[詩] 穴だらけの写真

バニラの種を接写した
白黒写真を部屋に
ばらまくのはヤメて
鳥が部屋に侵入して
写真をついばむから　
穴だらけになってしまうから　

穴だらけの写真は
　人力で２つに裂かれたハサミで
穴だらけの写真は
　芯だけを丹念に取り出された鉛筆だし
穴だらけの写真は
　あなたが蒸した焼売の香りだから
穴だらけの写真は
　カニをきれいに磨き上げた日の後日談よりも
穴だらけの写真は
　縁にキラキラヒカル金平糖を集めるから
穴だらけの写真は
　重なり合っては遠くに貝を
　　跳ね飛ばすにしても
穴だらけの写真は
　お刺し身を丹念に焼くねと笑って
穴だらけの写真は
　冬の光を最大限にひらべったくする

薄くなりすぎた冬の光が
地上でゆっくり休めるように
蜜を滴らせながら
あの雲より高く飛んでいると
夢見ているニワトリに
そっとあなたの上着をかけたなら
穴だらけの穴から立ち上がる
だいたい美味しく焼き上げる
炎はあくまでも青白い
ラブソングの歌詞のキミ
写真には写らない

相槌を何度もうったら路地裏で

穴だらけの写真の穴だけを切り抜く
穴だらけの写真の穴だけを飲み干す
穴だらけの写真の穴だけを刺繍する
穴だらけの写真の穴だけを撹拌する
穴だらけの写真の穴だけを相殺する
穴だらけの写真の穴だけが響き合う

その響きでは
シュークリームはできないから
ありがとうとつぶやける　
あなたにだけは