マガジン

  • アナ・フンツマリー・サッケル小品集

最近の記事

あのころ夢見ていたようには生きられなかった大人のための私立恵比寿中学入門

TSUKURUBA Advent Calendar 20日目の記事です。 2021年末にツクルバに転職してからの一年を振り返ってみると、とにかくたくさんの打席に立ったなという充実感があります。 新サービスのリリースにクリエイティブディレクターとして携わり、その後も様々な媒体でのプロモーション効果を最大化すべく、クリエイティブジャンプのために手もアタマもいっぱい働かせました。 30代の半ばをとうに過ぎても、日々チャレンジの連続だなと思いますし、たくさんのアウトプットを通じ

    • インハウスエディターやめました。

      チャオ。加勢 犬(@Dr_KenDog)と申します。 この記事は「インハウスエディターAdvent Calendar2021」23日目の記事ですが、クリスマスイブのど深夜に公開されました。サンタさんくるかな。 インハウスエディターのアドベントカレンダーにも関わらず不穏なタイトルで恐縮ですが、少しでも皆さんのキャリアのお役に立てれば幸いです。 転職して肩書きが変わった話タイトルの通り、編集者として丸4年勤めたウォンテッドリー株式会社を退職し、11月から新しい会社でクリエイ

      • Et In Arcadia Ego(再録)

         うんと昔、僕がまだ歯の抜けた口を大きくあけてひゃらひゃらとなんのことやら判らない歌を歌っていた時代のことだ。東京の実家からうんと離れたどこかに本牧という場所があって、そこに母方の祖父母が住んでいた。板チョコレートのような木のドアを開くと、靴棚のうえの磁器の花瓶に南国の花々が生けられていて、玄関先には埃を吸ったペルシャ絨毯が過去の輝かしい交易とむせるような熱気を忘れたまま横たわっていた。僕は年に四度ほど祖父母を訪ねるたびにその悩ましい匂いを胸いっぱいに吸い込み、異国の富をくす

        • 「メディア女子」の世紀末:活字、オカルト、ジェンダー

          はじめまして。加勢 犬(@Dr_KenDog)という者です。 普段はWantedly, Inc.という会社のインハウスエディターとして、自社の採用コンテンツや外部メディア連載、出版物の制作などに関わっています(先日『編集の時間』さんに取材していただきました↓)。 今回、「書き手と編み手のAdvent Calendar 2019」に参加するにあたり、何を書くかしばらく悩んでいたのですが、せっかく30歳まで文学研究に携わっていたのだからと思い立って、文章の「書き手」につい

        マガジン

        • アナ・フンツマリー・サッケル小品集
          2本

        記事

          その反吐はメッセージ

           うれしがらせを耳にささやく男から身を引きはがしながら、私が柄にもなくかわい子ぶって、ねえ、好きってのと愛してるってのはなにがどうちがうのん、と尋ねると、男は半分しらけた様子で、愛読しているアメリカン・ハードボイルド小説の口ぶりを必死でマネしながら(そう、あの、やれやれだぜ、の調子で)、好きってのは一塁打で、愛してるってのは三塁打、それだけのことさ、と言って、ワイルドターキーをひとすすりする。こいつはいつもワイルドターキー。きっとアメリカン・ハードボイルドにふさわしいセリフに

          その反吐はメッセージ

          LUCIA TRASLUCIDA(再録)

           2007年の7月に、イングランドのミッドウエスト地方を記録的な洪水がおそった。  忘れようにも忘れられないのは、大雨の降ったその日に僕自身がロンドンからチェルトナムへと向かうバスのなかで、幹線道路の麻痺のため11時間もの監禁状態を経験したからだ。  それはちょうどヒースローを発った飛行機が成田に降りたつ時間と同じだった。僕は穴ぐらの野ネズミのように身を縮こませながら、Lにメールを打った。夢から覚めても全く同じ場所にいるよ。この感じじゃあ今日中にそっちに着けるかわからない

          LUCIA TRASLUCIDA(再録)