続・法律実務家はすべからくiPadProを導入すべし(2019年12月・iPadOS対応版)
ちょうど昨年の今ごろ、事務所ブログで「法学受験生と法律実務家はすべからくiPadProを導入すべし」なる投稿をしたところ、様々な関係者にご覧いただけたようで、初めて会う方から
「iPadの人ですよね」
「iPad芸人の先生ですよね」
とお声がけいただく機会が増えた。
自分はIT法務で食っている人間なので(いちおう弁護士である)、このままiPadの人と認識されるままでよいのか悩む夜もあったが、やってる本人が楽しいのだから仕方がない。
というわけで以下では
「続・法律実務家はすべからくiPadProを導入すべし(2019年12月・iPadOS対応版)」を全力でお送りさせていただく。
■ iPadにウェブサイトを取り込んでノート化する
前回の記事(先に目を通して頂くと理解しやすい)では、ウェブサイトをPDF化してNotabilityに読み込む方法を紹介したが、この方法だと取り込むウェブサイトによってはレイアウトが崩れてしまう。たとえば以下のサイトを前回の記事のやり方でPDF化した場合、ウェブサイトの右側が表示されなくなる。
そこでウェブサイトをNotabilityに送る場合は、スクショ(スクリーンショット)によることをおすすめしたい。
iPadスクショのやり方は、iPad Pro(2018)以降は電源ボタンと音量UPボタンの同時押し、それ以外のiPad Proや各iPadでは電源ボタンとホームボタンの同時押し、である。
(※20191219追記:iPadOSで新たに追記されたスクショの取り方として、「画面の左下または右下の枠外から中央に向けてペンですばやくドラッグする」方法もあります(→外部リンク)。@takujihashizumeさんありがとうございました!)
たとえば上記のウェブサイトをスクショすると、以下の画面となる。重要なのは上段中央部分で「スクリーン」ではなく「フルページ」を選択することだ(赤で囲んだ部分)。これで現在画面上で表示されている部分だけでなく、ウェブページのすべてをスクショできる。※この「フルページ」スクショ機能は、2019年9月に正式リリースされたiPadOS以降で実装された機能である。
次に画面右上のボタンを押すとNotabilityが表示されるので、これを押す(下図)。
その結果、ウェブページ全体のスクショがNotabilityに保存され、以下のように自由に書き込み等ができるようになる。
■ただし法令などの長文ウェブページの取り込みは「直Notability」で
ただし「フルページ」スクショは取り込めるページ量に限界があるようで、法令の条文など膨大な文章量のページの場合はスクショが途中で途切れてしまう。そこで法令などの長文をNotabilityに取り込む場合は、直Notability(造語)がおすすめである。以下では総務省法令検索サイト(e-gov)を例に直Notabilityのやり方を説明する。
①e-govにて任意の法令を検索し、右上のボタンを押す。
②以下のNotabilityボタンを押す(直Notability)。スクショスキームと異なり、膨大なページであっても途中で途切れることなく、すべてのコンテンツがNotabilityに送られる。
直Notabilityの方がスクショ方式よりも手順が少なくシンプルなのだが、直Notabilityの場合、序盤に紹介したとおりウェブサイトによってはレイアウト崩れが起きることがあるため、やはり原則はスクショ方式によるべきと考える。
以上より、ウェブページをNotabilityに取り込む際は
①スクショ(フルページ)取り込みを原則とする
②長文のウェブページ(法令など)を取り込む場合は、例外的に直Notability
がおすすめである。
■あらためてNotabilityはすごい
気になったウェブページはすべてNotabilityで一元化して管理しておくことで「あの記事どこにいったっけ」と後で捜索することがなくなる。
Notabilityのすごいところは、取り込んだウェブページのテキスト検索(OCR)のみならず、自分の手書きメモすら検索できることだ(※)。
iPadさえ持っていれば「すべての情報はiPad(Notability)のなかにあり、いつでも検索できる」安心感は、他に代えがたいものがある。
Notabilityは録音機能+音声とメモの同期機能もついており、議事録アプリとしても優れている。法律実務家がiPadを使うならば、まずはNotabilityのインストールをおすすめしたい。
(※)GoodNotesでも手書き検索はできるが、手書き検索精度がNotabilityより劣る気がしている(特に日本語)。ただし自身の筆跡のクセが原因かもしれない。
■素早く条文を参照したいときは「六法」アプリ
法律実務家がiPadに入れるべきアプリは数あれど、特に
