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ラテン・アメリカ旅行記 - 第11回 (トラブル①)

今回は、旅行中に生じたトラブルなどについて書こうと思います。旅行の醍醐味の一つは、トラブルに巻き込まれることだと思っています。要は、予期しなかったことが起きたとき、五感を研ぎ澄ましてどうにか切り抜ける、というあの感覚が好きなのです。これまで書いた旅行記において、出発の前に準備しておくべきことはしっかり準備したことを明らかにしましたが、どんなに準備してもトラブルは起きます。そこが面白い。

今回も訪問した順に沿って書いていきます。やや長くなったので、2回に分けたいと思います。


Sosúaでの洗濯物ピックアップ

Dominican RepublicのSosúa滞在中に洗濯物をクリーニングに出したのですが、ピックアップの時間について店との間でミスコミュニケーションがあり、危うく予定どおりに回収することができなくなりそうになったという件です。

旅の開始から数日が経ち、洗濯物が溜まってきたので、Google Mapで近所のクリーニング屋を探し、以下のLaundryが評判が良かったので、ここにお願いしてみました。

午前中にクリーニング屋を訪れ、料金等について話しましたが、やり取りは全てスペイン語でした。ピックアップの時間について、当方の理解だと「その日の4 pmになったら洗濯が終わっているので、それ以降に来い」と言っていたと思ったのですが、向こうの言い分だと「4 pm(に店を閉めるからそれ)までに取りに来い」ということで、誤解があったようです。今になって思うと、このコミュニケーションの本来の趣旨からすると、2つの異なる時刻(①いつ洗濯が終わるか=いつからピックアップ可能か、②いつ店が閉まるのか=いつまでにピックアップする必要があるか)が登場するはずなので(コミュニケーションの媒体がスペイン語だとしても、獲得すべきポイントは押さえられるはず)、特定の時刻1つが会話の中に出てきただけで満足してはいけなかったのですが、確認が甘かったです。

ということで、私は、自分の理解に従って、4時50分くらいに取りに行ったのですが(←4時から50分も遅らせるというのは迂闊だったという他ないですが・・・)、残念ながら店は閉まっていました。翌日の営業時間になってから回収すればいいようにも思いますが、実は、翌日朝8時のバスでSanto Domingoに戻る予定だったので、翌朝の営業開始時間次第では、バスに乗り遅れ、その後の旅程に支障が生じる可能性があるという状況でした。

なるべくならその日中に回収したい、それがダメなら翌朝の営業時間を確認した上で朝一番で取りに行きたい(バスに間に合わないのであれば、その後の旅程は別途調整)ということから、その場でクリーニング屋へのコンタクトを試みました。店の中には誰もいないようだったので、店の向かいにある飲食店に駆け込んで「なんか閉まっちゃったんだけと、連絡先知らない?」という感じで聞き出しました。あと、この飲食店の人が少し英語を理解している感じがしたので、「こういう次第なんだが、代わりにクリーニング屋とスペイン語で話してくれんか?」とお願いし、引き受けてもらいました。で、連絡先もゲットしてSMSでもクリーニング屋と連絡できるようになったのですが、こうなれば翻訳アプリも使えるようになるので、スペイン語でのコミュニケーションも問題ありません。本来翌朝8時オープンの予定だったようですが、なんとか頼み込んで7時30分に開けてもらうことになりました。

翌朝になってみると、7時30分どころか7時には「もう取りにきていいよ」というSMSが入ったので、すぐに洗濯物を回収し、そのあと無事予定どおりのバスに乗ることができたという次第です。その後の旅程には影響なかったです。

Venezuelaの国境紛争

このエピソードは、旅行に出発する前から始まっていました。何かと言うと、Venezuelaが、隣国Guyanaとの間で国境地帯(Essequibo)の領有を巡って紛争を始めた(正確に言うと、紛争の歴史は既に長かったのですが、ここに来て再燃させた)、という件です。この件が明らかになった時点では、VenezuelaのCanaimaに行く計画を立てていたのですが、Canaimaは比較的国境に近い場所にあり、国境紛争が再燃している中、同地域に行くのが得策かどうかという判断を迫られました。そんな中、可能なチャンネルを使って情報収集に精を出し、結論としては、リスクはそこまで大きくないと評価し、行く決断をしました。ただ、同行する予定だった友人は、紛争のリスクを鑑み、ドロップしました。旅行に出発してからも紛争の状況をフォローしていましたが、Venezuelaに入国する直前に、紛争当事国の間で平和的解決に向けた合意が得られたこともあり、比較的安心した状況でCanaimaまで行くことができ、かつ、無事に帰ってこられたという次第です。

