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九州の秘境・椎葉村と日本三(大)○○

NHKの海外向け(外国人向け?)番組「Journeys in Japan」を観ている中で宮崎県の椎葉村(しいばそん)が出てきた。今は民謡番組などなくたったので知る人ぞ知るなのかもしれないが、有名な「ひえつき節」の舞台である。平家の落人が住んでいたと言われており、源氏方の追捕役の那須大八(郎)と平家落人の鶴富(姫)の間にあった悲恋が歌詞に盛り込まれている。
●ひえつき節
https://www.worldfolksong.com/songbook/japan/minyo/hietsukibushi.html
●椎葉村観光協会のホームページ
https://www.shiibakanko.jp/

蛇足:
嘗て金冠堂提供「キンカン素人民謡名人戦」という長寿テレビ番組があり、少年の頃から見ていたので全国の民謡を結構知っている。キンカンとカタ
カナだったので果物も金柑だとずっと思っていた。

平家落人伝説は全国にあちこちあるが、九州では、熊本県と宮崎県の県境の山岳地帯=九州山地がそうだと言われている。熊本の五木村~五家荘(ごかのしょう)、宮崎の米良荘(めらのしょう)~椎葉村など。因みに、椎葉という地名は多分全国的にあり、熊本にも数カ所ある(例えば五木村)。樹木の椎から来ていると思われ、大抵、椎茸の栽培が行われている地帯である。平家落人伝説から熊本では「五家荘美人」という言葉があった(平家の落人の子孫だからは美人が多いということか?)

椎葉村を調べると「日本三大秘境」の一つと出ていた。他の二つは、岐阜の白川郷および徳島の祖谷である。多分、ここが三大秘境ということに納得感があるかというとそうでもない。例えば白川郷は、そのの価値は非常に高く評価するものの「三大」秘境に入れるものなのかという感覚である。更には世界遺産は白川郷と富山の五箇山を合せた合掌造りが対象なので、五箇山はどうなのかという突っ込みもある。ということで「日本三(大)○○」」について少し書きたい。

以前書いたよう、ある大学の先生(教授)が「日本人は三大○○」が好きな国だが外国では聞いた聞いたことがない」と話されていた。日本は四は死に通じるということで嫌われるので三を使うことが多い(他に五か七)。
「日本三○○」と「日本三大○○」は多分、位置づけが違うと思っている。前者は公式or順公式に近く異説はなく、後者は全国的に認識統一されたものはなく、属人的、属地域的、属集団的なものではあるまいか(あるまいか、は浅田次郎風)。

「日本三○○」で異説がないもの例:
●日本三景・・天橋立、安芸の宮島、松島
これは不動のトリオ。松島は観たことがないが、他の二つは「日本三景」の石碑がある。個人的には松島より綺麗な多島海は他にもあると思っている。入っているのは芭蕉の俳句の貢献大か?勿論、芭蕉往訪前から名勝地と知られるところだから行ったのだろう。

●日本三急流
球磨川、富士川、最上川で、それ意外の川をあげたものは見たことがない。最も急流とはどの部分を指すか、全体的に急流なのかという議論はあろう。三川の中で最も根拠が弱いのは最上川と言われている。これも芭蕉「五月雨を集めて早し最上川」が貢献?。九州出身者として球磨川が最も急流に相応しいと思う。「日本三大急流」という言い方もあるけれど「大」を付けるのは変だと思う。

●日本三美林
小学校時代から習った青森ヒバ、秋田スギ、木曽ヒノキ(の天然林)。これは林野庁も公認している。尚、林野庁Webに「日本三大美林」と出ている。これも「大」を付けるのは違和感がある。大とはサンスクリット語のマハ=摩訶と同じで「偉大な」という意味なのか?小学生時に覚えたものは「大」がついていなかったような気がする。現在なら、遍在する杉より世界遺産になっている白神山地のブナ林をいれるべきではという議論はあろう。一方でブナは腐食しやすく建築材としては劣後する。美しさだけでなく、建築材でなければならないのだろう。芭蕉「静けさや 岩に染み入る 蝉の声」で知られる山寺=立石寺の根本中堂はブナで造りであったため、腐食で大半の木材のリプレースが行われている。

