(再投稿)シネマ小並館その1:『エイリアン』シリーズ(と、プロメテウス)

※はじめに投稿したのをうっかり削除したので再投稿しました。

冷やし中華(北海道的には『冷やしラーメン』)の季節ですが、冷やし中華でなく映画レビュー始めました。
自分でもいきなり何言ってんのかわかんないけど。
数ヶ月前Chromecastというものを買ってしまったがために、dTVとかの映画配信に触れる機会が多くなりすぎてしまい、気づいたらだいたい毎日映画を観てるような感じになってる今日この頃。
で、観た映画の感想はツイッターでちょこちょこ書いてはいたんだが、まとめて書いてもいいかなーと思ってここに書き始めた次第。『ライブ感を重視した連載小説』()みたく一回だけで飽きて放置するかもしれんけど。
つわけで、とりあえず第一回は直近で観た『エイリアン』シリーズと、その関連作『プロメテウス』について。
エイリアンシリーズは一応1~3までは観てたんだけど4だけ観てなくて、たまたま4をこの前観たらえらい面白かったんで、先週末に1~3までを一気に観返して、その勢いでプロメテウスも観た、という次第。


エイリアン(初代)

リドリー・スコットの出世作であり、言うまでもないがエイリアンシリーズの原点でもある第一作。
実はあとで観る2や4ほどは印象深いわけじゃない(それは改めて観返したあとでもそんな変わらなかった)んだけど、でも雰囲気はやっぱりいいんだよなぁ。『2001年宇宙の旅』の後半に通ずるような静謐さがあるし、SF映画としても抜かりない感じ。出てくるエイリアンは、まるで忍者かと言いたいくらい、静かに忍び寄ってくるのが印象的。中盤あたりで、登場人物の後ろにぶらさがってるチェーンに物音もたてず掴まってぶらぶらしてるエイリアンとか、ラスト近くで出てくる配管と一体化して隠れるエイリアンとか、ものすごく怖い。
でも個人的に一番怖かったのが、エイリアンが静かに襲ってくるところとかチェストバスターがいきなり飛び出してくるところでなく、アッシュが実は人造人間であることが露呈するシーンだったりする。ぶちのめしたらいきなり白い液体を吐きながら悶えるとか怖すぎる(2でビショップが同じように白い液体をゴボゴボ吐きながらクイーンに腹をぶち抜かれるシーンも怖かった)。
アッシュがリプリーの口に丸めた雑誌をぶちこむとこらなんてあからさまにイラマチオの隠喩だけど、人造人間の血が白濁液なのは精液の隠喩なんじゃないかと勝手に思ってる。いやま、4では女性型の人造人間も出るんであくまで1の時点では、という話なんだろうけども。
星をつけるとすれば、5つ星で3.5星くらいかなぁ。
※(星は5つが『楽しすぎて死ぬ…ッ』、4が『やっべー超たのしー!』、3が『うん、フツーに面白いね!』、2が『楽しめたかどうかはちと微妙』、1が『楽しくなかったです』、0が『おれの貴重な時間を返せ』くらい)

エイリアン2

静謐さにあふれた前作とは打って変わって、エ1でイリアンの卵があった惑星を舞台に、海兵隊とエイリアンがドンパチする映画…ではあるんだが、昔(しかも小学とか中学とかのころ)観たときの印象よりは思いのほかドンパチしてなかった。つか思ったよりも逃げ惑ってた! でもむしろドンパチ一辺倒でなくて、1にもあった『気づいたらエイリアンいた!』みたいなところを引き継いでるあたりが秀逸なのかも。
最終的に、今まで基本的に逃げ惑って追い詰められることが多かったリプリーが、ニュートを救出するのに黙々と武装し、クイーンに毅然と対峙し、猛然と逆襲するあたりはやっぱり燃えて燃えすぎて震える。クイーンとの最終戦では『このクソビッチがぁ!』って啖呵を切るくらいだものな。
雰囲気としてはかなり違うけど、SFとして、というか特撮映画としてよくできてるのは1譲り。ここからは本気で小並感になるが、ドロップシップの浮遊感とか好きだし、兵員輸送車の砲台が狭いところを走るときにレールで後ろに収納されるのとか萌える。何よりもパルスガンの『ディディディディディディディディ!!ディディディディディディディディディディディディ!!!!』って発射音は映画の効果音の中でいまだに一番好きだったりする。
とかいいつつ、個人的にはスマートガン(腕だけでなく腰のアームでも支持する大型火器)が好きだったりする。あのアームって実はステディカムのアームを改造したやつだった、というのを知ったのはつい最近、どころかスマートガンという名前を知ったのも最近。Sガンダムの『ビームスマートガン』がなんで『スマート』なのかようやくわかった。
2で個人的に好きなのが、件の惑星から脱出するときのシーン。大爆発する施設を後に、満天の星空へと吸い込まれるように飛び去ってゆくドロップシップ。おれの中では、『マッドマックス2』で宵闇の中でヒューマンガス一味の車が砂煙をあげて走り去る様子の俯瞰に並ぶ美しさ。
あとこっちのほうが有名だけどスラコ船内でクイーンと対峙すべくパワーローダに身を包んだリプリーが出てくるときのすごいケレン味。あれもやっぱりたまらん。パシリムの香港戦でジプシー・デンジャーが後光を帯びながら(?)登場するところで何かを思い出すなぁと思ったが、エイリアン2のパワーローダのシーンだったか!
2のエイリアンは前作やそのあとの作品のような『頭のキャノピー』がすごく小さく、骨格のような造形が頭部の大半を占めるデザインで、骨っぽくて強そう…ではあるんだが、個人的にはキャノピーの広いデザインが好きかなぁ。あのぬめぬめっとしてそうなのがいいよね。
星は4つくらいかな。文句なしに面白い(…というか思い入れがほんのちょっとあるせいなんだけども)。