時系列

以下が時系列です。

2023年12月3日 Venezuelaにて、Essequibo地域(現在Guyanaが実効支配している)を併合することに係る承認を求める国民投票が行われ、可決される。
12月4日 Wall Street Jounalの記事により上記事態を把握。[1]
12月4日-8日 在Venezuelaの友人(弁護士)及びCanaima旅行のためにリテインしていた旅行業者にそれぞれ相談する。その上で、同行者(米国所在の友人)と今後の方針につき協議。業者にキャンセルポリシーを確認したところ、旅行期間(12月21日-24日)が間近に控えているため、その時点では既にRefund不可と主張される。この主張を前提として、ギリギリまで経緯を見守ることにする。[2]
 また、本紛争を巡る歴史や政治情勢についてデスクトップリサーチにも着手。歴史的にはだいぶ前からある紛争(1966年のGuayanaのUKからの独立時まで遡る)のようであり、今回改めてVenezuela側(現職のMaduro大統領)が再燃させたのは、①比較的最近発見されたEssequibo沖合の油田の存在や、②大統領による政治的なアピール(国内の不満を逸せる)といった意味合いが強く、実際の軍事衝突リスクは少なそう、との感触を得る。[3][4]
12月9日 米国を出発。まずはMexicoへ。
12月11日 同行者がドロップを決定。
12月14日 Venezuela, Guyanaが、Saint Vincent and the Grenadines(カリブ海にある国)で会談し、本紛争を平和的に解決することについて合意。[5][6] これを受けて、もはや軍事衝突リスクはnegligibleになったと判断。
12月19日 Caracas到着
12月21日 CaracasからCanaimaへ移動。
12月24日 Canaima観光を終え、Caracasに戻る。
12月25日 CaracasからLima, Peruに移動し、無事Venezuelaを脱出。

深掘り

以上のとおり、最終的には問題なくCanaima観光を楽しむことができ、その後は特に本紛争をフォローする差し迫った理由も無くなったのですが、油田の発見などエネルギー関連のトピックも関係していることから、引き続き興味が尽きないところです。以下のNew York Timesの記事によると、今日の領土紛争の背景には、冷戦期のCIAによる工作もあるとのことです。さながらスパイ小説のようであり、興味をそそられます。

また、本記事執筆にあたり、現地の友人に最新状況を聞いてみたところ、Essequibo関連では大きなアップデートはないようです。むしろ、本年7月に予定されている大統領選挙がちゃんと適正に行われるかに関心が集まっているようです。[7] Venezuela情勢は、エネルギーをめぐる地政学的なリスクにも影響がある話なので、引き続き目が離せないところです。

Cusco, Uyuniで悩まされた高山病

高地で数日過ごすという経験が人生初めてだったのですが、高山病には想像していた以上に苦しめられました。

最初に遭遇したのが、Cuscoです(標高3,399メートル)。一般的に、高山病の対策は現地入りする前に薬を飲んでおくなど事前に準備しておくべきとされますが、自分は、高山病を舐めていて、「高山に来たときに体がどんな反応をするか、変化を楽しみたい。もし薬飲んで、何にも症状を感じなかった場合、薬のおかげなのか、自分の先天的な耐性なのか、判別できなくなってしまうので、飲まないほうがいいだろう。」などと呑気に考え、薬の類は一切飲みませんでした。しかし、Cuscoに到着して1-2時間で酷い頭痛が始まり、自分の判断を後悔しました。それでも日中は、息絶え絶えになりながら、観光を続けました。本当は、運動しない方がいいと思うのですが。宿に戻って、観念して薬を飲もうとしたところ、よく見ると自分が持ってきたのはただの市販薬、もっというとサプリの類だったことに気付きました。真の高山病対策のためには、医者に薬を処方してもらう必要があります。今さらどうしようもないので、地元の人がよく服用しており、高山病に効くと言われているコカ茶・マテ茶をひたすら啜り、ときには葉っぱも齧りながら、回復を待ちました。結局、食欲不振・頭痛といった症状はCusco滞在中はずっと続き、その翌日にMachu Picchuまで下って行き、そこで1泊したくらいでようやく解放されたという感じです。[8][9]

