ピルは目的か、手段か
注)このnoteは、株式会社ネクイノ代表取締役の石井健一が株式会社ネクイノメンバー向けに書いているnoteです。そのため、使用している用語に通常で使われているものと意味合いが異なる場合があります。
きっかけ
社内slackの一部を貼り付けます。(基本的に社外の人に見えるところに社内のslackの情報を貼り付けてはいけません。今回は、発信者と広報に許可を取り発信しています)
実はここ数ヶ月くらいモヤっと思っていたことを自分の言葉に落とし込むための契機になるのがこのslackだったので、改めて頭の中を整理する目的も含め、このnoteを書くことにしました。
ネクイノの根幹事業=スマルナである
みんなもご存知の通り、ネクイノの「根幹事業」は現時点で間違いなくスマルナというオンライン診察プラットフォームです。スマルナは、無料の医療相談サービスから始まり診察サービス、処方を受けての医薬品の配送までを一気通貫に行うサービスですが、当然「ピルの処方数」が短期的に見た会社の収益の柱となることは事実です。
いま、社内でもGMVをひとつの指標としてみんなで追いかけているのは周知の通りですがここで大きな分かれ道が出て来ます。
石工(いしく)の話
これ、ドラッカーが言った説というのが有名なのですが、簡単に説明します。(詳しくは「ドラッカー」「石工」で検索するとたくさん出て来ます)
石工(いしく)、っていうのが日本では馴染みがないので、大工さんとか職人さんとかだと思ってください。
ここから、3人の職人さんが登場します。前提条件として彼らは、皆同じプロジェクトに参加をして、同じ役割を担っています。
1人目の大工さん
「あなたは何をしているんですか?」
「気をつけていることはなんですか?」
「木を切っているんだ」
「まっすぐな木を選ばないと、真っ直ぐ切るのが大変だからね」
「それは何に使われるんですか?」
「教会の壁になるんだよ」
2人目の大工さん
「あなたは何をしているんですか?」
「気をつけていることはなんですか?」
「壁を作っているんだ」
「ちゃんと形を合わせないと、雨や風が防げないからね」
「それは何に使われるんですか?」
「教会の壁になるんだよ」
3人目の大工さん
「あなたは何をしているんですか?」
「気をつけていることはなんですか?」
「人生、いろんなことがあるだろ。だから、困った時、辛い時、感謝するときに”お祈りする”場所を作ってるんだ」
「教会を作るのは簡単だけど、”来る人の心を支える”教会は簡単には作れないんだ」
※原作と言われるものを少しいじってます
前提条件にも記載の通り、3人の職人さんは全て同じプロジェクト・同じ業務に参画しています。なんとなく、3人目は監督とか責任者?って雰囲気でてますが、3人ともいわゆる「職人さん」です。
なんとなく、言いたいことわかりましたでしょうか?
もう一回、社内slackの貼り付け。
ネクイノは、今日現在でメンバーが90人規模となっており、スマルナについても(まだまだだけど)機能分化・役割分担が進んでいる組織作りとなってきています。そうすると、必然的に「やることは目の前のこと、短期的な視座」になりがちであたかも1人目や2人目の大工さんのような思考に陥りがちです。
私たちネクイノでは、全てのメンバーが3人目の大工さんの「視座」をもってスマルナプロジェクトの推進に取り組みたいと思ってます。
で、本題。
私たちネクイノは、「世界中の医療空間と体験のRe▷design(再定義)」をミッション(組織の使命)として活動しています。このミッションの実現のための表現形の一つがオンライン診察という仕組みを用いた体験構築であり、スマルナです。では、その「スマルナ」というサービスは何を目的として活動しているのでしょうか?
「西洋諸国に比べて低いピルの服用率を向上させる」
もしかしたらこう答えるメンバーもいるかもしれません。これは間違ってはいない、、、のですが直接目指すゴール(目的)ではなく、目的が達成されたあと訪れる副次的効果のひとつ、にしか過ぎません。
じゃぁ、もう1回。スマルナは、何を目指しているのか。それは。
〜ココロとカラダが健康でワタシらしい人生を選べる〜
こういうライフスタイルを提案し、社会実装することです。
(よかったら、リブランディングの裏側を見直してみよう)
そうすると、必然的に「あり方」っていうのが決まって来て↑のslackの内容のように考えが進化していく。
スマルナ=SRHRの実現のための”ひとつの”手段
どこかで一回SRHR(性と生殖に関する健康と権利)については私見も含めnoteを書きたいと思っていますが、今の日本において本来全ての人々が持つべきこの権利は残念ながら十分付与されている、とは言えません。
このSRHRの実現には医療的支援や医療インフラの普及が必要不可欠ですが、残念ながらこの問題に取り組んでおられる先人たちの多大なる苦労の上でもまだ社会実装できていないないか、実現のためには大きなイノベーションが必要だと思っています。
ただ、スマルナだけではこの課題を完全に解決することはできません。それぞれの領域を担当するプレイヤーの方々と上手に連携してこの問題に取り組むべきだと思ってます。
”教えてあげたい”からの脱却
さて、ちょっと話がそれました。スマルナのミッションを理解した上で、どうユーザーや世の中と私たちが向き合うか、について。それは
「教えてあげたい」から一旦離れよう。
です。ピルっていうソリューションは、本来それ自体が持っている効能/ベネフィットがだいぶ下方修正されたイメージで、副作用を含むネガティブな要素がかなりデフォルメされた形で社会に定着しています。正しい知識に先にたどり着いたり、知ったりすると人にはそれを「周りの人に教えてあげたい」って善意の気持ちが芽生えます。多くの場合、それは正しいことなのですが、この領域の社会問題の解決にはそのやり方は時々「負」の方向への感情を巻き起こします。それは結果的に私たちが目指す世界=SRHRの社会実装の妨げになる可能性があります。
じゃぁ、どうする?
徹底的にユーザーのインサイトを洞察してください。インサイトとは、本人も気づいていない潜在的な欲求のことです。
よく、僕が社内で言う、「ネクイノはどれだけユーザーに”そうそうこれこれ!!”って言ってもらえるかが価値の源泉だ。って事なんですが、
いまスマルナには数10万人単位のユーザーさんがいて、みなさんと私たちは日々コミュニケーションを重ねています。そういったコミュニケーションの中から知りうることができた、私たちとユーザーさんの間でしかわからないインサイトを必要なタイミングで顕在化し、その解決策を提案していくことが私たちのやるべきことなんじゃないかな、って思ってます。
初めてガイドを作ったり、コミュニティ立ち上げたり、基幹サービスの一つの相談室も。わざわざtwitterに書いてくださる、ってことはそれだけこの方々のインサイトをヒットしたことの裏返しでもあるんですよね。
もちろん、インサイトをヒットするネガティブな感情も存在する。
たまたま、同じようなクリエイティブですがそれが論点なのではなくて、
ピルは避妊の薬か、治療の薬か!みたいな議論もさておき、
どうやってユーザーのインサイトに触れ、共感してそれをアウトプットに落とし込めるかって言うところも含め、自分たちが設定したミッションに沿っているのか、目指す方向とズレはないのか、って言う部分についてはずっとずっと一緒に考えていきたいな、と考えています。
2021年2月22日
株式会社ネクイノ
代表取締役 石井健一
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