稲穂健市の知財コソコソ噂話 第4話 宗教団体と知財
10月13日、文部科学省は世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)に対する解散命令を東京地裁に請求しました。2022年7月に起こった安倍晋三元首相銃撃事件以降、それまでタブー視されてあまり取り上げられてこなかった宗教団体に関する報道が増えたように思います。
それでは、宗教団体と知財の関係はどうなっているのでしょうか? 実は「特許情報プラットフォーム」(J-PlatPat)を使っても、詳しく調べるのは容易ではありません。というのも、宗教団体の名称が多岐にわたっているだけでなく、法人化されていない宗教団体が存在することに加え、宗教法人であっても出願人名・権利者名に「宗教法人」を含まない公報が多々あるからです。たとえば、旧・統一教会は3件の商標権を持っていますが、いずれも商標権者として「世界平和統一家庭連合」のみが記載されています。
このように宗教団体の知財を網羅的に調べることは困難ですが、とりあえず出願人名・権利者名に「宗教法人」を含む公報をJ-PlatPatで検索してみたところ、2023年10月24日現在で、特許・実用新案で96件、意匠で97件、商標で2309件がヒットしました。
特許・実用新案については、8割以上が仏教系の団体によるもので、墓地、仏壇およびそれらに関連する備品類が目立ちます。意匠についても、やはり仏教系の団体によるものが多く、墓石、納骨箱、塔婆、仏壇、位い 牌はいなどに関するものが目につきました。また、神道系の団体によるものは、大部分がお守りに関するものでした。もっとも、特許関係では、浄土真宗本願寺派の「個人データの入力システム、出力システム、管理システム及び個人データの管理方法」( 特開平10-240750) など、IT関連の出願もあります。
宗教とは関係が薄い内容も少なくありません。創価学会の「会場用スクリ-ン付き歌集」(実全昭58-115789)や天理教小滝橋分教会の「ホログラム立体像書籍」(実開平06-067054)などは、集会や教育といったように、その使われ方が想像しやすい一方で、立善寺の「蜜蜂保護装置」(特開2020-184902)、金剛禅総本山少林寺の「動物調教方法」(特開平09-016804)、カトリック・イエズス会の「三角関数計算盤」(実全昭56-037144)など、宗教とのつながりがイメージしにくいものも見つかりました。
商標については、前述したように、特許・実用新案・意匠と比べて、圧倒的に件数が多くなっています。宗教団体がさまざまな商品・サービスを展開していることを考えると、それも当然のことといえるでしょう。
なお、全国各地でご当地キャラがあふれ返っていますが、宗教団体も例外ではないようです。歴史の長い平安仏教ですら、金剛峯寺(真言宗)の「こうやくん」(商標登録第5297742号)、天台宗の「しょうぐうさん」(商標登録第5539402号)などのキャラクターを展開しています。旧・統一教会も「MIRAIOH」(商標登録第6237226号)というライオンのようなキャラクターを商標登録しており、関連団体が着ぐるみまで作っています。
かつては厳格なイメージの強かった宗教団体のブランディングも、ソフト路線に向かっているようです。
『発明 THE INVENTION』(発明推進協会)2023年12月号掲載