荒唐無稽な次世代革新炉開発計画
「次世代革新炉」のスケジュール
第5回GX実行会議(2022年12月22日)の資料を眺めていたら、「次世代革新炉」のスケジュールが書かれていました。新型炉開発に、日本は全て失敗してきたので、よくこんなこと書くなあと思いながらながめてみました。
ちなみに「次世代革新炉」は、いろいろなタイプの原子炉を雑多に含んだもので、なにか具体的に「次世代革新炉」というものがあるわけではありません。
荒唐無稽の極めつけ
資料にはいろいろ書かれていて、ほとんど実現性がないのですが、極めつけの荒唐無稽な計画が書かれていて吹き出しそうになりました。それは「核融合炉」のスケジュールです。
なんと、核融合炉の原型炉の概念設計を2025年までに、また詳細設計を2030年までに終えて、2030年から「製作・建設」するというのです。
最近、アメリカの研究所で、投入エネルギーより得られたエネルギーが多くなったという実験が、「画期的」として紹介されました。
環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也さんの記事にあるように、これは数ナノ秒(1ナノ秒は10億分の1秒)の反応でしかありません。「燃料」(重水素とトリチウムの凍結金シリンダー)を製作するエネルギーとコストを考えると、マイナスが大きすぎるのです。
原子炉の研究開発プロセス
原子炉は、実験炉→原型炉→実証炉→商業炉の順で開発されていきます。
「原型炉」というのは、核反応を確かめる「実験炉」の後に建設されるもので、発電をともなうものです。この「原型炉」を経て、「実証炉」(経済性を確かめる)になるわけです。
当然ながら、核融合反応を長期間持続させることにどの国も成功したことがありません。つまり、現段階では、原子炉開発のプロセスでいうと「実験炉」か、あるいはそれ未満のものでしかありません。
ところが、岸田首相が開催したGX実行会議では、2030年に「原型炉」を製作・建設するとしたのです。このスケジュールは荒唐無稽としか言いようがありません。(ちなみに国際的な研究開発プロジェクトとしてITER計画があり、実験炉が2007年から建設されています。運転開始は2025年とされています。)
一体なんのためにGX実行会議に「有識者」が参加しているのでしょうか。このGX実行会議に参加している「有識者」は「有識者」の名に値しないのではないかと思ってしまいます。
政府の文書で書かれた以上、政府は、今後国家財政から資金を投入していくでしょう。GX実行会議で示されたこのスケジュールは失敗し、投入したお金は全部無駄になることが予想されます。
※冒頭の写真はUnsplashのHal Gatewoodが撮影した写真を使用しました。感謝いたします。
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