首都圏JRの線名(運行系統)の呼び方提案
はじめに
最近、こんな動画を観ました。
動画の制作者は関西の鉄道ファンの方で、ご自身は全貌を把握された上で、首都圏のJR線に馴染みの薄い方向けに、路線図の見方のコツと「路線図から想像するほど難解ではない」ことを示されています。
私自身はこの制作者さんと同等程度にはJRの路線網や運行系統を把握しているつもりですが、それは生まれてから現在まで首都圏に住み続けている鉄道好きであり、この半世紀の間、運転系統の複雑化を一つずつ実体験してきたからだと思います。
言い換えれば、昔の運転系統はもっと単純でした。
本稿では、1利用者として運行系統の変化を振り返るとともに、現在の運行系統を不慣れな方、外国人観光客などにも分かりやすく示す私案など述べたいと思います。
まずは現況
まず、現在のJRの首都圏の路線図です。https://www.jreast.co.jp/map/pdf/map_tokyo.pdf
この中から今回取り上げる路線を挙げると次のとおり。
(1) 東海道線
(2) 横須賀線・総武線快速☆
(3) 湘南新宿ライン☆
(4) 京浜東北線・根岸線
(6) 横浜線・根岸線
(7) 南武線
(9) 山手線
(11) 中央線快速
(12) 中央線・総武線各駅停車
(17) 宇都宮線(東北線)
(18) 高崎線
(19) 埼京線・川越線・りんかい線・相鉄線直通★
(21) 常磐線
(22) 常磐線快速・成田線
(23) 常磐線各駅停車・地下鉄千代田線直通
(29) 京葉線★
(30) 武蔵野線・京葉線★
(37) 上野東京ライン☆
18の路線を列挙しましたが、そもそも路線図が分かりにくい要因の1つが、路線名称と運行系統の名称が混在していることです。
(7)南武線 や (18)高崎線 は路線名称。
(3)湘南新宿ライン や (37) 上野東京ライン は運行系統の名称。
(19)埼京線・川越線・りんかい線・相鉄線直通
は総体としては運行系統の名だけど路線名称を挟んでいて何のことやら。
このあたりの煩雑なところは後段でシンプル化する案を示したいと思います。
半世紀前の路線と運行
一方、半世紀前(1974年;昭和49年)は、
前記のリストで☆を付した(2) (3) (37)の運行系統は存在せず(横須賀線と総武快速線ば別々)、★を付した埼京線、京葉線はまだありませんでした。
そして、当時は103系を代表とする4扉ロングシートの電車が走る「国電区間」と、113系を代表とする3扉セミクロスシートの中距離電車が走る区間が明確に分かれていました。
国電区間は
(4) 京浜東北線・根岸線、(6) 横浜線・根岸線、(7) 南武線、(9) 山手線
(11) 中央線快速、(12) 中央線・総武線各駅停車
(22) 常磐線快速・成田線、(23) 常磐線各駅停車・地下鉄千代田線直通
中距離電車の区間は
東京始発の (1) 東海道線、(2) 横須賀線
上野始発の (17) 宇都宮線(東北線)、(18) 高崎線、(21) 常磐線
の13路線。(あと微妙な存在として総武線快速)
中距離電車については、東海道線の浜松行、高崎線の長岡行などが普通にあった時代で、元々は東京と全国各地を結ぶ列車だったのが首都圏の通勤需要にも応えるように変化してきたものと考えます。
そういう経緯もあり、当時の国鉄は国電と中距離電車の役割をきっちり分けており、国電区間は基本的に1路線は1系統のみ(例外は横浜線の根岸線乗り入れと地下鉄東西線の中野〜三鷹、西船橋〜津田沼間乗り入れ)、と現在よりだいぶシンプルだったと言えます。
複雑化の要因;○○ライン
その後、埼京線や京葉線が新たに開通して路線図が賑やかになっていきますが、複雑化の決定的な要因は2つのラインにあると考えます。全くの新線開通ではなく、既設の線路を活用して複数の路線を繋げて運行する系統に「○○ライン」の名をつけ、路線名と運行系統の名が混在することになりました。
①湘南新宿ライン
大崎から駒込の間を山手線に並行して走り、東海道線方面と東北・高崎線方面をつなぐ「山手貨物線」には、当初混雑緩和のため、高崎線や東北(宇都宮)線の列車の一部を池袋行きとして通すようになり、その後池袋〜赤羽〜大宮間の埼京線が新宿・渋谷・恵比寿まで通るようになりました。