次に高山病と向き合うことになったのが、Boliviaの国立公園地帯を移動しつつUyuniを目指していたときです。このときは2回目だったので覚悟は決めていたのですが、やはり苦しめられました。Uyuniは、あんまり高山病のイメージはなかったのですが、3,656メートルなので実はCuscoより標高高いです。また、このときは、ChileのSan Pedro de Atacamaから陸路でBoliviaに入るというルートであり、車に乗りながら徐々に高度を上げていくというコンテクストであり、Cuscoのときのように急に高所に行くのとは違ったので、体が高地に順応しやすいのではないかとも思いましたが、実際は全く関係なく、普通にめっちゃ辛かったです。ただ、このときは、思い切って普通の頭痛薬(イブプロフェン)を飲んでみたのですが、これがかなり効きました。

なお、今回の旅で訪れた都市のうち他にも高所に該当するものとしては、La Paz(3,650m)、Quito(2,850m)があります。しかし、La Pazについては滞在がわずか3時間程度だったためか全く高山病の気配はなく、Quitoについては所詮2,000m台だからか全然気になりませんでした。



[1] Mary Anastasia O’Grady, "Venezuela Covets Guyana’s Oil Fields," Wall Street Journal (Dec. 3, 2023 6:11 pm ET) https://www.wsj.com/articles/venezuela-covets-guyanas-oil-fields-land-dispute-referendum-827462e1?st=rlde8rkjhptgbf6&reflink=desktopwebshare_permalink

[2] 仮に、この時点で、同行者・私いずれもキャンセルする腹づもりだったら、業者宛にもう少しゴネてもよかったのですが(そもそもRefundの可否に関する先方の主張に法的根拠があったかも不明だったので)、実際は、私の方は、紛争が重大に悪化することがなければ予定どおり参加するつもりでした。そうすると、同行者としては、業者と私との関係を悪化させるのもよくないだろうと考えてくれたみたいで、大人しくRefund不可という主張を受け止めてくれたみたいです。

[3] Kejal Vyas, "Venezuela Ramps Up Threat to Annex Part of Guyana," Wall Street Journal (Dec. 5, 2023 11:00 am ET) https://www.wsj.com/world/americas/venezuela-ramps-up-threat-to-annex-part-of-guyana-7ad621e1?st=pkpnam4flvqcqhl

[4] なお、日本の外務省からの情報もフォローしていましたが、今回の件に関しては、一貫して特に危険情報は出されていなかったようです。Venezuelaに関しては、そもそもこの件の前から「渡航中止勧告」というステータスだったようであり、そこから更にエスカレートさせるほどではないという判断だったのかもしれません。

[5] Kiana Wilburg, Vivian Sequera and Julia Symmes Cobb, "Guyana, Venezuela agree to not use force or escalate tensions in Esequibo dispute," Rueters (December 14, 20239:59 PM CST) https://www.reuters.com/world/americas/venezuela-guyana-presidents-meet-amid-territorial-dispute-2023-12-14/

[6] ただし、Venezuelaは従来から国際司法裁判所(International Court of Justice)での解決には否定的であり、この時の会談でもそこは譲らなかったようです。

他方で、GuayanaはICJでの解決を求めており、ICJでの手続を始めていたようです。当該手続の中で、ICJは2023年12月1日付で以下のリリースを出しています。この書面は、本紛争についての法的側面からの解説という意味では最も正確でありかつup to dateではないかと思われます。

https://www.icj-cij.org/sites/default/files/case-related/171/171-20231201-pre-01-00-en.pdf

[7] 対立候補者から資格を剥奪する動きがあるなど、話題に事欠きません。

[8] 基本的に健康な人生を送っているのですが、今回の辛さに匹敵するものとしては、過去に竹芝から小笠原諸島の父島まで24時間超フェリーに乗ったとき、船酔いに苦しめられたのが想起されます。

[9] 同じようにMachu Picchuへ行く道中でCuscoに寄って、高山病に苦しめられるというケースは多く見られるようです。

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