オトナになるってどんなこと?
大人とは一体なんなのだろう。何をもってそう言えるのだろう。
それは年齢的なものだろうか。それともある一定の経験をすればいいのだろうか。きっと、明確な基準はないのだろう。聞く人を変えれば、人の数だけ大人像がある。
例えば、そもそも「子どもから大人になる」も正しいとは限らない。子どものようで大人びた人はいるし、大人のようで子どもみたいな人もいる。自分という一人の中に「大人の自分」も「子どもの自分」もいて、人によってどちらかが前にでていると考えることもできる。
いろいろと考えられる。だから自分なりの大人のイメージを持てばいいし、自分という一人の人間を大切にできればいいとは思うけれど。それでも考えようと思ったのにはきっかけがあった。
前から勉強を教えている小学生の男の子がいる。その子はおしゃべりで、放っておくと、勉強に限らず気になったことを「なんで?」と雨のようにあびせてくる好奇心旺盛な子だ。
ある日、その子が「僕、はやく大人になりたい」と言い出した。
なんで?と聞くと、今自分はいじめられていて、大人になればそんなことはなくなるんでしょうと言った。自分は周りと少し違った行動をしていて、それを引き合いにいじめてくるのだという。聞きながら、少年と同じ歳のころには似たようなことがあったなぁと思い出した。
自分が直接の加害者や被害者になったわけではない。でも小学校という狭い社会のなかで、なにか人と違う部分があると、のけ者にしようとしたりならないようにしたことは確かにあった。
あれは子どもだったなぁ、と思う。そのとき、僕はここに大人の一つの姿があると感じた。
以前観たテレビ番組の「オトナの!」で編集者の松岡正剛さんがぴったりなオトナを示してくれている。
大人は異質な者であることを恐れない。子どもは、いじめられたりのけ者にされるのが寂しいし怖いですよね。あえて子どもと大人を分けるとするなら、例外であろうといいと思えるかどうかだと思いますよ。
吉本ばななさんの本に『おとなになるってどんなこと?』(ちくまプリマー新書)がある。タイトルになった冒頭の章「おとなになるってどんなこと?」には、大人になることについてこう書いている。
大人になるということは、つまりは、子どもの自分をちゃんと抱えながら、大人を生きることです。
金子みすゞさんの言葉を借りるのなら、人は「みんなちがって、みんないい」はずだ。違って当たり前なんだ。周りの人だけではなく、自分の心の中でさえも色んな自分がいて、それを抱えながら生きていくのが大人であることなのだと。
「大人になりたい」と言った少年に、今はわからんかもしれんけど、変なやつもいいもんだよ。人に迷惑かけない程度に好きにやんなよと伝えてあげよう。
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