「エネルギー一家の家族会議」と化している資源エネルギー庁の審議会

吉岡斉氏が遺した著作は名著揃いです。

第6次エネルギー基本計画が策定され、今回もまた、経済産業省資源エネルギー庁の下におかれた総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が議論の場になりました。

そして、議論をみていると、またしても「紙芝居」が繰り広げられていました。

吉岡氏は、こうした資源エネ庁の審議会を「エネルギー一家の家族会議」と称しました。とても味わい深い文章です。

「そこでは家長(資源エネルギ―庁)が、家族構成員たち(エネルギー関連諸業界の代表者や代理人)の意見をひととおり聞き、その上で家族構成員の皆(石油業界、電力業界、ガス業界等々)が納得してくれるような裁定を下すという、家族会議のアナロジーがよく当てはまる様式がとられている。この様式の根底にある認識は、国家政策は国民や人類の公共益のためではなく、「エネルギー一家」のためにあるという認識に他ならない。」(吉岡斉『脱原子力国家への道』岩波書店、2012年)

「何が公共利益に最もかぬ政策上の選択肢であるかについて、必要な情報を全て揃えた上で徹底的な論争によって結論を出す場ではなく、事務局をつとめる官庁が、業界関係各委員(その多くは職指定で指名される)の主張を聴取した上で、その全てに配慮した報告書案をまとめ、各委員の同意を得るための場なのである。」(吉岡斉『脱原子力国家への道』岩波書店、2012年)

今回もまさにこのような議論が繰り広げられました。ごく例外的に、1、2人、「エネルギー一家」からすれば異端の人も加えられますが、だいたい1,2人と決まっています。今回もまあそんなところでした。

環境危機の時代、このような「紙芝居」でできあがった政策では、全く対応できません。羅針盤を失った船のように漂流することになります。

今回、河野大臣のもとで「再エネタスクフォース」が設置され、エネルギー基本計画に対する提案がつくられました。これは非常に例外的なことで、こんなことが行われたのは初めてだと思います。

再エネタスクフォースの提案は、日本のエネルギー政策の重要論点について具体的改革提案を含むものでしたが、これが「エネルギー一家」にとってはあり得ないような内容だったようです。

「エネルギー一家」のメンバーが、いかにこのタスクフォースに対してある種の怒りをもっているかは、7月30日の、基本政策分科会第43回会合を見るとよくわかります。言い方は丁寧ですが、ほとんど罵詈雑言に近い内容です。動画がある間にみるとよいでしょう。

結局できあがった「エネルギー基本計画」は欠陥だらけのものになっています。このことについては、『環境と公害』第51巻2号(10月発売)に寄稿しました。ぜひ、お読みください。



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