エイリアン3

エイリアンシリーズが一つの区切りを迎える作品で、その後『セブン』で名を挙げるデビッド・フィンチャーのデビュー作。
まず結論からいうと、全作までに比べてかなりジミで陰鬱。その後の4と比べてもジミ。全編薄汚れた監獄が舞台で、基本的に生きてる女がリプリーひとりだけという禁欲的な空気。性欲をもてあました囚人にリプリーが襲われそうになるとこはあるにはあるが、いちどだけ。前作のラストでハイパースリープ入りしたメンバーはリプリー以外みんな死に(一応ビショップだけは少しだけ目覚めるけども)、しかも生き残ったリプリーも…という状況。
でも…個人的にはなんだかんだで嫌いではないのよ。OPのチラッチラッとスラコ船内での危機が描かれるところに代表されるように、わりと頻繁に短いカットが挿入される演出が頻出するんだけど、実はそういうの好き。こーゆースタイリッシュさは、すごく初期のフィンチャーらしい感じがして好き。こういうスタイリッシュというかフェティッシュな映像は嫌いじゃない。むしろ好き。
この映画のジミなところについても、淡々とした映画もわりと嫌いではないから、評価はほかのエイリアンシリーズ以外の映画と比べても特別低いわけではない。が、エイリアンシリーズの中では微妙かもしれない。
エイリアンとのバトル?はというと、今回出てくるエイリアンが犬属性なのでスプリント勝負みたいに。ステディカムと広角レンズを使ってエイリアンの一人称視点で延々と囮の囚人をおっかけるのがメイン…なんだが、これも正直ジミ。ときどき天井を走ったりしておっ!と思うんだけど、それほど緊張感緊迫感やスリルが強いわけでもない。確かにいままでエイリアン視点ってなかったから面白いところもあるんだが、奏功してるかというと微妙。
では印象深くないのかというと、そうではない。『エイリアン3というと短いカットの挿入とエイリアン視点のステディカム疾走とラストシーン』というくらい印象的だったりもする。
個人的に好きなシーンは、所長(基本イヤミなやつ)が食堂で集会?してるときにいきなりエイリアンにかっさらわれるところ。なんかあのミもフタもなさがむしろ笑える。もちろんリプリーの最後のシーンも好きだ。『ああ、これで終わってしまう』的なもの悲しさがある。
ちなみに個人的に気になるのは、所長があれだけくぎを差したのに医務の人がリプリーを簡単に出してしまうところ。そこだけはちょっとおかしい。気がする。

