中学レベルの英語で苦労している人へ
英語に関する勉強法,特に中学英語レベルの内容で苦労している人に向けた記事を書いておこうと思います.現在,英語教育は小学校から開始されているようなのですが,筆者の時代はまだ中1から開始していました.このような程度の差こそあれ,異国の言語にいきなり触れるという体験にはそれなりの驚きがあり,したがってその修得が思うようにいかない学生さんもまた同じく生まれているはずです.筆者も,最初の頃は思うように成績が上がらず,というかむしろ下降しまくって困っていたクチでした.つまり,英語が苦手だったわけです.ところが現在は英語で論文を書き,国際会議で英語の口頭発表をし,英語で授業をし,さらにちゃっかり海外生活も経験しました.得意とは言わないまでも,なんとかするレベルには持ってくることができているといって差し支えないでしょう.この英語力の源泉は,自分が英語で苦労した中学1年生時に開発した勉強法がうまくはまったことであり,そのノウハウを体験談とともにここに書いておこうと思います.一応先に断っておきますが,あまり賢い方法ではないので,実践される方は泥臭い地道な努力が必要であることを心に留めておいて欲しいところです.
※忙しい人はタイトルと太字だけ読めばOK
経験談1:英語がわからない
読み物として成立させるために,筆者が英語に触れた時のことを書いておこうと思う.先にも少し触れたが,筆者の世代だと英語の学習開始は中学1年生である.いきなり始まり,あっという間においていかれた.
中一のテストの点数は確か73点とかだったと思うのだが,最初のテストでこれはそこそこに黄色信号なのだと思う.で,その後2学期の中間,期末テストで点数は50点台にまで落ち,先生もお怒りだった.
経験談2:先生の言う通りにしてもできない
さて,上のような状況を考えると「勉強してなかったんじゃないの」という疑いを持たれるかもしれないが,意外なことに勉強は結構していた(だからこそ困ったのであるが).英語という日本語以外の言語に触れること自体初めてなので,そこは大先輩である英語の先生の言う通りに勉強していたのである.「単語は気持ちをこめて書けば覚えられる」「真剣にやることが大事」なるアドバイスを信じて真面目に実行していたが,効果はあまり出なかった.もちろん単語は書けば覚えられるのだが,それが文章としてつながらず苦労するのである.そうすると,単語問題は解けているのに文法や長文でミスをするという状態に陥る.
先生の言う通りに勉強しても成績が上がらず,テストのたびにその先生は怒っている,という感じであった.
この精神論頼りの勉強法がダメなのだと気づくのに,当時の私は半年以上かかった.
丸写し勉強法で成績急上昇
先生の言う勉強法に見切りをつけた私は,結局自分で勉強法を開発して成績を上げた.その開発した英語勉強法とは次のようなものである:
(わからないなりに普段から授業を理解する努力をする)
問題集のテスト範囲を一度すべて,間違えても良いので解く
問題集のテスト範囲を挿絵も含めてノートに書き写す(手書きコピー)
手書きコピーをもう一度解く
かなり強引であるが,このようにしたところ成績が急激に伸びたのである.ポイントは問題集の手書きコピーのところであり,問題ごと書き写す過程で出題者の意図や覚えるポイントが自然とアタマに入ってくる.したがって,まっさらの問題集をスキャンし印刷したものを解いたところで同じ効果は得られないだろう.
自分でも少し感じることだが,一見かなり効率の悪い方法に思える.ただ,この方法の対象はあくまで英語の初学者である.確かに,物事を俯瞰で見ると「そんなことしなくても」という感想を持ちそうなものだが,若年の初学者は往々にして物事の全体像を把握するのが苦手なものである.そういった若者に「英語には法則性が〜」「英語ネイティブの考え方は〜」などと講釈たれても効果は薄いので,「とにかくこれをやってみろ」の方が良い場合もあるのではないだろうか,という作戦なのだと思って欲しい.