●日本三名園
金沢兼六園、水戸偕楽園、岡山後楽園も不動のトリオだ。他に綺麗な庭園はあれども、江戸時代に造られたものという点で動かないのだろう。京都にも歴史的な名庭園があると思うが、やはり武家の藩が造ったものが対象という理解で良いと思う。

●日本三名泉
有馬温泉(兵庫)、草津温泉(群馬)、下呂温泉(岐阜)の3つで有名処と言える。室町~江戸期の著作に書かれていることに基づくので、三名園同様不動である。現代において日本三名湯かは保証の限りではない。「日本三大温泉」ならやはり湧出量を基準にするのが分かり易いと思う。しかし、湧出形態の相違や量の変動があり難しい。
湧出形態:「自然湧出」「掘削自噴」「動力揚湯」

片や「日本三大○○」について:
日本三大○○は数え切れない程多く(100以上ありそう)、異説があるものが殆どだと思う。幾つか例をあげる。
●日本三大稲荷
京都の伏見稲荷大社、茨城の笠間稲荷神社、佐賀(鹿島)の祐徳稲荷神社、愛知の豊川稲荷の四つは外せないと考える人は少なくない。伏見稲荷大社は不動で、後の二つにどれを入れるかいうのが大勢を占めるだろうが、これら4社以外の候補も10社程度あるらしい。
佐賀(鹿島)の祐徳稲荷神社の写真↓(筆者撮影)

●日本三大うどん
讃岐うどん、稲庭うどん、水沢うどん、五藤うどん、氷見うどんが主な候補であろう。富士吉田の吉田うどん、博多うどん、伊勢うどんなど他にも多々ある。ついでにいうと、北九州市発祥「資さんうどん」チェーンが最近東京で注目を浴びているようだ。博多うどんと同じなのか食べてないので不明。因みに首都圏では埼玉加須がうどんで有名。また、武蔵野うどんというのがある
【余計なこと】
今もそうかはさておき、嘗ては福岡市のエリアのうどん屋(博多うどん屋)はうどんだけであった(+稲荷寿司)。つまり蕎麦はなかった。東京の有名な蕎麦屋が蕎麦しか出さないのと同じである。

●日本三大珍味
このわた(ナマコの内臓の塩辛)、唐墨/からすみ(ボラ卵巣の塩漬け)、塩ウニ/粒ウニをあげるのが一般的。「越前の雲丹」「長崎野母の唐墨」「三河の海鼠腸」という地域を限定したものもある模様。ウニについては、寿司ネタや刺身で食べるもの該当しない。他に鮎のうるか(内臓の塩辛)、ホヤなどをあげる考えもある。個人的にはノレソレ(穴子の稚魚)もありかと思う。
以前書いたようにカラスミは古代地中海世界からあった。また、ボラの卵に限るものではない。世界三大珍味というのもある。フォワグラ、トリュフ、キャビアである。これは全世界で通用するものではない。欧州と日本のみのことと考える方がいい。世界三大料理・・フランス料理、中国料理、トルコ料理・・も同様。

以上の例の他に日本三大饅頭、日本三大不動、日本三大祭など、とても統一ができそうもないものは幾らでもある。因みに、日本三大祭りは、祇園祭(八坂神社)、天神祭(大阪天満宮)、神田祭(神田明神)と一般的に言われる。これは、江戸時代の「三都」に合せたものだと思っている。実際は、山王祭、神田祭は「天下祭」として交互に(隔年で)行われている。神田祭だけ対象にするのは如何なものかと思う。

オマケ:三大がっかり
「世界三大がっかり」というものがある(あったの方が正しい?)。コペンハーゲンの人魚姫像、ブラッセルの小便小僧像、シンガポールの旧マーライオンだったはず(マーライオンは移設され大きくなったので、もうがっかりはしないと思う)。これも世界に通用するものではない。「ヨーロッパ三大がっかり」というのもあった。先に出している人魚姫、小便小僧の他にブレーメンの音楽師(音楽隊)のモニュメント、パリの自由の女神像(のモニュメント)が候補だったように記憶している。

参考:Journeys in Japanでの椎葉村紹介
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/shows/2007544/

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