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おじさんがなぜFemtechを(前編)

注)このnoteは、株式会社ネクイノ代表取締役の石井健一が株式会社ネクイノメンバー向けに書いているnoteです。そのため、使用している用語に通常で使われているものと意味合いが異なる場合があります。

0.あらためて

昨日(2022年2月17日)夜、武庫川女子大学の高橋先生が主催する研究会で登壇の機会をいただきました。きっかけは経営学部で使用するケースリポートにスマルナのことを取り上げたい、というリクエストを頂き、僕もビジネススクールで学んだ身としては(話せる範囲で)洗いざらいお話させていただきましょう!ということで昨日に至ります。

登壇にあたり、事前に「質問したいこと」をお預かりしてスライドを作成する、という作業を行なったのですが一番多かったのが「なんでおっさんがこの事業を?(ここまで直接的な書き方ではないですw)という内容で、そういえばここをちゃんとnoteに書いてなかったよな・・・と思い、使用スライドをベースにもう一度シェアしようと思います。

1.使用したスライドからの抜粋

スライド1

スライド4

マーケティング系の研究会だったので、気合入れて「マーケティング戦略をガリガリ話すぞ!」と思ってましたが先方からのリクエストは全然そんなことなく・・・このスライドはブラフですww

スライド5

はい、今日のテーマはコレ↑です。

スライド9

僕のキャリアにおける「課題感」が絞り込まれていくプロセスを話さないと、なんで今これをやっているのかが説明できないので、僕のキャリアにおけるこの辺り(赤で囲った↑)のお話をします。時期で言うと、2008年から2013年くらいまでのお話です。外資系製薬会社であるノバルティスファーマに僕が入職したのが2005年4月、で移植医療のプロジェクトに関わり出したのが2008年からくらいになります。

スライド10

腎臓移植を例に挙げて話しました。腎臓移植は、亡くなられた方または健常人(ドナー)から腎臓を摘出し、腎不全になってしまった人(レシピエント)に摘出した臓器を移植する医療です。多くの場合、拒絶反応が課題となりこの拒絶反応を防ぐために免疫を抑える”免疫抑制薬”と言うものを使用します。僕はノバルティスで、この免疫抑制薬の情報提供(営業と言っても過言ではない)を担当していました。

で、この腎臓移植について簡単に説明します。近年は医学の進歩が著しく、多くの場合移植を受けた方は1年もすれば(免疫抑制薬を服用すること以外は)健常人と変わらないような生活が可能になります。社会復帰はもちろんのこと、競技にもよりますがスポーツで汗を流したり、生物学的女性においては妊娠・出産も可能になったりします(透析施行下での妊娠出産はハイリスク)こういった、不可能な日常生活を取り戻すことができる医療、それが移植医療といえます。

課題はここからです。健常人に近い生活をおこなっていても、定期的な受診のために遠方の医療機関へ足を運ぶ必要があります。スライドでは九州から飛行機で大阪に来ているイメージ図を書きましたが、まさに1日以上かけて医療機関へアクセスしている方も少なくないんです。

実際に、専門性の高い医療機関へ足を運ぶ必要性も当然あり、緊急対応が必要な場合に迅速な検査や処置ができたりという部分では医療機関へアクセスすることはとても重要です。

一方で、そうでない場合は自宅近くの診療所などと連携し、採血・簡易な検査を実施して遠隔で移植医が管理を行う・・・みたいなことも物理的には十分可能で、当時お世話になった先生方とは「これ、データだけ近医で取ってもらってメールで飛ばして貰えば十分管理可能ですよね・・・」みたいな話はしょっちゅうおこなっていた記憶があります。(当時はLINEやFBなどSNSが今ほど普及していなかったので当然「メール」という単語が出る)

物理的には
技術的にも
やればできる・・・はず

という環境下にもかかわらずやっていなかった理由はいくつか考えられます。

①患者の近医と移植医とのコミュニケーションをどう行うか(双方が信頼できるか)
②セキュアな通信など情報を保護する仕組み
③診療報酬での扱いが難しい(インセンティブがない)
などなど、当時はまだ外部環境も含め「時代が追いついてなかった」と言うしかないかと思います。

課題:医療従事者間の円滑なコミュニケーションをどう実装するか

他にも、課題があります。

スライド11

これは僕の大学院での研究論文なんですが、せっかく高度な専門知識を保有している医師ですが、現在の仕組みでは医師の専門性を有効活用できていません。他の医師でも代替できる業務、医師以外にも代替できる業務を習慣上医師が行わなければならない、という課題があります。

課題:医師のリソースを解放し、その専門性を適切な患者に投下できるようにする

もうひとつ、課題としているもの。

スライド13

これも僕の研究論文からなんですが、医師(を含む医療サービス提供側)が患者の能力開発に使える資源が極めて乏しく、患者側が何年経っても同じ地点で医師とコミュニケーションを取らねばならないこと、があります。医師は、検査などの定量データと、患者から発信される情報から疾患や状態を「類推」する、ということしかできないため、患者側から適切な情報発信ができないと医師の能力を最大限発揮できない、というジレンマがあります。

課題:患者の能力開発を行う資源がない

そして、最後に

課題:多くの医療系サービスが「治療」に軸足があり、「予防的アプローチ」の社会実装が進んでいない

こういった課題感を解決するために、自分達がやらなければいけないことを、をこんな感じ↓↓で定義しました。

スライド15

これは、縦軸に合併症の数・重症度を、横軸に年齢をおいたもので、今までの医療サービスは40代ごろから始まる生活習慣病的なもの、加齢に伴う体調の変化を治療していくことに軸足が置かれていました。一方で僕たちは基礎疾患をあまり持っていない現役世代にフォーカスし、このセグメントに予防的アプローチ・能力開発を行うことで将来的な医療需要のピークを押し下げる、それによって医療資源を適正に再分配する、ということを目論んでいます。ここで初めて、「現役世代に向けたアプローチ」というKeywordが出てきます。それなりな分量になってきてしまいましたので、後編では、「生物学的女性」にフォーカスをしていく理由について綴って行きたいと思います。

※移植医療については、関係者として関わっていた期間が過去であること(情報が古い)、またnote記載上一部内容を簡素化して記載しています。正しい医療情報については専門家にご確認ください。

2022年2月18日
株式会社ネクイノ
代表取締役 いしけん

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