エイリアン4

3でリプリーが死んで、さすがにリプリーを主役に据えた続編はないだろうと思ったら、あっさりそのリプリーが蘇ってしまう…というエイリアン4。監督は後に『アメリ』で注目されるジャン=ピエール・ジュネ。
これもまず結論から言うけど、個人的にはめっちゃ好きです。エイリアンシリーズの続編として見たバヤイにはどことなくちぐはぐなんだろうけど、そんなこたァ知ったこっちゃねえ。面白いものは面白いんだよ。
…まあ、おれもアメリで度肝を抜かれて以降意識的にこの人の映画を観てるとこがあるので、ジャン=ピエール・ジュネびいき故に、ってところがあるのは否めない。でもそうでなかったとしても、たぶんこの映画を気に入るだろうなとは思う。
(ちなみにこの映画を観る前に"ミシェル・ゴンドリーとクリストフ・ヴァルツの無駄遣い"こと『グリーン・ホーネット』を観てたせいでまったく期待してなかったんだが、極めてジャン=ピエール・ジュネの映画らしくてほっとしましたとさ。暖色寄りの画とか、人物の撮り方とか、人物の顔あたりから上か下に視点をずらすカットとかすごくジャン=ピエール・ジュネですよねー)
前回の最後で胸を突き破ったクイーンともども溶鉱炉に身投げして死んだリプリーだが、監獄惑星に冷凍保存されてた(クイーン寄生当時の)血液から200年ぶりにクローニングされたのが今回のリプリー。
でもただクローニングされただけでなく、このリプリー、やたらとキャラが立ってるんですね。 個人的には、3までのリプリーは『わりと心身ともに強いほうに属する人間で、芯が一本とおってて、あまつさえエイリアンとは腐れ縁』てくらいで、そんなにキャラの立った印象はなかった。でも4のリプリーは、大ざっぱにいうと『バケモノ』。
クローニングの過程においてエイリアンの要素が遺伝子レベルで入り込み、異様に高い身体能力と強酸性の血液と肝の据わりよう(?!)を併せ持った、という設定で、その時点でバケモノではあるんだが、所行もいままでのリプリーと比べるとかなりバケモノである。
たとえば『フォーク』を『ファック』って言ったりするわ、投げつけられたバスケットボールを片手でガッとつかんだ上に後ろ向きでバスケのゴールに投げて一発で入れるわ、エイリアンの死体から舌(あのちっちゃい口のついたアレ)を力ずくでひっこぬいて『はい、記念にどうぞ』ってプレゼントするわ、鉄を拳でぶち抜いた上で強酸性の血でケーブルをショートさすわ、という感じ。
リプリーを演じるシガニー・ウィーバーって、個人的にはなんとなく顔の作りとかが(3までのリプリーとは違って)微妙に酷薄な感じだよなーって思ってたんだが、4では見事に『酷薄なリプリー』を演じてるように思う。クローニングされてるのになんで3までのリプリーより老けたんだよ!ってツッコミもあろうけど、シガニー・ウィーバーの酷薄感が歳を重ね、研ぎ澄まされたことでより際だってて、個人的にはすごいツボ。
あと、4のリプリーってエイリアン要素もあるからなのか、なんとなくなに考えてんだかわかんないとこがあるのもいい。劇中では『生化学的な理由で多少自閉的な性向になった』とされてるが、なんか自閉的というよりは動物っぽいのかもしれない。中盤あたりの水中戦で、凄むエイリアンみたく首を無表情で左右に傾げてみせるシーンがあるが、なんかそういうの好き。いままでの、知性理性とある程度の力で生きてきたリプリーとは若干反対に近い、動物的な感覚と『勘』で生きるタイプの一、という雰囲気がある。
そんなバケモノじみたリプリーに代わって、いままでのリプリー的な立ち位置に立ったのは、ウィノナ・ライダー演じるコールだったんじゃないかと思う。割とまじめでまともなキャラで、芯の強さも秘めている。他の主人公一味のなかで若干浮いてて、ある使命を帯びてるところもリプリーになんとなく近い。

