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くも

最近空を見上げると印象派の画家が描いたかのようなくもが漂っていることが多い。モネの絵によく似ているし、フランスで実際にみたくもと瓜二つだ。ぼくの中のくもの原型とでも呼ぶべき映像が西欧へと心を引き戻す。

イタリアは未だ多くの課題を抱えているとはいえ、精神科の病床数を大幅に削減し、地域精神保健の拡充に一定以上の成功を収めた国だ。中でも北東部の町、トリエステでは、全国に先駆けて精神病院を閉鎖し、長い長い時間のなかで雇用の創出まで含めたcommunity-basedなケアを継続している。ここで出会った人たちの少しはにかんだようなシャイな笑顔が出会いから1年近くたった今でも忘れられない。

僕がみたいのはこの顔なんだなと思う。エネルギッシュで活動的でぐいぐいとみんなを引っ張っていくような人も魅力的なのかもしれないけれど、いろんな悩みがありつつも自分の弱さを知っているという強さを持ち合わせたあの笑顔。そんな境地に達することって本当に難しい。だからこそ人のつながりが大切になる。人は守られているという感覚がなければ、あんな笑顔にはなれないのではないだろうか。

コロナ禍では思考がシンプルになる。何が大切で、何を守りたいのか。トリエステの人たちの生活をヒントに、この1年近くずっとやるべきことを考え続けてきた。もちろん多くの人に助けてもらいながら。人に納得してもらうためには、気持ちと論理のバランスが大切なのかなと最近よく思う。論理をもって制度を設計し為政者に訴えかけ、常に気持ちは苦しむ誰かへ寄り添って。

あの笑顔を引き出す仕事がしたい。この目的のために自分の命を使い果たすだなんてなかなか悪くない人生なんじゃなかな。

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