そして、高崎線・宇都宮線と東海道線・横須賀線をこの山手貨物線経由で直通運転させる列車を設定する際に、その運行系統を「湘南新宿ライン」として大宣伝。
確かにこれまで東京止まり、上野止まりだった路線に、同じ色分けの車両で都心部のルートが異なり、かつ直通する運行系統が加わるので、違いを明示する必要があるのは理解できます。
②上野東京ライン
加えて既存の東海道線、高崎線・宇都宮線、そして100%上野止まりだった常磐線についても、東京〜上野間を一部東北新幹線の真上を通すまでして在来線の複線を新設して直通運転を始め、今度はこれを「上野東京ライン」と称して大宣伝。
ということは、これまでの東海道線、高崎線・宇都宮線、そして常磐線の列車は無くなってしまったかというとさにあらず。東京〜上野間を通らない列車は従来通り東海道線、高崎線、宇都宮線、常磐線の列車として案内されています。
「東京止まり、上野止まりではありませんよ」ということをアピールするために上野東京ラインという運行系統の名を強調しているのかも知れませんが、この直通
運転が始まってまもなく10年、常磐線以外は直通していくことが当たり前になり、直通しない列車と呼び分けるのは不自然に感じています。
呼び方シンプル化の提案
先に述べたとおり、現況の路線図は路線名と運転系統の名が混在、混合していることが煩雑になった原因と考え、路線名と運転系統の名を別立てに表現する案を考えました。
①路線名
現在の路線の呼ばれ方をベースに整理します。順番と()数字は現況に合わせます。
(1) 東海道線 <東京〜川崎〜横浜〜熱海>
(2) 横須賀線 <東京(地下)〜武蔵小杉〜横浜〜大船〜久里浜>
(4) 京浜東北線・根岸線 <大宮〜横浜〜磯子〜大船>
(6) 横浜線 <東神奈川〜八王子>
(7) 南武線 <川崎〜立川>
(9) 山手線 <東京〜大崎〜池袋〜田端〜東京>
(11) 中央線 <東京〜高尾〜大月>
(12) 総武線 <お茶の水/東京(地下)〜錦糸町〜千葉>
(17) 宇都宮線(東北線) <東京〜大宮〜宇都宮>
(18) 高崎線 <東京〜大宮〜高崎>
(19) 埼京線 <大崎〜池袋〜赤羽〜大宮>
(21) 常磐線・成田線 <品川〜上野〜我孫子〜土浦/成田>
(29) 京葉線 <東京〜南船橋〜蘇我>
(30) 武蔵野線 <府中本町〜西船橋〜市川塩浜/南船橋>
現況の18種類から14種類に減りました。
山手線、京浜東北線については以前からの慣例に従い、大崎〜池袋間の山手貨物線部分は埼京線としました。
②運転系統
運転系統の区分はアルファベット一字とし、駅ナンバリングになるべく合わせて設定しました。
<>内は現行の呼び方
Tルート <常磐線直通を除く上野東京ライン、東海道線、高崎線、宇都宮線>
Oルート <横須賀線〜総武線快速>
Sルート <湘南新宿ライン>
Kルート <京浜東北線・根岸線>
Hルート <横浜線(根岸線直通含む)>
Nルート <南武線>
Yルート <山手線>
Cルート <中央線快速(青梅線、五日市線直通含む)>
Bルート <中央線・総武線各駅停車>
Aルート <埼京線>
Jルート <品川始発含む常磐線普通列車、快速、成田線直通>
Lルート <常磐線各駅停車>
Eルート <京葉線>
Mルート <武蔵野線(京葉線直通含む)>
③表示と呼び方
列車の行き先表示やプラットホームの掲示にアルファベットを大きく表示することで、外国人観光客や不慣れな人にもわかりやすくなると考えます。
例えば、車体側面の行き先表示の例では、
湘南新宿ライン 高崎線直通 特別快速 高崎行 (2画面切替表示)
→ [S] 特別快速 高崎行 (1画面)
また、駅のアナウンスでも、
「上野東京ライン 東海道線直通 小田原行き」が
「Tルート 小田原行き」に、また、
「埼京線 相鉄線直通 海老名行き」が
『Aルート 海老名行き」
とシンプルにできると考えます。
これにより、例えば同一の線路に3つの系統の列車が来る横須賀線の武蔵小杉駅でも、系統(Oルート、Sルート、Aルートのいずれか)と行き先だけでシンプルに示すことができ、デザイン的にもすっきりすると思われます。