そんなコールの一番印象に残ったシーンは、食堂で何の前置きもなしにボクシングのグローブをはいてマグカップの酒を飲もうとしてこぼすシーンだったりする。本気で意味のわからないシーンだが、あそこはなんかすごい萌える。
意味の分からないついでにほかのキャラのヘンなシーンも挙げると、ジョナーが逆さ吊りになってブリースとクリスティを援護したあとで突然蜘蛛に使って銃を撃つシーンと、ラストで危機を脱したところでいきなりジョナー♂がブリース♂の唇を奪う(アッー!)ところがわけわかんなくていい。
…ってすごい勢いでリプリーのギャラについて書いたけど、もちろんそれ以外にも面白いところはある。いままでのエイリアンもそれなりにグロかったんだけど、今回はそれ以上にグロい。人体破壊描写がけっこー直截。『数人が乗った状態の脱出艇にエイリアンが侵入して、窓にダバーッと血糊&肉片が飛び散る』とか『背後から頭部をエイリアンの舌で貫かれたあと、なぜか後頭部から自分の脳味噌のかけらを取り出してしげしげと見つめる』とか『エイリアンの変種が無邪気に人の頭を押しつぶす』とか。
あと中盤で出てくる『クローニングの過程でできたクローンリプリーの失敗作(=奇形)』もなかなかグロい。クイーンとの分離がうまくいかず、人間(リプリー)とエイリアンがキメラのように混ざってしまった『7番目までのリプリー』の様子はなかなか凄惨。しかもひどい状態で生かされてるのも一人いたりして結構クる。泣きながら『産まれなかった(&悲惨なかたちで産まれた)自分』を灰に帰すリプリーの、ここまで4の劇中でうかがえなかった感情も相まって印象に残る。
なんか気づいたら4についてリプリーのことばかり書いてるけど、それ以外のシーンもよくね、なんかトリッキーなシーンがそれなりに目立つ。特に『チェストバスターに自分の胸だけでなく別のものも一緒にぶち抜かせる』という奇想天外なシーンはびっくらこいたし、なにより最後の敵を倒す方法、というかそのビジュアルがものすごくヘン。たぶんエイリアンのナンバリングシリーズの中では一番ヘンな倒し方じゃないか。あの『小さい穴からビルビルビルビルッて体の一部か出てる』画ってものすごく可笑しいwww
細かいところでは若干気になるところもある(エルジンが死ぬとことかクリスティが身投げするところとか)んだけど、個人的にはすごい好き。星は4ですかね。

プロメテウス

初代に登場したスペース・ジョッキーのシーンをモチーフに作られた、初代の監督リドリー・スコットによる作品。
ただ、舞台のモチーフ(骨っぽい造形の建造物に佇む砲台のようなものとオペレータと思われる異星人、そして冠状の宇宙船)こそ同じではあるが、エイリアンとは直接つながらない、ifの世界というかパラレルワールドみたいなもののよう。
そういえば某所で『エイリアン2以降は1の二次創作的な側面が強い』という見解をみたことがあるが、この『プロメテウス』も『リドリー・スコットによるエイリアンの二次創作』的な位置づけなんじゃないかと思ったり思わなかったり。
ストーリーとしては、人類の起源があると思われる星に科学者とかをあつめたチームが出張ってって、そこで遺跡と異星人の遺体と謎の液体を見つけたけど、異星人の頭がパーンなるわ人が溶解しかけるわ先天的に不妊のはずの主人公の女がカレシさんとのセックルから半日くらいしか経ってないのにでかいイカを帝王切開で産むわ謎の液体でミミズがちんこみたいな謎の生物に進化するわ死んだと思われた富豪が生きてたことが発覚してでも結局殺されるわ懇ろになったカレシさんを殺した原因を作ったヤツと主人公がどっか行っちゃうわしまいにゃ異星人の生き残りからエイリアンっぽい(でも似て非なるナニカ)が腹を突き破って生まれるわ、という感じの話。
上のストーリー解説は酔った勢いでガーッと書いた感はあるけど、なんかこの映画、オハナシとしてはなんかガチャガチャな気がする。ストーリーの流れがあってそれに添う感じでなく、状況があって、断続的にイベントがあって、みたいな。
初代エイリアンと同じ題材を違う味付けと調理法で料理したのに、なんか盛り込みすぎて味がぼやけちゃったなー、という感じがする。
とはいえ、基本的には画がきれいだし、スリラーとしてはフツーに楽しめる映画にはなってるんじゃないかな、とは思う。もちろん初代エイリアンを観てると『おっ、ここでアレがでるのか』ってちょっと面白くなる。でもエイリアンシリーズを観てなくても、それなりには楽しめるような気がしないでもない。
個人的に気になったところは、自動手術装置が『生物学的に男性』の人間の使用しか想定されてない、というのがあまりにもおポンチだと思う。設定ではまだあまり世に出てない代物らしいので、あくまでベータ版な開発途中機を搭載してる、という可能性もあるんだけど、それでも『生物学的に女性』の患者をある程度想定してないってのはやっぱりおポンチな気が。
あと、アンドロイドのデヴィッドがマイケル・ファスベンダー(どうしてもおれ的には『フランクの中の人』という印象しかないwww)でイケメソなのにも関わらず、チャーリーの死因を作っといてチャーリーと懇ろになってたショウを何も言わないまま助けてそのまま二人(というか一人と一機)で旅に出てしまうあたりがもにょる。アンドロイドだから人間的感情に若干欠けてるというのはあるし、自分の意志ではなくボス(?)のけしかけによるものでもあるんだが、なにも言わないまま、というのは…
もっともプロメテウスは続編の企画もあるようなので、そこでなんかなる可能性もあるんだろう。
星的には5個中3個だろうなぁ。

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