【米国事例10社付き】海外HRテックマニアが予想する、今後のピアボーナスサービスのトレンド
こんにちは、ハイマネージャー代表の森(@kengo_himanager)です。
先日、Fringe81が事業の軸足をアドネットワークから 「Unipos(ユニポス)へ移行していく方針を示したことを明らかにしました。私はこのニュースを知った時、アドネットワークで伸びてきた同社がローンチわずか3年のUnipos事業へと舵を切ったことに驚きを隠せませんでした。
私は前職PwCコンサルティングで人事評価の支援を行っており、3年前にリアルタイム評価サービス「HiManager」を提供するハイマネージャーを創業しました。これまで延べ100社以上の支援を行ってきた中で、人事課題におけるソリューションとしてのピアボーナスサービスの可能性に注目していました。
また、私が毎年参加している世界最大級のHRテクノロジーイベント『HR Technology Conference & Expo』でも、ピアボーナスサービスの人気が高まっており、その関連サービスは非常に進化しています。
過去執筆記事
・HR Technology Conference & Expoの変遷から見る、HRテクノロジーの方向性(CELM BELIFE)
・アメリカで見たHRテックの今。「パーソナライズされたマネジメント」がAIによって実現される時代へ。 (note)
今回はUniposの戦略を推察しながら、ピアボーナスサービスのトレンドを予測していこうと思います。
Uniposのサービス概要
Uniposは、従業員同士が賞賛し少額のインセンティブを送り合うピアボーナスの仕組みを使って、組織を活性化させるHR SaaSです。手軽に賞賛を送り合う仕組みをつくることで、組織づくりや従業員満足度向上をサポートします。「ピアボーナスで、働き方を変える」をいうコンセプトを引っ提げ、500社以上の導入実績を持ちます。
ピアボーナスは海外企業ではすでに主流となっており、ピアボーナス関連のサービスは増えています。日本ではメルカリが『メルチップ』を導入したことで“イケてる会社の象徴”となり、今や大手企業からスタートアップまで名だたる企業が活用しています。
Fringe81の意図
Fringe81の売上の8割はアドネットワーク事業が占めており、Unipos事業の売上は4分の1程度。これまでの同社の成長はアドネットワーク事業が支えてきました。しかし、ここ数年ではアドネットワーク事業の競争の激化に加え、新型コロナウイルスの影響を受け、厳しい状態が続いていました。
その一方、Unipos事業は年率50%という急成長を遂げており、リモートワークの普及が更なる成長の後押しになることが予想されます。
また、Fringe81はUniposへの経営資源集中と同時に、Sansanのグループ入りも視野に入れていることを表明しました。
機能的な差が少ないピアボーナスはコモディティ化しやすいため、海外市場でもピアボーナス単体で伸びている企業の事例は少ない状況です。
そのため、ピアボーナスサービスを提供する企業は、福利厚生など近しいサービスを提供するSaaS企業を買収して複合型サービスにすることが主流となっています。Fringe81もUniposに注力することを名言するだけでなく、Sansanと手を結ぶことでSaaS企業であることを意思表明し、今後のポジションを取りに行こうとしているのではないかと、私は考えました。
本件に関しては、同社代表取締役CEOの田中氏がIT mediaのインタビューに答え、その決断の詳細を語っています。
ピアボーナス3つの発展型
アメリカのピアボーナスサービスでは、主に3パターンの発展型モデルにより成長している事例が挙げられます。それぞれの特徴と代表的なサービスをまとめてみました。
①福利厚生連携サービスとの連携
1つ目は、福利厚生サービスとの連携です。大手企業であれば、健康保険組合のような福利厚生サービスが存在しますが、スタートアップにはほとんどありません。優秀な人材を定着させることはスタートアップの成長に必要不可欠であり、その課題のソリューションとして福利厚生の充実はニーズがあります。
主な海外サービス
・Fond
従業員がお互いにポイントを送信できるようにする従業員報酬プログラム。貯まったポイントをギフトに変えられる仕組み。また、ポイントの変換を体験に縛ることで、社内交友を活性化させるサービスも。
・Bonusly
従業員同士で報酬を送りあえるプラットフォーム。毎月企業から配布される報酬ポイントの中から、同僚が価値ある仕事をした際に、従業員同士でポイントを送りあえる仕組みを提供。ポイントの送付は、他のメンバーにも周知されるため、チーム内のエンゲージメント向上にもつながる。ポイントは現金やギフトカード、慈善団体への寄付に交換できる。Slackとの連携も可能。
・O.C Tanner
O.C Tannnerは、VICTORIES・YEARBOOK・VIRGIN PULSE・ONE-TO-ONES・UNITEの5つのサービスで構成されているクラウドサービス。目標管理や1on1などあらゆる人事機能と連動して社員を褒め称え、社員のモチベーションをアップし、社員エンゲージメントを高めることに役立つ。従業員の入社日や誕生日等に、ピアボーナスの内容や日頃の業務内容、従業員からの感謝のメッセージがまとめられたものを本として届けることもできる。
・Virgin Pulse
テクノロジーを駆使し、従業員エンゲージメントの向上に効果的なウェルネスプログラムを提供。従業員一人ひとりにあったウェルネスプログラムを提供し、プログラムの達成度に対してインセンティブポイントを付与。貯まったポイントは「Pulse Cash」として現金やギフトカードに変換したり、チャリティーとして寄付したりできる。従業員はアプリなどを活用することで健康管理を行う。
