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[詩] スコーンの作り方

今日はまあまあ寒むいから
手が冷たいからスコーンを作れるでしょう

    手をみつめてごらん、取り付ける前に  
     機械状プラスチックなきみの手を   
      安価な描写の手を

よく冷えたバターをサイコロ状にカットします
薄力粉、ベーキングパウダー、粉砂糖を合わせふるいにかけて、ボールに入れます

    鉱物が接続されている時間は  
     涙よりも重い物質でできている   
      それは過去よりも未知だ

ボールにバターを加えて指先ですりあわせて
パン粉状になるまでバターと粉をなじませます

    刺すよりも浸透させよう  
     それが液状の追憶を凝固させる掟  
      既知への解答だ

レーズンを加え、牛乳を少しずつ入れながら
ドレッジまたはヘラで切るように
まぜていきます

    乾いたものに取り出された感傷を  
     まぶすものは破滅へ   
      防波堤までも砕波する力

打ち粉をしたまな板にとりだし
なんとなく長方形にして
麺棒で厚さ2センチくらいに伸ばしては畳むを
3回繰り返します

    ループするきみの座礁船  
     太古からの無人島   
      事件しか起こらない昼

できた生地をラップに包んで冷凍庫で5分寝かせます
(冷蔵庫ではありません。注意してください。)

    もういいだろう、覗き込むのは  
     使い古されたアネクドートは   
      夜の関節を切り分ける    
       もう帰り道は見えない
        見えることはない

型で抜きます
余った生地を軽くまとめて
最後まで型抜きをします

    いっきにザクッと切断します  
     わからなくなっていくなだらかに   
      粉になってゆく古びた言葉が

オーブン(レンジ)の天板にスコーンを並べて
表面に刷毛や手で牛乳を塗ります。
これで綺麗な焼き色がつきます。
180〜200度に予熱したオーブンで
(あなたのオーブンレンジの火力に応じて
 調節してみて下さいね。)
15分から17分程度焼きます。

おいしいスコーンのできあがりは
 後ろをふり返ってはいけない
  そっちが後ろだったのか
   ならばキミの仮説も焼き上がった

忘れられた麺棒が
 溢れかえった歴史を圧縮するなら
  どうすればいいのだろうか
   正しく焼き色はついたのに

だれもしらないから スコーンは

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