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[詩] なるべくはやく

水が漏れてる音を
そっと聞いたんだね
それが丸まって
地表を割っていく
静かな断面には無数のキズが
這っている
ならばまっすぐ行くのか いや
それはただの感傷だから
草のあいだに寝転ぶ
手のひらに乗るほどの大きさの
ケモノたちが走り抜け
言葉をユラス 

食料がなくなりつつあり
つぎつぎと人が出発した
出発した人達は
角を曲がると
きちんと気をつけをして
雲に吸い込まれていった
あくまで白い雲だった
食べたのなら
赤い雨でもいいと
願ったが
雲はまたたく間に消え
残ったものたちは
草を刈り煮て体に塗りたくり
最後の力を振り絞り
そっと草のあいだに
寝転んだ
植物になるしかなかった
あの穴が来る前に

雨の匂いを
嗅いだ気がしたんだね
あれに棘が生えるよ
それは軽きものを
刺激する
軽きものは成長を
きっとヤメる
ぼうっと立っているはずだ
ならばゆっくり休むのか いや
それは一種の爆発だから
私たちは両手を水平にあげて
片足立ちになるしかない
木彫りのパンで
言葉に草の釘を打つ
穴を先に開けておく
あの穴が来る前に

はやくしなければ
はやくしなければ

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