していく組織では、外発的動機付けが内発的に変わっていくということが起きるのではないか?を私には思えてきました。
 通常、「感謝する」と言う行為は当事者間に閉じていることが多いのではないでしょうか。しかし、もしも「感謝」の行為が組織の中で見える化されたらどうでしょう?
 社会学に社会関係資本という概念があります。これについてパットナムは「個人間のつながり、すなわち社会的ネットワーク、およびそこから生じる互酬性と信頼性の規範」と定義しています。
 「感謝」を示すということは、互酬性と信頼に基づく行為であると思うとともに、「感謝」でつながっている関係が見えている組織では、篠田さんがご指摘されている、
①コンペテンス(有能さ)への欲求
②関係性への欲求
をより広く、強くメンバーにもたらすのではないか、と思えてきました。
そして、この「感謝」の行為が起こる組織というのは内発的動機が強いメンバーが集まるだけでなく、それゆえに包摂性も高くなる。関係性への欲求も高まるから。

 学術的な研究はすでにあるのかもしれません。そこは勉強不足なので、参考にすべき研究をご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひご教示いただきたく、よろしくお願いします。 

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