②パフォーマンス・マネジメントサービスとの連携
2つ目は、海外ではスタンダードになっているパフォーマンス・マネジメントサービスとの連携です。当社の提供する「HiManager」はまさにこのモデルであり、マネジメントシステムにピアボーナスを含めています。ピアボーナスを従業員のモチベーション管理や満足度向上施策のために利用する場合に効果的です。
ピアボーナスの仕組みを利用して素早いフィードバックのサイクルを後押しすることにより、技術の進化が激しい現代に対応したアジャイルマネジメントが可能になります。
2019年のラスベガスHRテックカンファレンスでも、マネジメントサービスの統合が注目されておりました。
↑ 市場が"Converge"(=統合)し始めている。(出典:Josh Bersin Untangling the HR tech market 2020)
主な海外サービス
・Kazoo
キャリア成長や上司や同僚との関係性、企業文化など、あらゆるタッチポイントおいて従業員の体験を向上させるためのプラットフォーム。Kazooでは従業員の体験において、関係性、パフォーマンス、感謝、成長を重要なタッチポイントの柱と定義しており、それらがサポートできる機能を集約させいる。
・15Five
OKRや目標管理などのタレントマネジメントのプラットフォームを提供。会社の文化構築を目的に開発され、1on1のアジェンダ提案、目標管理、パルスサーベイ、互いに褒め合う機能などがある。マネジャーが本来担ってきた役割を半分代替するだけでなく、最適なタイミングで効果的なアクションを促進。
・Lattice
パフォーマンス管理、従業員エンゲージメントなどの共有を簡易化するツール。いつでもどこにいても簡単にリアルタイムにフィードバックができることをコンセプトに展開。slackやasana、redditなど、急成長企業で活用され、スタートアップや大企業の文化、管理慣行、および従業員に対するさまざまなアプローチに対応した、柔軟なプラットフォーム。
③社外に対応したサービス展開
3つ目は社内だけでなく外部との送り合いを可能にするサービス展開です。ポイントに可動性をもたせ、クライアントや業務委託など社員以外の人にもピアボーナスを活用できるようにします。
働き方が多様化してきた現代において、正社員以外へのピアボーナスの活用は人材を集める上で効力を発揮してくでしょう。話題のUniposはこれに該当し、クライアントなどとの送り合いができることを想定としたサービスとして展開していくことが予想されます。
主な海外サービス
・Kudos
従業員の関係と組織文化に焦点を当てた、従業員の認識、フィードバック、および組織的コミュニケーションのプラットフォーム。企業の価値観と結びついていて企業文化を強化するとともに、職場文化の健全性に関する深いデータを把握することが可能。
・Loyal
ブロックチェーンを活用したピアボーナスサービス。自由にトークンを作成する事ができ、交換レートや対象等も幅広く対応可能。
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まとめ
現在ピアボーナスは国内外での人気が加速していますが、ピアボーナス単体でのより一層の展開は難しく、海外企業ではHR系のSaaSサービスとの複合型に発展することで事業を伸ばしています。しかもその発展型モデルはトレンドに対応しており、それがリーディング企業から支持される理由になっているのではないかと思われます。
スタートアップの福利厚生ニーズの顕在化、マネジメントのアジャイル化、そして多様な働き方の円滑化の課題を捉えた上記のサービスは、まさにその例です。私は、これらのようなトレンドにマッチしたSaaSの複合サービスが、これからのピアボーナスサービスの成長には、必要不可欠になると予想します。
Fringe81は自分たちをSaaS企業へとリブランディングし、再出発のメッセージを発信しました。それに加え、Sansan子会社化の可能性を伝えることで、SaaS同士でシナジーを生み成長させていくトレンドを、日本国内で切り開いていっています。
「すべての働く人にスポットライトを」や「感情報酬を社会基盤に」など、Fringe81が打ち出すコンセプトは時流に合わせて変化しており、世の中に受け入れられる姿を試行錯誤してきたのではないかと思います。その結果、働き方の多様化に合わせながら国内外でも事例が少ないサービスを実現していくことで、新しいポジションを確立しつつあります。
出典:探していたUniposの未来は、お客様の中にあったという話
上場を維持していくことが想定される同社が、これからの主力事業として、Uniposをどのように伸ばしていくかが楽しみです。同じHR Techを扱う立場として、今後の動向に注目しています。
ピアボーナスをフィードバックとして活用したマネジメントサービス「HiManager」
私たちハイマネージャーは、人事評価のDXを実現するリアルタイム評価サービス「HiManager」を提供しています。
HiManagerは今回紹介した発展型モデルの②に当てはまり、マネジメントを最適化させていくことを目的としてピアボーナスの仕組みを用いてリアルタイムフィードバックをサポートしています。
私たちはHiManagerの普及を通し、リモートワークであってもなくても、誰しもが最適な評価/マネジメントを実現できる社会を創っていきます。
ぜひ一度お試しください。
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ハイマネージャー
OKRや1on1、フィードバック、人事評価などハイブリッドワークのマネジメントに必要な機能が全て揃ったピープルマネジメント・プラットフォーム「HiManager」の提供、及びマネジメント・人事評価に関するコンサルティングを行っています。