ただし注意として,普段から英語の勉強をやっておくことは必要である.単語を覚える努力,文法を理解しようとする努力,…などは,分からないなりにやっておいて欲しい.理解していないのにこのような努力することは一見無駄なのだが,私は一種の「布石」を打つ作業だと思っている.色々なところに散りばめられた布石は,確かに個々単体で役立つ場面は限られている.ただし,そこに丸写し勉強法のように包括的な一手を講じると,今までバラバラだった布石の間が線で繋がれ,お互いに結びついて知識や能力になっていくのである.もし普段は全く勉強せずに試験前だけ丸写し勉強法を試みた場合,それはおそらく答えの丸暗記になってしまうであろう.もちろん,毎回同じことをやっていれば英語の力は伸びていくであろうが,試験のたびに問題集を丸写しし続けるというのも少ししんどいように思う.この丸写し勉強法はやめ時も重要な要素なのである.
時間と根気のある方は,上記をぜひ試してみて欲しい.
丸写しに対する先生の反応といつまで続けるか問題
さて私が丸写し勉強法を開始したのは中一の3学期とかだったと思う.効果は抜群で,2学期の期末テストまで50点を切りそうな勢いだった英語の点数は80点を軽く超えるところまで改善した.英語の先生もこのことには驚いており「君,すごく頑張ってる!」と言ってくれたものである.ただし,実は丸写し勉強法のことは全く言っていなかった.結果に対するリアクションは良かったが(点数が伸びているので当たり前),勉強法の是非という意味では全く評価を得ていないのである.ただし,実際に点数が伸びているという一点で,悪い方法ではなかったのだと思う.
さて,次の問題は,この丸写し勉強法をいつまで続けるかということである,その話題を進めるために,丸写し勉強法の隠れたメリットを紹介しておこう.そのメリットとは英語の感覚が自然と身につくことを促す,である.
例えば英語の自己紹介でMy name is ***を使える人は多いだろうが,「myが所有格でnameが名詞なのでmy nameが主語になってそのあとはbe動詞が・・・」などと覚えた人はいないだろう.普通は「my name is」を音で覚え,一部の人が後から品詞の役割を知ったはずだ.
ただ,この音の感覚から入る英語の勉強法は,習い初めから大して時間の経過しない早い段階で品詞の役割を学ぶ文法重視の勉強方法にシフトしてしまう.丸写し勉強法がサポートするのは感覚を養う部分であり,これを指して「問題を書き写している間に英語の感覚が身につく」と言っているわけである.
したがって,英語の感覚が身についてしまえば,丸写し勉強法は役割を終える.この辺りは本人が判断するしかないわけだが,例えば丸写し勉強をする前にコピー(手書きでなく機械で)した問題でもう一度解き,その正解率が上がっていれば丸写しの範囲を縮小していずれ止める,という方法が良いのではないだろうか.
筆者の場合,文法の問題集の丸写しは必要に応じて高校生くらいまで続けていたが(挿絵を写すのは中学生でやった最初の一回のみ),実践的な問題(入試の過去問など)を解く機会が増えるにつれてやめていった.この方法が高校生でも通用するということの確認と同時に,少なくとも実践問題を解き始めるくらいまでには卒業して良いということであろう.
宅浪に丸写し勉強法は有効か
提示したい疑問はタイトルの通りであり,その答えは「人による」である.
勉強の揺るぎない鉄則は「分からないところまで戻ってやり直す」である.簡単な内容を修めたのち,その簡単な内容を使って次の高度な内容を学んでいくのが勉強である.したがって,中学英語を理解していない状態で受験勉強を開始してもどうしようもなく,もしそのような初級でつまずいている状態で宅浪を選択しているなら丸写し勉強法は選択肢に入るであろう.ただし,中学生として開始するよりも自由に使える時間が短いことは明らかであることから,丸写し勉強法をやるにしてもオトナの余裕を見せて短期間で英語の感覚を身につける意識は必要になると言って良い.
K. Hisakawa