▼Notability(ウェブサイトを含む情報一元化ノート。メインアプリ)
▼GoodNotes(Notabilityと人気を二分する。自分は自炊した本を読むのに使っている)
に加えて、
▼六法
をおすすめする。
六法関連アプリはストア内に複数存在するが、この「六法」(本当にこのままのシンプルな名称である)は以下の点で抜群に優れている。
・条文検索・ワード検索ができる
・改正前後の法令も参照できる(六法アプリ内の法令は総務省e-govにより提供されている法令を整形したもの)
・カッコ書きが薄く表示されるのでとにかく読みやすい
・条文をクリックすれば参照元の条項や下位規範(施行例や施行規則)に飛べる(レファレンス機能)
→法律ではしばしば「‥は第〇条の規定による」「‥は政令で定める」と別の条項や施行令・施行規則の参照を要する場合があり、参照元・参照先を追いかける作業はそれなりに面倒なのだが、この条文をクリックすれば参照元・参照先に飛べる機能は本当に便利である(ただしレファレンス機能は現時点で完全ではなく、クリックしても飛べない箇所も一部確認済)。
・ヌルヌル動くUI
→UIの滑らかさは、以下の動画で雰囲気を感じて頂きたい。
紙の六法は重過ぎて、普段持ち歩くのには適さない。ちょっとした相談を受ける際や出先などでは、この「六法」アプリさえ入れておけば十分ではないだろうか。加えて「六法」アプリは無料である(広告を外すには3か月で250円の課金を要するが、広告がない方が迅速に閲覧検索できるため、特に実務家には課金を強くお勧めする)。
以上のとおり非の打ち所がない「六法」アプリであるが、今後「六法」アプリを越えてきそうなサービスとして、カルアパさん(@lawyer_alpaca)が【SmartRoppo】なる法令データベースを制作されている。「六法」アプリにおいて完全ではない自動レファレンス機能を追求されようとする点などとても魅力的であり、何より弁護士実務のさながらこのような素晴らしいプロダクトを自作され、無料で公開される心意気とスキルに心から敬意を表したい。
■法律書に書き込みたい派は「紙書籍を自炊」
法律書はKindleなどの電子書籍ではなく、紙書籍で購入している。自分は「法律書に色々書き込みたい派」なので、電子書籍だと書き込みができない点がネックになるためだ。そのため現在は「紙書籍を購入→裁断+自身でSCAN(自炊)→PDF化してNotability(またはGoodNotes)に取り込む」ことで、iPad上で法律書に手書きできるようにしている(なおキンコーズ等では裁断サービスのほか、裁断した本を元通りに戻してくれる製本サービスを数百円で提供している)。もっとも自炊作業を自ら行うのはなかなかの手間であることは否定できない(なお自炊代行サービスを利用する場合は著作権に関して十分に留意する必要がある。知財高裁平成26年10月22日判決(平成25(ネ)10089)参照)。
■今後期待したい「法律書読み放題サービス」
2019年12月、法律書読み放題サービス「Legal Library」(Legal Technology社)が正式公開された。
またBUSINESS LAWYERSも、法律問題のリサーチに特化した書籍や雑誌の読み放題サービス「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」を近日中にリリース予定とのことだ。
現段階のプレスリリースからすると、LegalLibraryは法律書中心で、BUSINESS LAWYERS LIBRARYでは法律雑誌も対象に含まれるとのことなので、両者は一定の住み分けがなされる可能性がある。
これらの法律書読み放題サービスにiPadユーザーとして今後どうしても期待してしまうのは、「手書きができること」だ。現在の読み放題+横断検索サービスだけでも十分に魅力的だが、さらに本に手書きメモまで残せるようになれば、もう紙書籍は不要になるかもしれない。
ユーザー側からすれば、読み放題サービス内で電子書籍に書き込んだメモを失うことは避けたいので、「電子書籍に手書きメモ」が実現すれば強烈なユーザー囲い込みとなる。様々な障害要因があるのは想像に難くないが、iPadユーザーとしては近い将来ぜひ実現してほしいサービスだ。
■ iPadは法務を進化させてくれるツールである
iPadを本格的に法律実務に投入して約2年経ったが、情報の一元化、荷物の軽量化、検索の容易化などその便益は計り知れず、もうiPadのない弁護士業務は想像できないほどである。本エントリーが法律実務に携わる方々の一助となるようであれば幸いである。
※本エントリーは、法務系 Advent Calendar 2019の19日目として投稿したものです。昨日は有賀 之和さんで、明日はうどっぴさんです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?