ヤマセミの歌 その3「キタキリ雀と森の動物たち」
ヤマセミが危険を感じたときの身の隠し方、安心しているときの様子、雨の日と好天の日の魚の捕らえ方などが少しだけ解ったような気がしてきた。
当初はこっちの姿をチラッと見ただけで、お化け屋敷に痩せ我慢して入ってしまった人がお化けと遭遇した時のよう。そこまで恐怖に満ちた態度しなくてもと言いたくなるような驚きかたで飛び去ってたヤマセミの態度が次第に変わっていった。「今日もいるのかよ〜。邪魔すんなよ」って感じ。
きたきりスズメを続けて2年ちょっと経っていた。きたきりスズメ(洗濯は適当にしていた)はヤマセミ以外の野鳥にも結構受け入れるようになっていた。大胆だったのがコジュケイ。川岸の低木と草地のなかに立っているとキョ、キョ、キョと鳴きながらコジュケイが近づいてきた。足元まできてヒョイと靴の上に乗ってすぐ「ピッコホイ、ピッコホイ」。マジ。野生に認められた感じで結構感動ものだった。
臆病者だが好奇心は野鳥たちの中でも上位に入る「ウグイス」。茂みに中で休んでいると「ここで何にしてるの?ねえ。ねえ〜」。結構しつこくあっちにいったり、こっちに来たり。うっとうしいというのは勝手な解釈かも。「ここは我々の縄張り、早く立ち去れ〜」が本音かな。
秋の草むらの中でちょっと厄介なのがバッタ。特にオンブバッタのフン飛ばし責めはきつい。臭くもないし、顔なに付着するわけでもないが、痛い。超ハイスピードで飛んでくるので避けられない。大きさはゴマ粒より少し小さいフン。お尻から出てきたフンを後ろ足で蹴り飛ばすのだ。実に見事な処理方法だが当たると痛い。草むらにはオンブバッタが沢山。あっちこっちからフンがぶっ飛んでくる世界があった。
足の上でのコジュケイの囀りは強烈だった
ヤマセミの日常が少しずつわかってきた。早朝の水浴びと(洗顔を兼ねて?)は欠かさない几帳面さは見習いたい。羽を整えた後の獲物(魚)めがけて水中のダンビング。せっかく整えた羽根がびしょ濡れ?に「ならない」早朝の朝風呂でしっかりと油でコーテーングした羽は見事に水をひじき飛ばしている。朝風呂の意味に納得しちゃう。次は昼食までお休み。昼食を取ったら次は夕食まで休憩タイム。空き時間が結構ある。この間にヤマセミの古巣探しに4キロ四方をくまなく歩きまわった。
ヤマセミは土の崖に自分で巣穴を掘る。約13年間歩き回って見つけたヤマセミの巣穴は82個。毎年数は増えている。古巣を使うこともあるが多くはない。巣穴は一回のシーズンに3〜4個掘る。本命は一つ。他はダミー(偽物)だ。本命以外はトンネルの長さは短い。
ヤマセミの古巣は他の生き物たちも利用している。チョウゲンボウも積極的に利用している仲間だ。
ヤマセミは結構こだわりがあるようで崖の高さが3メートル以上(観察地の場合。他の地域はわからないけど)無いと無視。その点カワセミの適応力?は凄まじい。高さ50センチ程の田んぼの畦、山芋(ジネンジョ)堀の穴の側面にも巣穴を掘って子育てしていた。ヤマセミよりも食物もレパトリーが広いが巣作り場所もヤマセミのようなこだわりがないようだ。
捕らえた獲物は嘴に挟んで止まり場などの枝や岩などにたたきつけて食す行為はヤマセミと同じ。なんでも食べちゃえ〜っていうのは日本には暮らしてはいない「ワライカワセミ」に似ているかも。ワライカワセミ類はモグラやヘビなども食してしまう。
アメリカザリガニは結構好んで捕らえているカワセミ
ヤマセミが子育てをする巣穴はほぼ垂直な土の崖に横穴(トンネル)を掘る。トンネルの大きさは親鳥がやっと入れる程度で12〜16センチの直径。トンネルの奥にはかなり広い部屋(産室)があって、ここで卵を温め、ヒナを育てる。
巣穴掘りの条件として崖の土質がある。産室には巣材のようなものは一切運び込まない。ヒナのフンは水のような便なので、産室のフカフカの土がスポンジのように吸い取ってくれるので、そのような土質の崖が巣穴作りの条件だ。
巣材として魚の骨を使う説が語られているが、観察地の巣穴では一切そのようなことはなかったのが残念。仮に魚の骨があったとしたらそれってペリット(消化できなかった物を吐き出したもの)ヤマセミの親鳥で15センチ程の魚を10〜15匹食べた後に「ぺっと」吐き出す。ほとんどが魚の骨と鱗。
つづく
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